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最軽量巡り0.1グラム競う 環境配慮型ペットボトル

 飲料各社によるペットボトルの軽量化の争いが激化している。リサイクル技術を商品の付加価値として打ち出す動きも活発化している。既にリサイクル材100%で作ったペットボトルの導入が始まっている。

2015年2月、日本・コカコーラが、軽量化を全面に打ち出した29.0gの2L(リットル)ペットボトル「ペコらくボトル」の市場導入を開始した。軽さと潰しやすさを前面に打ち出し、無糖茶飲料を対象に全国展開を進めている。この新型ボトルの投入で、これまでサントリー食品インターナショナルが約2年間守った「国内最軽量」の座を奪った。

これまでの最軽量は、サントリーが2013年2月に出荷した「天然水」の29.8gだった。当時、2Lタイプで初めて30gを切るペットボトルを市場投入し、環境配慮を前面に打ち出すことに成功。国産ミネラルウオーターのトップブランドの地位を築いた。

軽量化競争は30g以下に。写真はサントリー食品インターナショナルが「天然水」で採用した29.8gのペットボトル(グラフの出典:PETボトルリサイクル推進協議会)

しかし、せっかく獲得した日本コカ・コーラの王者の座は長く続かなかった。キリンビバレッジが、4月に「アルカリイオンの水」で28.9gのペットボトルの導入を開始したためだ。同社パッケージング技術研究所が開発した。ペットボトルの軽量化は、国内最軽量の座を巡ってわずか0.1gの争いに突入した。

年間約200億本を生産

軽量化競争が激化している背景には、他社との差異化が難しい飲料において、ペットボトルの環境配慮を価値として打ち出し、他社をリードしたいという飲料メーカーの狙いがある。ペットボトルの原料となるペット(PET:ポリエチレンテレフタレート)樹脂の使用量を削減できれば、ペットボトル生産時や廃棄時に排出するCO2(二酸化炭素)も削減できる。こうした環境配慮の取り組みが、飲料メーカーの競争要因になっているのだ。

2013年における清涼飲料の国内生産量は過去最高を記録し、初めて2000万kLの大台を超えた。缶、紙、びんなど飲料品全体に占めるペットボトル商品の割合は、69.3%と大きい。2012年のペットボトル出荷本数は196億本で、原油採掘からボトル製造・供給に至る環境負荷はCO2換算で185万2000t(トン)に上る。環境負荷軽減のために、軽量化は欠かせない取り組みといえる。

飲料メーカー各社による軽量化競争が始まったのは、2000年代に「常温無菌充填(じゅうてん)」と呼ばれる飲料充填設備が普及し始めた頃からだ。

それまでは、90℃に熱した状態でボトルに詰めてボトルやキャップを殺菌する「高温充填」と呼ばれる方法が主流だった。この方法では、飲料を充填する際に高温・高圧に耐えられる頑丈なペットボトルを使う必要があり、軽量化が難しかった。

一方の常温無菌充填は、高温・短時間で殺菌した内容物を冷却し、あらかじめ殺菌した容器に無菌室で充填する。飲料を常温で充填できるので耐熱が不要となり、薄くて軽いボトルを使えるようになった。

常温無菌充填が主流になるにつれて、ペットボトル製造メーカーなどに代わり、飲料メーカーがペットボトルの設計・製造を主導するようになった。現在、飲料メーカーの多くが自社工場にペットボトル製造装置を導入し、ボトルの設計・製造を自ら手掛けている。

ただし、軽量化すると強度が低下し、持ちやすさや注ぎやすさが犠牲になる。そのため、「薄さ」と「強さ」の両立は不可欠だ。そこで各社が工夫しているのが、ペットボトルのデザインだ。ボトルに凹凸をつけてボトル全体をバネのような形状にすることで、圧力に耐えられる構造にしている。

生き物の構造がヒント

キリンビバレッジによるペットボトル強度試験の様子

キリンは、軽量化と強さを両立させるに当たり、生物の構造に注目した。植物の花や昆虫の羽根などは、薄くて軽い一方で、潰れたり破れたりしないしなやかさを持つ。こうした仕組みを最新型のペットボトルに取り入れた。

ボトルの肩部分や底面に配置した放射状の凹凸は、アサガオが花を広げた際に形を保つ「曜」と呼ばれる凹みを参考にした。ボトルを持ち上げた時の変形を防ぐと同時に、ボトルを押さえてキャップを開ける際や重みによる変形を防ぐ。

