2018年6月24日(日)

異なる言語間の対話仲介 人工知能で「同時通訳」手元に
宮本和明 米ベンチャークレフ代表

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2015/5/11 6:30
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 彼の名は、ある機械が人工知能であるかどうかをテストする試験「Turing Test」にも名が残っている。第87回アカデミー賞で脚色賞を受賞した映画「The Imitation Game」(邦題:イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密)は、Turing氏の人生を描いたものだ。

 その後、米IBMなどが機械翻訳の開発を進め、大きな期待を寄せられたものの成果は限定的だった。米国防総省(DoD)などは、自動翻訳システムの開発に疑問を呈し、機械翻訳研究は停止に追い込まれた。

 その一方で、1970年から1980年代は機械翻訳のベースとなる基礎技術の開発が進んだ。Lalit Bahl氏らは、後に「Hidden Markov Models」と呼ばれる音声認識アルゴリズムを開発(Skype Translatorの音声認識はHidden Markov ModelsとDeep Neural Networksを組み合わせた構造)。Bahl氏は後に、IBM のWatson Research Centerで自動翻訳技術開発を始める。

 人工知能技術では、Deep Neural Networksの研究が行われ、Yann LeCun氏などによりネットワークが改良されて機能が向上した。機械翻訳の研究自体は停滞したが、そのベースとなる技術の研究が進んだというわけだ。

 1997年には、米Dragon Systems(当時)とIBMから音声認識技術を使った消費者向けの製品が登場し、キーボードでタイプする代わりに音声で入力できるようになった。Dragon Systemsは「Dragon NaturallySpeaking」をリリース。音声認識ソフトウエアの代名詞となった。同社はその後Nuance Communicationsに買収された。一方、IBMは「ViaVoice」という音声認識ソフトウエアをリリースし、業務などでも使われた。

■Microsoftの功績

 Microsoftは2005年から機械翻訳の研究を開始し、2009年から音声認識で人工知能技術を適用した。2013年には、向上した音声認識技術を「Bing Voice Search for Windows Phone」に適用。下写真はiPhone向けの「Bing Search」で、音声認識精度は極めて高い。

出典: VentureClef

出典: VentureClef

 機械翻訳の研究成果はBing、Office、SharePoint、Yammerなどにも応用された。2014年には、パーソナルアシスタント「Cortana(コルタナ)」にDeep Neural Networksモデルが適用され、音声認識率が大幅に向上した。Microsoftが音声認識に人工知能を適用する手法を示したことで、業界で幅広く使われるようになった。

 ちなみに、Skype Translatorの機械翻訳では「Microsoft Translate」が使われている。

■「最大の誤算」の汚名返上か

 言語はしばしば猛獣に例えられる。一定ではなく常に移り変わり、様々な種類が存在するため、扱いにくいという意味である。また、話し言葉と書き言葉の間には大きな差異がある。言葉はその使われ方で、地方、国、文化など、利用者のアイデンティティーを反映する。

 この多様な言語の理解に、ソーシャルネットワークが有効な学習教材となってきた。Microsoftは自らが出資するFacebook(フェイスブック)などのソーシャルネットワークで言語の多様性を把握し、翻訳の研究を重ねてきた。この研究がSkype Translatorの日常用語や語彙の翻訳で役立っている。

出典: Microsoft

出典: Microsoft

 情報処理技術の最大の誤算は、機械翻訳であると言われてきた。開発当初は、コンピューター技術の進化とともに、翻訳技術が完成するのは時間の問題と思われていた。これが予想外に難航し、開発が始まってから70年たった今も、機械翻訳は完成しているとは言い難い。

 しかし、Deep Neural Networksという武器を手にしたことで音声認識技術なども格段に向上し、完成に向けて大きく前進している。Google(グーグル)がサービスを提供する音声検索で認識率が格段に向上したのも、Deep Neural Networksの採用によるところが大きい。

宮本和明(みやもと・かずあき)
米ベンチャークレフ代表 1955年広島県生まれ。1985年、富士通より米国アムダールに赴任。北米でのスーパーコンピューター事業を推進。2003年、シリコンバレーでベンチャークレフを設立。ベンチャー企業を中心とする、ソフトウエア先端技術の研究を行う。20年に及ぶシリコンバレーでのキャリアを背景に、ブログ「Emerging Technology Review」で技術トレンドをレポートしている。

[ITpro 2015年3月3日付の記事を基に再構成]

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