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ポストゲームショー(田口壮) 大リーグ、恐怖の大延長戦 露呈する人間の欲望

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2015/5/3付
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大リーグの開幕間もない4月10日、ヤンキース―レッドソックス戦で、十九回に及ぶ大延長戦がありました。所要時間6時間49分、10日午後7時過ぎに始まった試合の終了時刻は翌日午前2時13分でした。引き分けがなく、原則的に決着がつくまで続けるメジャーの延長戦。選手はどんな気持ちで戦っているのでしょうか。

一時期を除いて「引き分けあり」としてきた日本のプロ野球とメジャーの違いの一つがここにあるといえるでしょう。メジャーでは引き分けがなく、天候が急変して打ち切らざるを得なかった試合でも後日再開し、必ず決着をつけます。

勝ちたい一方、早く終われとの思いも

大延長には人間の生の欲望とか、弱さといったものが如実に出ます。そこが見ていて面白いところでしょうし、選手とすれば怖いところです。

私が経験した最大の延長戦はカージナルス時代の十五回くらいではなかったかと思います。あまり中身を覚えていないので、たぶん自分の出番が終わって、最後はベンチで見ていたと思います。こういう大延長戦になったら、1回出て引っ込んだ選手が復活して出るルールでも作ればいいのにな、と思いながら。

日本のように延長は何回までというルールがなく、理屈の上では延々と続く可能性のある延長戦は選手にとって恐怖です。

勝ちたいのはやまやまです。しかし、一方で早く終わらないかな、早く帰りたいなという気持ちも正直、わいてきます。これは日本のプロ野球を経験している私ばかりでなく、アメリカ育ちの選手でも同じでした。何しろ162試合の長丁場ですから、次の日に差し支えることは避けたいという気持ちは誰でも同じでしょう。

ところが早く決着をつけたいという気持ちがまた、さらなる延長戦を生むのです。先日のヤンキース―レッドソックス戦がいい例でしょう。延長十六回表にレ軍が1点を勝ち越したと思ったら、その裏にヤンキースも1点を返して同点に。

延長十八回も同様で、互いに点を取り合った揚げ句に十九回、6-5で決着がついたのです。八回裏に見事な救援を見せ、その時点では1点のリードを守った田沢純一投手も「(自分の登板の内容を)覚えていない」というくらいですから、両軍、さぞかし疲れたことでしょう。

徹底的に白黒をつける方がメリット

ベンチのコマを使い果たし、しかも「サドンデス」に近い状況です。この一種の極限状態においては日ごろ封じ込められている人間の本音とか、欲望のようなものが表れてきます。

十六回とか十八回に勝ち越したレッドソックスは「さあ決めるぞ」「やっと終わりだ」という気持ちが強くなりすぎて、動きの自由が奪われたのでしょう。勝ち越されたヤンキースとすれば「ここまで来たら負けられない」という意識が働きますので「火事場のばか力」が出ます。

しかし、裏の攻撃で追いついた側も「ああ、これでとりあえず負けはない」とほっとする気持ちと、「勝ちたい、終わらせたい」というプレッシャーも生まれ、サヨナラまではいきません。こんな人間心理が手に取るように出てくるのが大延長戦なのです。

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