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丸ごとレビュー さらばIE、マイクロソフトの新生ブラウザーを試す

フリーライター 竹内 亮介

新しいウェブブラウザー「スパルタン」が利用できるようになったビルド10049を、ノートパソコンやタブレットにインストールして試した

ウィンドウズ95から20年にわたってパソコンユーザーになじんできた「インターネットエクスプローラ」(IE)がいよいよ世代交代する。米マイクロソフトが2015年夏に発売を予定している「ウィンドウズ10」では、「プロジェクト スパルタン」(コードネーム、以下スパルタン)と呼ぶ新しいウェブブラウザーを追加し、IEは互換性を保つためだけに存在する"控え"という扱いになる。現地時間3月30日、ウィンドウズ10の機能を体験できる最新プレビュー「ビルド10049」が公開され、ついにスパルタンが追加された。これまで積み重ねてきたIEの系譜にピリオドを打ち、新たな用途の創出を狙った新ブラウザーを試してみた。

ウェブブラウザーの重要性高まる

一昔前にウェブブラウザーで行うことといえば、「インターネット上での情報収集」程度だった。しかし現在は、SNSや金融サービス、ゲームなど、ウェブブラウザー上で利用できるサービスは大幅に増えており、非常に重要な役割を担うアプリとなっている。ウェブサイトを記述する言語の機能も向上しており、今後はますます重要性が高まる。

グーグルの「クロームOS」を搭載する「クロームブック」では、ウェブブラウザーの「クローム」自体がアプリを利用するプラットフォームとして機能する

スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスでは、アプリを通じてそうしたサービスを利用することも多い。しかしアプリの機能や使い勝手は、アプリの実装によって変わる。ウェブブラウザー上で利用できるサービスであれば、原則的にどのOSでも同じ機能を、同じインターフェースで利用できる。

マイクロソフトは、ウィンドウズ10をスマートフォンやタブレット、さらには組み込み機器にまで浸透させようとしているが、ほかのスマートデバイス用OSに比べ、アプリが充実していないという弱点を抱える。しかし優れたウェブブラウザーで先進的なウェブサービスを利用できるようになれば、こうした弱点をカバーできる。

ウィンドウズに標準で組み込まれてきたIE

ウィンドウズにも、ウィンドウズ8.1アップデートまでで利用できたIEがある。しかしIEは、あくまでパソコン上で利用することを前提に改良されてきたウェブブラウザーであり、ウェブコンテンツを表現する「レンダリングエンジン」は、マイクロソフト独自の表示を優先する傾向にある。

そのため、スマートデバイスも含めて広く普及が見込まれるウィンドウズ10向けのウェブブラウザーとしては、時代遅れな設計だった。これを解消するために導入されるのが、ビルド10049ではじめて搭載されたスパルタンという新しいウェブブラウザーだ。

 スパルタンはウィンドウズ10と同じく、状況に応じて常に最新版の提供が行われるという。バージョンの区切りでサポートが打ち切られることもない。ウィンドウズ10にアップデートすれば、OSについてもウェブブラウザーについても、ウィンドウズXPのサポート打ち切り騒ぎのようなことは考えなくてもよくなるということだ。

本当にそんなことが可能なのかどうかはまた別問題だが、かなりアグレッシブな試みと言える。ただし、既存の古い技術を使うウェブサイトや企業内サイトは多いため、ウィンドウズ10ではスパルタンとIEの両方がインストールされる。ユーザーが利用する環境やサービスに合わせ、好きなウェブブラウザーを選択できるわけだ。

オフラインでもコンテンツを読めるリーディングリスト

スパルタンは、IEとともにタスクバーに登録されている。地球儀のようなアイコンをクリックするとスパルタン、従来通りの「e」をかたどったアイコンをクリックするとIEが起動する。現状では、IEと同じくウィンドウ状態で利用するのが基本のデスクトップアプリのようだ。

各種機能や「進む」「戻る」ボタン、設定を呼び出すボタンは、IEに比べて大きめになっている。キーボードやマウスを接続せず、タッチ操作のみで利用するタブレット上で操作することを考えた設計だろう。設定のメニューも大きめなボタンやスライドバーのみで構成されており、IEに比べて設定できる項目は少なめでシンプルだ。

