客船建造の遅れ回復へ 三菱重工、必死の総力戦

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2015/5/18 6:30
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三菱重工業がここ2年で合計1300億円強の特別損失の計上を余儀なくされた客船の引き渡しが、9月に迫っている。日本で唯一大型客船を建造できる同社の競争力の象徴と期待された客船受注だが、目先は造船事業をけん引するどころか足を引っ張っている。これ以上の遅れは許されない中、建造作業が続く長崎造船所香焼工場(長崎市)をのぞくと、一番船の引き渡しに向け仕事の見直しも含めて苦闘する現場の姿があった。

■倍増の4000人を投入 事務所からの移動時間も短縮

香焼工場の入り口から最も奥まった場所にあるドック。本来は船の修繕に使うためのものだが、現在は巨大な客船が鎮座する。外から見た印象は、巨大な横長のビルを載せた船のようだ。

人、人、人――。先月中旬に工場の高台に案内されてこの客船の中をのぞくと、作業者が所狭しと懸命に動き回る姿がみえた。同工場で客船に投入されているのは4000人弱。「現場はとにかく必死」と案内役の造船所関係者が説明した。

本工場では二番船の建造も進んでいる(長崎市)

本工場では二番船の建造も進んでいる(長崎市)

4月に入り、この客船の船腹に、発注元を象徴する「目」のマークが入った。「アイーダ・クルーズ」。世界最大のクルーズ客船会社であるカーニバル社からの発注だ。12万4500総トン、約3300人乗りの超大型客船となる。

現在客船建造に関わる4000人弱は、1年ほど前に比べほぼ倍増している。平常時は2000人前後が働く同工場の人員は客船だけで倍に膨らんでいる計算だ。

通勤などにも影響が出ている。工場はもともと島を埋め立てたもので、長崎市の中心市街地からの道は限られる。出勤と退勤時間帯には、通勤車で大渋滞が起きるようになった。駐車場も足りない。外部に駐車場を借り、バスを使ったピストン輸送で対応している。

さらに中心市街地と香焼工場をつなぐ通勤船を、午前中だけで3往復にするなど増発。大量の作業者の足の確保に奔走する。

働く人たちの事務所も足りない。客船のすぐそばに並ぶのは、数多くのプレハブ小屋だ。事務所が遠ければ、その分移動時間もかかる。船の近くに設置し、数分の時間も削り出す。

三菱重工の客船事業の歴史は優に100年を超える。1908年に竣工した「天洋丸」や、太平洋の女王との呼び名もあった「浅間丸」など豪華客船を相次ぎ建造してきた。

■仕様変更繰り返す一番船 受注額上回る特損計上

いま建造を進めるアイーダ向け客船は、ダイヤモンド・プリンセス以来およそ10年ぶりの大型受注だ。韓国勢などの激しい追い上げをかわし、造船事業を収益源にする狙いがあった。

「三番船だったダイヤモンド・プリンセスと違い、アイーダはプロトタイプの一番船だ」。14年3月、鯨井洋一交通・輸送ドメイン長は約640億円の特別損失を計上することについての記者会見でこう説明した。発注先の要望に応え設計変更を繰り返し、費用が増加。仕様が固まりきっていない一番船の難しさを訴えた。その後、10月に追加の特損400億円を発表した。

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