「とりあえずIoT」は思考の怠惰 本質は人間の理解
みらいのトビラ(4)

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2015/4/16 6:30
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川口盛之助(かわぐち・もりのすけ)
1984年、慶應義塾大工学部卒、イリノイ大学修士課程修了(化学専攻)。 技術とイノベーションの育成に関するエキスパート。世界的な戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトル・ジャパンにおいて、アソシエート・ディレクターを務めたのち、株式会社盛之助を設立。国内のみならずアジア各国の政府機関からの招聘を受け、研究開発戦略や商品開発戦略などのコンサルティングを行う。その代表的著作『オタクで女の子な国のモノづくり』(講談社BIZ)は、技術と経営を結ぶ良書に与えられる「日経BizTech図書賞」を受賞し、英語、韓国語、中国語、タイ語にも翻訳される。心をつかむレクチャーの達人としても広く知られる

川口盛之助(かわぐち・もりのすけ)
1984年、慶應義塾大工学部卒、イリノイ大学修士課程修了(化学専攻)。 技術とイノベーションの育成に関するエキスパート。世界的な戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトル・ジャパンにおいて、アソシエート・ディレクターを務めたのち、株式会社盛之助を設立。国内のみならずアジア各国の政府機関からの招聘を受け、研究開発戦略や商品開発戦略などのコンサルティングを行う。その代表的著作『オタクで女の子な国のモノづくり』(講談社BIZ)は、技術と経営を結ぶ良書に与えられる「日経BizTech図書賞」を受賞し、英語、韓国語、中国語、タイ語にも翻訳される。心をつかむレクチャーの達人としても広く知られる

川口 私はね、IoTという言葉が嫌いす。その理由は、IoTの話をするときに描かれる将来像に「思考が怠惰」なものが多いからです。その典型は、電力のスマートグリッドです。「地球環境に優しいと、とりあえず言っておけばいいや」ということが透けて見える。

私が思うIoTは、人間とマシンのハイブリッド化です。人間の脳を一つのセンサーとして組み込んだシステムという定義が一番ぴったりする。分かりやすい例では、あるベンチャー企業がキックスターターで出していたものに感心しました。レンタル自転車のユーザーに、脳波を測定する簡易的なヘッドギアを着けてもらう。それでGPS(全地球測位システム)と連動して、「クール」と思った場所は青くなって、「うざい」と思った場所は赤くなる程度ですが。

――人間の脳を「好き・嫌い」のセンサーに使うわけですね。

川口 このシステムが意味していることは深遠で、「なぜクールなのか」「なぜ退屈なのか」は気にしていない。答えは、「好きか、嫌いか」だけ。「その場所はちょっと高台になっていて見晴らしがいい」といった理屈は後からきます。

「怠惰な思考」では、その結果を「この場所は事故が多い」といった現世利益が分かりやすいところに結び付けがちです。その方が、予算がつきやすいからです。

これを実現しているシステムは、簡単なヘッドギアとGPSだけです。もし、最初から「事故」とかと結び付けようとしたら、本格的にドクターイエローみたいな専用車を走らせて、あらゆる情報を全部取得し分析、ということをやらなければならない。でも、そのベンチャー企業のシステムは、誰でも簡単なヘッドギアを着けてママチャリで走るだけでいい。

――その程度で、結構なことが分かるわけですね。

川口 そう。何となくクールじゃないですか。恐らく、こうしたシステムが使われ始めると、多くの技術者がさらに高度なシステムに高めていく。そこは1000人のうち999人に任せておけばいい。1000人に1人の好奇心を持った人は、そういうシステムの構造自体を思い付くんですよ。

人間やほかの生物の「ROI(投資対効果)」は、ものすごく高い。すごく練られたシステムで、そのうえ、理屈よりも答えが先に出てくる。その方が分かりやすい。

山本 「おっ、ここ、いいじゃん」と言いながらね。

川口 そう。「いいじゃん」ということを機械に判断させるのは、とてつもなく大変。だから、その部分は人間のいいところを取り出した方がいい。マシンアシストです。ママチャリの駆動系にはモーターアシストのハイブリッド機構が入ったわけだけど、ECU(エンジン・コントロール・ユニット)とドライバーの大脳もアシストハイブリッドというのが、一番楽です。

それをコンピューターで可視化された世界に引き出してこないと、お金にならない。でも、観光や行政の人たちが料理の仕方でお金に変える方法はたくさんある。だから、最高のIoTセンサー兼プロセッサー、スマートセンサーとして人間を使っているシステムが優れたシステムなんです。そういう世界を描いたうえで、謙虚に「そのカメラは何ができるんだろう」などと考えないと、傲慢になってしまう。必ずロードマップ至上主義に陥ります。

山本 今、そこに陥りそうになっているところがたくさんありますよ。

川口 放っておくと、999人の側に部長がいたりして自分を正当化するために思考が怠惰になって、「とりあえずこういうことを言っておきゃいいや」となってしまう。

だけど、本当にやらなければならないことは、さまざまな分野の境界領域が見えてきた今、世界観を構築して、その一側面としてIoTを捉えることです。IoTのようなバズワードがいろいろとある中で、それに対してメタな境界領域がかぶさってきたということをどう翻訳できるかが大切になっています。もちろん、絶対にリアルとバーチャルの界面にはメカトロニクスが発生します。リアルがすべて、仮想現実(VR)にならない限りは…。

山本 さまざまな分野の技術が融合した超実装部分ですよね。

川口 多くの技術者は、自分の専門分野が中心になる。それで、シーズアウトをやりたくてブラックボックスを作りたがるんです。それは自己正当化というような保護本能がなせるワザで、ほとんどはそこから思考の怠惰に陥ります。

山本 保身ですね。

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