「とりあえずIoT」は思考の怠惰 本質は人間の理解
みらいのトビラ(4)

(3/3ページ)
2015/4/16 6:30
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――話題を変えますが、1000人に1人の人材を生かすには、やはりベンチャー企業に行くしかないということになりませんか。

山本一郎(やまもと・いちろう)
1996年、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。国際電気(現・日立国際電気)入社後、調査会社、外資系証券会社調査委託などを経て、2000年、IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作を行うイレギュラーズアンドパートナーズ株式会社を設立。ベンチャービジネスの設立や技術系企業の財務・資金調達など技術動向と金融市場、各種統計処理や分析業務に精通。また、対日投資向けコンサルティング、投資ファンドを設立。著書に『ネットビジネスの終わり (Voice select)』(PHP研究所)、『投資情報のカラクリ』(ソフトバンククリエイティブ)など多数。日本随一の時事・経済系ブロガーとしても知られる。2013年都市型高齢化検証プロジェクト『首都圏2030』を立ち上げ、現在東京大学客員研究員も務める

山本一郎(やまもと・いちろう)
1996年、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。国際電気(現・日立国際電気)入社後、調査会社、外資系証券会社調査委託などを経て、2000年、IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作を行うイレギュラーズアンドパートナーズ株式会社を設立。ベンチャービジネスの設立や技術系企業の財務・資金調達など技術動向と金融市場、各種統計処理や分析業務に精通。また、対日投資向けコンサルティング、投資ファンドを設立。著書に『ネットビジネスの終わり (Voice select)』(PHP研究所)、『投資情報のカラクリ』(ソフトバンククリエイティブ)など多数。日本随一の時事・経済系ブロガーとしても知られる。2013年都市型高齢化検証プロジェクト『首都圏2030』を立ち上げ、現在東京大学客員研究員も務める

山本 いや、シーズアウトのシーズって、結局は知的好奇心から出てくるものです。「これが実現したらどうなるんだろう」とか、「今ある技術の組み合わせでこんなことができる、最高にクールじゃないか」とか。でも、ある会社の研究所に呼ばれて、いろいろ提案して欲しいというので、その前座として研究職の300人の方たちに「最近、何の論文を読みましたか」と聞いてみたんです。そうすれば、研究者たちの好奇心、興味が分かりますから。

それを自分でチェックしてみてくださいと話すわけです。例えば、「過去1カ月でも1年でもいいので、ご自身の専門分野外の、何本の論文を読んだか覚えていますか。本でもいいです。もしくは、どこかよく分からない場所に行って、いろいろな人と話す機会はどれくらいありましたか」という話ですね。

つまり、「これまでの自分の延長線上になかったことを、どれだけやったか」を一度指標化してみたらと提案したんです。この試みは結構フィットしました。会社としては、「研究者が何に刺激を感じているのか」を定量化して、少しでも訳の分からないことをしでかしそうな好奇心の強い研究者を見つけたい、ということです。

川口 結局、異分野の人にでも通用するような仮説を持とうとしたら、すごくメタな仮説になる。それを明示的に持っている方がいいんです。漠とした状態で、いきなり異分野の人と会っても得るものは少ない。

でも、例えば、「世の中なんでもハイブリッド化しているよね」という「ハイブリッド仮説」を持っていたら、異分野の人との対話で「この人が言っているのは、何だかハイブリッドの話だ」ということに気付くじゃないですか。

――アナロジーですね。

川口 自分が持っているアナロジーがしょぼいほど、遠く離れた分野では通用しなくなります。その意味では、できるだけメタな仮説を持っていた方がいい。それは自分で気付くに越したことはないけれど、本を読んだりして、自分の中で仮想化しておく必要があります。自分が得意な分野ではいろいろと具体例を挙げられるけれど、異分野では挙げられないということでは、ボキャブラリーが貧弱になってしまう。

山本 先ほどのヘッドギアもそうですけれど、人間自体が大いなるセンサーです。それを利用して人間の感覚や知覚をうまく組み合わせるような仕掛けをエレクトロニクスで実現していくと、取り組めることは膨大に出てくると思います。

その話をしても、最初は分かってもらえない。でも、エレクトロニクス業界でやっている「ユーザーインタフェース(UI)」や「ユーザーエクスペリエンス(UX)」も見方によっては、その仕組みの一つです。例えば、テレビであれば、視聴した映像コンテンツを視聴者が「クール」と思ったかどうか分かる仕組みを考えましょうとなる。例えばテレビを見ている人の脳波を計測して、「ああ、この人はテレビの前で眠そうだ」となれば、つまらないと思っているのかもしれない。いろいろなアプリケーションを考えられます。

それを担うのがエレクトロニクス業界だから、そう言うことを考えられる人を増やしましょう、という話をメーカーに提言してみたりするわけです。でも、エレクトロニクス業界の人たちは「会社から必要だと言われた機能を満たすようにモノをつくればいい」というところに完結している。

つまり、「私たちはテレビを作っています」という機能だけの話じゃなくて、人はなぜテレビをつけるのか、その機能に何を求めているのかが包括的に分からないと、テレビが電波に乗って降ってくるコンテンツを垂れ流したり、録画したコンテンツを表示するだけの機械になってしまう。そういう機能進化の軸と異なる他の機能と融合できるのだとしたら、もっと快適なモノをつくれますよね。企業はそこを怠ってるんじゃないか、と強く思うんです。

(聞き手:日経エレクトロニクス編集長 今井拓司)

[日経テクノロジーオンライン2015年3月16日付の記事を基に再構成]

[参考]日経BP社は2014年12月28日、調査レポート「メガトレンド2015-2024 ICT・エレクトロニクス編」を発行した。成熟期に近づいたエレクトロニクス分野が、バイオ、脳科学、ICT、情報サービスといった萌芽・成長分野と融合する新しい潮流を洞察した。「ムーアの法則」終焉と市場ニーズの多角化を分析し、大変化が起こるクラウド、IoT、人工知能、3Dプリンター、ロボット、ロジスティクス、ビッグデータなどの未来像を予測分析。10年後のICT・エレクトロニクス産業の姿を提示した。詳細は、http://www.nikkeibp.co.jp/lab/mirai/megatrend2015/megatrend2015-ict.html
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