2019年6月17日(月)

フィギュア羽生、敗れてなお示した表現力の進化
プロスケーター 太田由希奈

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2015/4/3 7:00
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 悔しさは必ず次へのステップの糧となる。3月29日まで行われたフィギュアスケート世界選手権(中国・上海)の男子で、ショートプログラム(SP)1位だった羽生結弦(ANA)は、フリーで逆転を許して合計271.08点で銀メダルだった。日本男子として初の世界選手権連覇という快挙を逃したが、飽くなき向上心を持つ20歳は金メダルを獲得した昨年のソチ五輪からの進化の可能性を示したともいえる。プロスケーターの太田由希奈さんは「表現力が磨かれている」と指摘する。

見応えあった「男子3強」の好勝負

今回の世界選手権は男子が特に見応えがあった。羽生選手、スペインのハビエル・フェルナンデス選手、カザフスタンのデニス・テン選手という現在の男子フィギュア界をけん引する「3強」が、それぞれミスはあったものの、最小限に抑えて演じきった。優勝したフェルナンデス選手が合計273.90点で3位のテン選手が267.72点。その差は6.18点で、誰が勝つのかは分からないという緊張感があって、非常に面白かった。

昨年11月にグランプリ(GP)シリーズの中国杯で他選手と激突、翌月には腹部の手術、年が明けてから右足首の捻挫とアクシデント続きだった今季の羽生選手。世界選手権に向けて練習が十分だったかといえば、決してそうではなかっただろう。そうした状態の中で銀メダルを獲得したというのは、上出来だったのではないか。

首位に立ったSPはコンディションの悪さを全く感じさせなかったし、フリーもミスをした2つの4回転ジャンプ以外は素晴らしかった。特に後半部分に組み込まれたトリプルアクセルからの2つの連続ジャンプは大きく加点がつく出来栄え。今季の前半にミスの出ていた3回転ルッツも落ち着いて決めるなど、一つ一つのジャンプを丁寧に跳んでいる印象を受けた。

羽生、力強さ増したスケーティング

ソチ五輪のときと比べて成長していると感じたのが表現力だ。一口に表現力というが、その根幹にあるものは「足元」だと私は思っている。どれだけ視線が鋭かろうと、どれだけ手の動きがきれいであろうと、そこにスケートの足から伝わるスピード感が伴わないと、本当に心の底から「すてきだな」とは実感できない。つまり、氷上でただ踊るだけでなく、そこにスケーティングの力強さやスキルが加わらないと、真の意味でも表現力とはいえない、と考えている。

羽生選手はソチ五輪のときと比べて、スケーティングの際のエッジが深くなっている印象がある。だから足元の力強さが違うし、スピード感も増している。以前よりも、ひきつけるスケーティングをしているなと感じる。

今回は銀メダルに終わったが、ミスに対して目をそむけずにしっかりと受け止め、負けを認める強さがある。そして、それをさらなる成長につなげる。逆境を力に――。羽生選手を世界の頂点に押し上げたのは、こうした「人間力」とでもいうべきものではないか。今季の経験はさらなる飛躍への大きな糧になったに違いない。

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