2019年8月23日(金)

現代医学の壁、電気刺激で克服 リウマチ・うつ…

2015/4/25 6:30
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日経サイエンス

病気の治療に電気刺激を用いる「バイオエレクトロニック医学」と呼ばれる分野の研究が進んでいる。小型装置を体内に埋め込んで心筋に電気刺激を与えて心臓がきちんと動くようにするペースメーカーはすでに広く使われているが、将来は一部の医薬品に代わり様々な病気を治療する手段として広く使われるかもしれない。

有望とみられるのが炎症の治療だ。私たちの体には炎症を抑える仕組みが備わっている。熱や化学物質などにさらされた場合、そうしたストレスに体が過剰反応しないように、ある種の電気シグナルが脳から体内の器官に送り出され、炎症を引き起こす免疫分子の産生を抑制する。そうした電気シグナルを、体内に埋め込んだ装置で人工的に発生させることで、人体の仕組みをうまく利用して炎症を抑えようというわけだ。

■体内埋め込み装置で神経を制御

体内にコンパクトな装置を埋め込み、脳に電気刺激を与えることで様々な病気を治療する(提供:BRYAN CHRISTIE)

体内にコンパクトな装置を埋め込み、脳に電気刺激を与えることで様々な病気を治療する(提供:BRYAN CHRISTIE)

また関節リウマチなどの自己免疫疾患は炎症を抑える神経回路が適切に機能せず、過剰な免疫反応が起きることが原因とみられている。そこで電気刺激によって神経回路をうまく制御できれば、症状が改善する可能性がある。オランダ・アムステルダム大学と製薬大手のグラクソ・スミスクラインの共同グループが関節リウマチの患者に対する臨床試験を進めている。

2012年の米リウマチ学会での発表によると、長期にわたって重い関節リウマチに苦しんできた8人の患者のうち6人が、電気刺激装置の埋め込み手術後、症状がかなり改善したという。

もう一つ有望なのは重いうつ病(大うつ病)の治療だ。大うつ病は脳内の複数の神経回路が正常に機能しないことで起こることがわかってきた。そこで、そうした回路に電流を流して信号伝達の障害を正すことで症状を緩和する治療法が試みられている。脳深部刺激法という。

大うつ病は心理療法をはじめ薬物療法、電気けいれん療法など現在利用可能な治療法が有効だが、患者の10~20%にはこうした治療がほとんど、あるいは全く効かない。こうした難治性の大うつ病の患者の治療法として脳深部刺激法が注目されている。

この手法は、病院での通常の治療法としてはまだ承認されていないものの、これまで世界で約200人に試験的に行われてきた。患者の中には症状が完全に消えた人もいるが、治療結果には幅があり、誰にでも効果があるわけではない。さらに臨床研究が進めば、どんな患者に脳深部刺激法が有効なのかわかってくると期待されている。

(詳細は25日発売の日経サイエンス6月号に掲載)

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