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郭泰源の再来となるか 西武の台湾出身右腕・郭俊麟

1980年代から90年代の黄金時代を経験した田辺新監督が就任した西武。昨年の5位から巻き返しを目指したが、オフのストーブリーグではパッとしなかった。チームの顔として長きにわたって活躍した松坂(ソフトバンク)や中島(オリックス)が日本球界に戻ってきたにもかかわらず、獲得競争で敗れて目立った補強はなし。開幕前の評価は低かった。ところが、である。前評判を覆し、1991年以来24年ぶりの開幕5連勝と好スタートを切った。好調なチームを支える一人が台湾から加入した新戦力の郭俊麟だ。

初先発初勝利で開幕5連勝に貢献

国立台湾体育運動大を卒業し、台湾ではプロを経験せずに日本球界に飛び込んだ23歳の初登板は開幕カード第3戦、3月29日のオリックス戦だった。さすがに緊張したのか、この日の制球は不安定だった。二回に小谷野に本塁打を浴びるなど5安打を集中されて3点を失う。しかし、その裏に味方が1点を返すと落ち着きを取り戻した。三回以降は走者は出しても粘りの投球で得点は許さない。5回を6安打3失点。エースの岸、左腕の菊池を故障で欠く苦しい台所事情のチームを救う初登板初白星となった。

2度目の先発となった今月5日のソフトバンク戦の投球は圧巻だった。一回、秋山、栗山の連続本塁打で2点を先制したこともあり、終始余裕のある投球で昨年の日本一チームをあしらった。要所で持ち味の130キロ台のチェンジアップを駆使して相手打線につけいる隙を与えない。球数が123球と多かったこともあって完封こそ逃したが、8回4安打無失点。田辺監督が「うちの投手陣の中で一番安定しているので、そこそこ抑えてくれると思っていたが、予想以上だった」とたたえるほどだった。

地元メディアの前で苦い初黒星

ただ、3度目の先発となった12日の西武プリンスドームでのロッテ戦は未熟さを露呈した試合となった。この日は「台湾デー」と銘打たれ、台湾の先住民族アミ族による民族舞踊の披露や、中国語での選手紹介などが行われた。台湾メディアも7社が取材に訪れていたが、注目を浴びるマウンドで余計な力が入ったか、もしくはプレッシャーを感じたのか。それまでの2度の登板と違うのは明らかだった。

立ち上がりは上々だった。先頭打者の根元を中飛、続く荻野を空振り三振と簡単に2死とした。ところが、角中に右前打を浴びてリズムが狂った。4番今江にも左前打を許すと、その後は独り相撲。連続四球の押し出しで1点を失い、二回にも先頭の8番吉田に左中間を破る二塁打を浴びるなど3安打1四球と乱れて3失点。2回54球で4失点で早々とKOされた。

「全体的にコントロールが悪く、ストライクゾーンに入ったボールは甘すぎた」と郭俊麟はぽつり。何しろ、この日はボールが高かった。決め球のチェンジアップも低めに制球できなければ威力も半減する。田辺監督が「力みがあったのかもしれない」と評したように、特別な試合という意識が強すぎたのだろう。ほろ苦い来日初黒星となってしまった。

豊富な国際経験、「侍」相手にも好投

郭俊麟が日本球界にその実力を披露したのが、2013年11月に台湾で開催された国際強化試合「2013ベースボールチャレンジ」の第3戦。梶谷(DeNA)、中田(日本ハム)、浅村(西武)ら若手主体で編成された日本代表を相手に6回5安打1失点と好投した。昨年の韓国・仁川アジア大会ではプロをそろえた韓国相手の決勝で先発し、4回2/3を投げて4安打2失点。同年11月の21歳以下(21U)ワールドカップ(W杯)の日本との決勝では7回を投げ4安打無失点、大会MVPにも選ばれた。豊富な国際経験を持っていることも郭俊麟の強みの一つといえるだろう。

ところで、台湾出身で郭といえば田辺監督らとともに黄金時代の西武を支えた郭泰源を思い出す。「オリエント・エクスプレス」の異名を誇り、150キロを超す速球と140キロ台の高速スライダーで勝利を積み重ねた。入団1年目の85年にノーヒットノーランを記録したほか、MVPとベストナインを各1回、ゴールデングラブ賞を2回獲得するなど、プロ通算13年で117勝68敗18セーブで防御率3.16。郭俊麟の背番号「12」は大先輩の郭泰源が入団から2年間つけていたものだ。

西武に連なる台湾出身投手の系譜

また、郭泰源のほかにも西武には台湾出身の好投手がいた。台湾プロ野球から00年に西武に入団した許銘傑は01年に11勝で防御率リーグ2位をマークし、02年には9勝をあげてリーグ優勝に貢献。13年まで日本でプレーして49勝49敗2セーブの記録を残している。

許銘傑と同時期にチームに在籍したのが張誌家。02年シーズン途中からの入団にもかかわらず、この年10勝をあげ、日本記録となる28イニング連続奪三振をマーク。直球と同じ腕の振りから繰り出すチェンジアップは打者を戸惑わせた。実働3年で通算26勝19敗1セーブと活躍期間は短かったが、強烈な印象を残している。

「今回の反省点を次回に生かしたい」と切り替える郭俊麟。次の先発は19日のオリックス戦が予想される。菊池は今月中に1軍に復帰できそうだが、岸は5月にずれ込みそう。海外でプロを経験していないことから、初の外国出身の新人王の可能性もある23歳にかかる期待は大きい。7勝5敗で2位につける西武が、開幕からのチームの勢いを保ち、08年以来のリーグ優勝を遂げるには郭俊麟の働きは欠かせないところだ。

(馬場到)

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