2019年8月20日(火)

ネパール大地震、カトマンズは歴史的建造物に被害集中

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2015/5/12付
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日経アーキテクチュア

2015年4月25日にネパールを襲ったマグニチュード7.8の大地震は、多くの人命を奪い、歴史的建造物を倒壊させた。ネパール内務省による5月7日時点の集計では、全半壊した建物数は56万戸に上る。震源に近い首都カトマンズの惨状は日々、写真や動画で報じられている。現地はどれほどの傷を負ったのか。被災地を歩き、被害状況をつぶさに確かめた東京大学地震研究所の纐纈(こうけつ)一起教授に話を聞いた。

カトマンズ都市部タメル地区ではレンガ造りでも倒壊しなかった建物が多い(現地写真:纐纈一起、以下同)

カトマンズ都市部タメル地区ではレンガ造りでも倒壊しなかった建物が多い(現地写真:纐纈一起、以下同)

――地震発生後にネパールの首都カトマンズを視察されました。現地の状況をどのようにご覧になりましたか。

東京大学地震研究所の纐纈一起教授。被災地を歩き被害状況を確認してきた(写真:日経アーキテクチュア)

東京大学地震研究所の纐纈一起教授。被災地を歩き被害状況を確認してきた(写真:日経アーキテクチュア)

纐纈教授(以下、纐纈):(2015年)5月2日から5日までカトマンズに滞在して、北海道大学大学院工学研究院の高井伸雄准教授のチームとともに現地の被害状況などを視察しました。日本に伝えられる報道では、古い年代に建てられた建築物や歴史的建造物が大きな被害を受けた映像が流れています。現地に入る前は、それらのほとんどが崩れたと考えていました。実際に被災地を見て回ると、カトマンズ周辺では古い建物でも倒壊していたのは1割程度だという印象を受けました。

ライフラインは意外にも生きていました。カトマンズ周辺の多くのホテルでは水や電気、インターネットも利用できました。都心部に隣接するツンディケル広場には、地震発生後に被災者向けの避難所が設置され、数多くのテントが張られていたそうです。私が現地に入ったのは発生からほぼ1週間後ですが、テントの数はかなり少なくなっていました。

確かに世界遺産の歴史的建造物は崩れています。また、こうした世界遺産を中心に広がる古い街並みの建物も築年数が経過しているため被害を受けやすかったようです。

5月5日時点の現地報道では、7276人が亡くなっています。カトマンズ市内でも1200人超の死者が出ているので、決して地震の被害が小さいというわけではありません。ただ、建物に関しては被害の大きかったものを集中的にメディアが報じたことで、より大きな被害を受けた印象を受けるのでしょう。

■カトマンズ郊外の古都では被害が甚大

――被害状況は視察した地域によってだいぶ違いがあったのですか。

纐纈:現地に滞在している間は、「暴動が起こる」「疫病が流行する」といった雰囲気はほとんど感じませんでした。主に見て回った地域は3カ所で、カトマンズ都心部のタメル地区、都心から東に十数キロメートル離れた郊外のバグタプル、衛星都市でカトマンズの南に位置するパタンを訪れました。このなかで被害が一番ひどかったのはバグタプルでした。

南のパタンは震源から少し距離が離れているためか、街並みにはほとんど被害がありませんでした。都心部のタメル地区は新しい建物が多かったため、被害が相対的に小さかったのでしょう。

ではなぜ、バグタプルの被害がひどかったのか。それは郊外の古都であるため、古い建物が街並みの大部分を占めていたためだと思われます。歴史的建造物は3カ所で共通してひどい被害を受けていました。

古い建物は焼いていないレンガを積み上げたものが多く、崩れれば粉々になってしまいます。こうした建物が一定割合で被害を受けたという印象があります。

バグタプル地区の古い建物は大きな被害を受けている割合が高い

バグタプル地区の古い建物は大きな被害を受けている割合が高い

バグタプル地区で倒壊した寺院の跡。歴史的建造物はどの地区でも大きな被害を受けた

バグタプル地区で倒壊した寺院の跡。歴史的建造物はどの地区でも大きな被害を受けた


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