病院や街でも…建築、防災に行動の「見える化革命」
建設ITジャーナリスト 家入龍太

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2015/5/13 6:30
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 病院などの建物や工事現場、街角などにいる人々の行動を解析し、人の体調や人間同士のコミュニケーション、群衆の動きといった複雑な現象が「見える化」できるようになった。IT(情報技術)を活用したこの解析を、建物の設計や現場の安全管理、そして防災対策に生かす取り組みが行われている。最新の4事例やシステムを紹介する。

【事例1】 病院設計(竹中工務店)

最近の医療現場では、医療サービスが高度化・複雑化することに対応して、「チーム医療」が主流になってきた。医師や看護師だけでなく、薬剤師や臨床検査技師、放射線技師、栄養士、そして事務職員がチームを組んで医療現場の課題に対応する方法だ。

そこで重要になってくるのが、チーム医療を担うスタッフ同士で行う、ちょっとした立ち話などのコミュニケーションだ。

複数の職種のスタッフが病院内をどのように動き回り、どこで顔を合わすのかは、建物ができてからでないとなかなか分からない。

竹中工務店は病院の設計段階で、いつ、どこで、誰と誰が出会い、どの程度のコミュニケーションが生まれるのかを、動画で見える化するツールを開発した。

設計段階での立ち話の発生を動画で見える化するツール。赤丸の場所がインフォーマルなコミュニケーションの発生場所(資料:竹中工務店)

設計段階での立ち話の発生を動画で見える化するツール。赤丸の場所がインフォーマルなコミュニケーションの発生場所(資料:竹中工務店)

ツールの開発ではまず、医師や看護婦などのスタッフに診察や処置、会議など1日のスケジュールをアンケート調査。個々のスタッフの行動パターンを把握した。

そして竹中工務店がこれまでの医療施設の計画で培ってきたノウハウを加味し、医療スタッフの行動特性データを作成した。

行動特性データと、病棟の設計プランなどの情報を組み合わせてコンピューターでシミュレーションを実施、コミュニケーションの発生状況を動画で表示することに成功した。

シミュレーションには、個々のスタッフが自律的に行動し、相互作用を分析する「マルチエージェントシミュレーション」という手法を用いている。つまり、コンピューター上のシミュレーションとはいえ、人間はランダムに動くのではなく、それぞれの意思やスケジュールなどによって現実と同様な動きをする。

この見える化ツールは、新潟県長岡市にある立川綜合病院の移転新築に導入された。その結果、病院の設計が変わった。スタッフのコミュニケーションを促進するために、4つの病棟の中心に「スタッフベース」と呼ばれるという新しい空間を設けることになったのだ。

スタッフベースの平面図(左)と断面図(右)(資料:竹中工務店)

スタッフベースの平面図(左)と断面図(右)(資料:竹中工務店)

■コミュニケーション量は20%アップ

スタッフベースとは、医療の最前線から少し離れたリラックスできる場所にあり、医療スタッフが打ち合わせや休憩などで集まるためのエリアだ。

このエリアにはクローズドカンファレンス用の会議室や、オープンカンファレンス用の共用スペースがあるほか、吹き抜けや階段が一体で配置されており、フロアを超えて複数の病棟間でスタッフ同士のインフォーマルなコミュニケーションができるようになっている。

スタッフベースを設けることにより、スタッフ間のコミュニケーション量が約20%増えることが解析によって確認された。つまり、スタッフ同士のコミュニケーションが重視される知的な仕事の生産性や成果は、シミュレーションの結果を空間設計に反映させることで高められる時代になったのだ。竹中工務店はこのツールを今後、オフィスや工場などの設計にも活用していく方針だ。

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