スパルタンの起動画面。操作用のボタンは大きめだ
設定メニューの画面。8以降で利用できるようになった「ストアアプリ」のように、シンプルで大きめのボタンを配置する

右上には、お気に入り/リーディングリスト追加ボタン、お気に入り/リーディングリストなどを参照するボタン、手書きメモ機能の起動ボタン、マイクロソフトへのフィードバックボタン、機能の呼び出しボタンが並ぶ。IEでは、気になるウェブサイトはお気に入りで整理したが、スパルタンではお気に入りに加えリーディングリストという機能が利用できるようになる。

お気に入りかリーディングリストか、どちらか好きな方を選んでコンテンツを保存できる

リーディングリストは、お気に入りの発展版のようなものだ。お気に入りではURLしか保存できないが、リーディングリストではコンテンツをダウンロードし、ネットにつながらない環境でも参照できる。気になるコンテンツをいったんスクラップしておき、後で読む機能と考えればよい。アップルの「マックOSX」や「iOS」でも同じ名前の機能があり、利用できる機能もおおむね同じだ。

画面上にマウスやタッチペンでさまざまな手書きメモを記入し、それを保存できる

手書きメモ機能では、マウスやタッチペンを使ってウェブサイトの画面上に手書きメモを追加できる。蛍光ペンによるマーキング、消しゴム機能、テキストボックスによるメモ追加機能など、ペンに関する機能は一通り備えており、なかなか面白い。また手書きメモを追加した画面をリーディングリストに保存する機能もある。

リーディングリストに登録したコンテンツは、マイクロソフトのインターネットストレージ「ワンドライブ」上に自動で保存することも可能だ。また8以降では、ワンドライブを通じてお気に入りや各ウェブサイトのパスワードを、複数のパソコンで同期する機能が利用できるようになっている。

つまり、ウィンドウズ10がインストールされた複数のパソコンや各種スマートデバイス間では、ウェブサイトに関する各種コンテンツをほぼ完全に共有できるようになる。どのデバイスからインターネットにアクセスしても、同じコンテンツを同じような使い勝手で利用できるようになるわけだ。

各ウェブサイトの表示速度は、IEとそれほど大きな違いは感じられなかった。また一部のブラウザーベースのゲームは、正しく表示されない状態になった。もっともIEは、バージョンを重ねるごとに高速化しており、表示の解釈の違いを除けば不満を感じる場面はほとんどなくなった。またスパルタン自体が開発途中であることを考えると、現状のバージョンで速度や動作状況の比較をするのはフェアではないかも知れない。

タスクビュー機能が進化

スパルタン以外は、1月に公開されたビルド9926からの変更点は少ない。とはいえ、日本語版では、日本語されていなかった一部の設定メニューがしっかりと日本語化されていたほか、サインインを簡略化する機能や、システムを保護する機能が利用可能な状態になっていた。

複数の仮想的なデスクトップを作り、関連するアプリのウィンドウのみを配置するなどして整理できるタスクビュー機能

複数のデスクトップを1台の液晶ディスプレー上で利用し、1つのデスクトップ上にたくさんのウィンドウが散らからないようにする「タスクビュー」機能では、アプリのウィンドウをドラッグアンドドロップして仮想デスクトップ間を移動できるようになった。従来は右クリックメニューから項目を選ぶという少々古くさい方法しか選べなかったため、地味ではあるがこれも使い勝手の改善につながるポイントである。

スパルタンには、今まで積み重ねてきたものをいったん破壊し、再構築するという難しい作業が伴う。しかし開発バージョンであるにもかかわらず、完成度は非常に高く、安定性にも優れていた。スマートデバイスとの連携機能も、完全に実現できればかなり便利に使えるであろうことが予想できる。

また日本語化の進行や、「あるべき機能」がちゃんと利用できるようになっていることは、製品版の完成が近づいている証拠とも言える。当初は2015年秋を予定していた発売を、夏に前倒ししたことは、完成度に対するマイクロソフトの自信の表れであり、開発は順調に進んでいるようだ。

竹内亮介(たけうち・りょうすけ)
 1970年栃木県生まれ、茨城大学卒。毎日コミュニケーションズ、日経ホーム出版社、日経BP社などを経てフリーランスライターとして独立。モバイルノートパソコン、情報機器、デジタル家電を中心にIT製品・サービスを幅広く取材し、専門誌などに執筆している。

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