2018年9月23日(日)

「ロボットの犯罪」裁けるか 米ロースクールの先進講義
宮本和明 米ベンチャークレフ代表

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2015/5/20 12:00
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■ロボットタクシーを巡る裁判

 被害に遭った銀行は、無人タクシーを運用する会社を提訴する。無人タクシーは、犯罪を起こそうとする人を乗せるべきではないというのがその理由だ。

 一方、タクシー会社は自動運転車メーカーを訴える。タクシー会社はマニュアル通りに運用しただけであり、責任は自動車メーカーにあるという主張だ。

 自動車メーカーはこの訴えに対し、自動運転車は安全に運行しており、犯罪が起こることは予期できなかったと主張する。自動運転車の登場で何らかの問題が発生すると、このような訴訟が起こることが予想される。そのとき、今の法体系では結論が出せないこともあるだろう。

■善悪を判断できた

 ここでの新しい命題は「ロボット自身に責任を問えるか」である。法律用語では、ロボットは「Moral Agent(モラル・エージェント)」になりえるか、と表現することも学んだ。

 Moral Agentとは、行為に対する結果を認識できる存在を指す。善悪を判断できる能力がある存在のことで、人間はMoral Agentであるため、罪を犯すと裁判で裁かれる。

 今回のケースでは、ロボットは犯罪が起きることを予見でき、それを阻止できる状態にあった。技術的には、カメラが捉えたイメージから、オブジェクト(乗客)の意味(銀行強盗を企てる)を読み取ることができたという状態を指す。このためロボットはMoral Agentであり、司法の裁きを受けるという筋書きとなる。

■企業にMoral Agentを適用した過去の判例

 Kaplan教授が注目したのは、企業に対してMoral Agentを認めた過去の判例である。英国に本社を置く国際エネルギー企業のBPが運営する海底油田が、2010年にメキシコ湾で大規模な事故を起こし、11人が死亡した。

 米国連邦政府はBPに対して、民事訴訟ではなく刑事訴訟でその罪を弾劾した。社員ではなく企業に刑事罰が下されるという、歴史的な判例となった。Moral Agentは意識を持った生命体でなく、企業にも適用されるという解釈がなされたのだ。

 ロボットはこの延長線上にあり、Moral Agentと解釈するにやぶさかでない。ただ、企業と異なるのは、ロボットは自分で判断を下し行動できる点で、新たなコンセプトの導入が必要となる。ロボットや人工知能に罪を課すことは奇異にも思えるが、最新の議論はこの方向に向かっている。

■銀行の人工知能が問題の種に

 ロボットのように目に見えるものだけでなく、人工知能のようなソフトウエアについても議論が及んだ。ここでは銀行のクレジットカード審査が例として取り上げられた。

 現在、銀行のクレジットカード審査では、多くの場合、応募者の財政状況を評価するルールベースの審査を行っていない。人工知能の一手法である「機械学習(Machine Learning)」が使われている。

 機械学習では、応募者の様々なデータを過去の応募者の膨大なデータと比較して、合否を判定する。応募者と類似ケースを探し出し、その事例を参考に審査結果を判定するのだ。人工知能は大量のデータを解析し、経験則で判定するため、銀行には合否の理由は分からない。

Barclays Bankが発行するMasterCard申し込み画面(出典: The NFL Extra Points World MasterCard)

Barclays Bankが発行するMasterCard申し込み画面(出典: The NFL Extra Points World MasterCard)

 このために発生している問題がある。米国のある地方政府は、銀行に対して、クレジットカード発行を拒否した理由を明確にするよう義務付けている。クレジットカード審査が不合格になった場合、それが人種に起因しているかどうかを確認するためである。しかし、実際にはルールベースで判定しているわけではなく、銀行はこの質問に答えることができない。

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