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我こそ次代の旗手 鮮烈デビューの西武・森、主戦捕手へ高きハードル

スポーツライター 浜田昭八

鮮烈なプロ球界への登場だった。西武ドラフト1位新人の森友哉は、昨年8月14日のオリックス戦、同15、16日の日本ハム戦で3試合連続ホーマーを放った。高卒新人でプロ1号から3試合連発を記録したのは、46年ぶりと話題になった。

しかも、1号は左翼へ、2号は右翼へ、3号は中堅バックスクリーンへと、見事に打ち分けたものだった。さらに、1、3号は代打での快打。小柄だがパンチ力があり、たくましい勝負度胸も備えている。「これはただ者ではない」と周囲は改めて森の力を見直した。そして、1980年代から90年代にわたる西武黄金期の本塁を守り続けた伊東勤(現ロッテ監督)のような捕手に育つのではないかと、大きな期待を寄せられた。

7月末からの1軍登場だったので、1年目の出場は41試合だった。それで打率2割7分5厘、6ホーマー、15打点の打撃成績は合格といっていいだろう。3連発の顔見せが強烈なインパクトを与えただけに、他球団もこの恐るべき新人を十分に警戒するようになった。森も「甘い球が来なくなった」と感じ始めた。

課題は変化球打ちと左腕対策

課題は変化球打ちと左腕対策だった。速球にはなんとか食らいついたものの、落ちる変化球に苦しむことが多くなった。打率3割6厘をマークした右投手とは対照的に、左腕には1割6分7厘しか残せなかった。左打者の森にとって、背中の方から内角へ入ってくる左腕の変化球が、最も厄介なものだった。

打撃はまだしも、捕手としてプロのレベルに達していないとみられたのは残念なことだった。肩には自信があるが、ワンバウンドする落ちる変化球の捕球に悩まされた。それ以上に首脳陣に不満に思われたのは、単調なリードだった。

大阪桐蔭高の捕手だったときは藤浪晋太郎(現阪神)の速球を主体に、攻める配球をすればよかった。1学年上、長身の藤浪を見上げるようにした小柄な森が「速球で内角をどんどん突こう」とハッパをかける姿はユーモラスでもあり、頼もしくもあった。だが、プロにはさまざまなタイプの投手がいる。菊池雄星のように速球で攻めまくる投手は、森の強気のリードと相性がよかった。

だが、大きなカーブなど多彩な変化球を駆使する岸孝之や、球を散らして相手を惑わせる下手投げの牧田和久らは、森の強気一辺倒のリードに困惑した。そんなところから森の捕手としての出番はなかなか増えなかった。

近年の西武の本塁は、炭谷銀仁朗が守ってきた。14年にフリーエージェント(FA)の資格を得たので、チームから出るのではないかとみられた。打率は低いが勝負強く、意外性のある好打を放つ。両リーグを通じて最高の盗塁阻止率を誇る強肩だし、リードは粘り強い。他球団からも引く手あまただったが、西武に残留する道を選んだ。捕手としての森の力量に脅威を感じていたら、FA移籍をしていただろう。球団も森の「主戦捕手」への道は険しいと判断して、炭谷の残留を強く推し進めたのだった。

根気強いリードを身につけてこそ

森にとって入団2年目の15年は、変わらずに険しい。1年目を終えたあとの秋季キャンプから捕手として、徹底的に鍛えられた。最低でも炭谷に次ぐ「捕手2番手」にならなければならない。だが、今春の宮崎キャンプ、オープン戦を通して、変化は見られなかった。

3月半ばには、業を煮やした田辺徳雄監督が「リードに進歩の跡が見えない」と見切りをつけ、2軍で経験を積むように命じた。それでも、森の打撃は捨て難い。15年の公式戦が始まると、森を6番指名打者(DH)で使い続けた。開幕の対オリックス3連戦で、森は2試合で殊勲打を放ち、開幕ダッシュに貢献した。

では、捕手森の将来はどうなるのか。今は「試合に出られるなら、どんな形でもいい」と言っているが、捕手への夢はあきらめてはいない。その夢をかなえるには弱気ではなく、根気強いリードを身につけねばなるまい。本人は巨人・阿部慎之助を目標にしているが、タイプからして中日・谷繁元信に近い捕手になるのではないか。高卒で捕手ひと筋、44歳で27年目。森にもそれぐらいの足跡を球界に残す力があるはずだ。

 森友哉(もり・ともや) 1995年大阪府出身。2014年大阪桐蔭高からドラフト1位で西武入り。12年には藤浪晋太郎とバッテリーを組み、甲子園大会の春夏連覇に貢献した。プロ2年目の今季は指名打者で出場している。170センチ、80キロ、右投げ左打ち。

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