胴体部分の凹凸は、チョウが羽根を支えるための「翅(し)脈」と呼ばれる筋を参考にした。斜めに凹凸を配置することで、上からの加重をより広い範囲で受け止める。こうして、最大20kgの重みに耐えるペットボトルを開発。配達時などに段ボールを7~8段重ねても耐えられるという。

日本コカ・コーラは、飲んだ後のボトルの潰しやすさや保管しやすさも重視する。現在、流通しているペットボトルの底は長方形が一般的だが、最新ボトルでは正方形を採用した。ボトルを対角線方向に潰すことで「折りグセ」を付けやすくし、少ない力で潰せるようにするとともに、潰した後に元に戻りにくくした。同社の従来品と比べて、潰した後の容量を半分にできることをアピールする。

日本コカ・コーラは、底が長方形ではなく正方形のボトルを採用。潰した後の容量を従来の半分にした

ラベルやキャップも削る

各社は、ボトル以外の軽量化にも力を入れ始めている。サントリーは2014年4月からボトルに巻くラベルをこれまでの16μm(1μは100万分の1)から12μmに軽量化した。わずか4μmだが、これにより年間約660tのCO2を削減できる。

2015年1月には、国内キャップメーカーと共同でキャップの軽量化に着手した。キャップの高さを従来より1mm短くするとともに、開栓時にキャップの一部をボトルに残す「フラップ」と呼ばれる機構を簡素化することで、従来2.65gだったキャップを2.04gへと軽量化した。これにより、年間約2100tのCO2排出を削減できる。

使用済みペットボトルから新しいボトルを再生する「ボトルtoボトル」のリサイクル技術も進化している。以前は、大型プラントを必要とする「ケミカルリサイクル」が一般的だったが、現在は、リサイクルにかかるコストを2~3割抑えられる「メカニカルリサイクル」の利用が進んでいる。

メカニカル処理をする浄化設備

メカニカルリサイクルで課題とされてきたのが、再生フレークの品質である。メカニカルリサイクルは、廃ペットボトルを粉砕してフレーク状にし、特殊なアルカリ液で洗浄した後、真空・高温下でフレークに染み込んだ不純物を吸い出す。この技術に注目したサントリーは2009年、リサイクル設備を持つ協栄産業(栃木県小山市)と共同でリサイクル技術の確立に着手した。

再生ペットの品質調査には1年以上を要した。疎水性や沸点の異なる物質を網羅的に選んで混ぜた汚染溶液の中にフレークを入れた「汚染フレーク」を用意。汚染フレークで作ったペットボトルに飲料を入れて35℃で最大3カ月間保管し、汚染物質が飲料にどれくらい溶け出すかを繰り返し検証した。

厚生労働省は、再生ペットボトルから飲料へ汚染物質が溶出する限度値を「1L当たり10μg以下」と定めており、この基準を満たしていることを確認した。

リサイクルを商品価値に

サントリーは、メカニカルリサイクル材50%で製造したペットボトルを2011年までに約25万本出荷した。消費者から否定的な意見がなかったことから、2012年4月に100%リサイクル材を利用したペットボトルの導入に踏み切った。同社が年間に使うリサイクル材は1万1000~1万5000tで、2011年に1割未満だったメカニカルリサイクル材の割合は、2014年に8割以上になった。

2014年2月には、キリンがメカニカルリサイクル材100%で作ったペットボトルを「午後の紅茶 おいしい無糖」で採用した。同社は、リサイクル材の利用をマーケティング戦略の1つとしても位置付ける。ボトルのラベルに「100%再生」であることを表記し、リサイクルで再生したペットボトルも商品価値の1つとしてアピールする。

日本コカ・コーラもメカニカルリサイクルの利用を検討中だ。同社は、ペットボトルの原料に植物由来樹脂を使った「プラントボトル」の利用も推進している。ペットボトルは、テレフタル酸とエチレングリコールという2種類の物質からできている。このうち、サトウキビから砂糖を取り出す際に出る副産物から生成したエチレングリコールをペットボトルの原料として利用する。

親会社の米コカ・コーラは、米国とオランダのバイオテクノロジー企業3社と提携し、植物由来100%のボトル開発に向けて研究開発を進めている。2020年までに、同社がペットボトル製造に使用するバージン材を植物由来原料に切り替える意向を表明している。

ペットボトルの軽量化やリサイクル技術の追求は、環境負荷低減に欠かせないだけでなく、飲料メーカーがグローバルで勝ち抜くために必要な要素になっている。

(日経エコロジー 半沢智)

[日経エコロジー2015年5月号の記事を基に再構成]

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