IIJ業績下方修正のワケ MVNOと携帯電話大手の微妙な関係

2015/4/2 7:00
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中古のスマートフォン(スマホ)などに差し込んで、大手携帯電話会社の半額以下の料金で利用できる「格安SIMカード」。携帯電話会社から回線を借りる仮想移動体通信事業者(MVNO)がサービスの主役だ。スマホの普及率が5割を超える中、割安感から人気に火が付いた。

家電量販店には格安スマホが並ぶ(東京都新宿区の「ビックロ ビックカメラ新宿東口店」)    

家電量販店には格安スマホが並ぶ(東京都新宿区の「ビックロ ビックカメラ新宿東口店」)    

この格安SIMを巡り、先週、気になる異変が起こった。料金競争をリードしてきた業界2位のインターネットイニシアティブ(IIJ)が3月24日、2015年3月期の業績予想を下方修正した。連結営業利益は前の期比11.8%減の50億5000万円になるとした。従来予想は同13.6%増の65億円を見込んでいた。

主な理由はNTTドコモの回線使用料がIIJの想定より上振れしたことにある。激しい料金競争を続けるMVNOと携帯電話大手の微妙な関係が浮かび上がってきた。

MVNO各社の提供する通信サービスは、12年ごろには1カ月に高速データ通信「LTE」が2ギガ(ギガは10億)バイトまで使えるプランで月額3000円程度だった。それが、13年秋には同1600円程度になり、14年秋には同1000円弱まで下がった。

MVNOは携帯電話大手のデータ通信網と自社のサーバーなどを専用線などで接続し、両者をつなぐ回線の帯域(通信速度)を単位として通信設備を借りてサービスを提供する。「土管」である専用線の太さに応じて携帯大手に回線使用料を支払う仕組みだ。この使用料は総務省のガイドラインに基づいて毎年改定している。

具体的には、通信設備にかかっているコストを回線のデータ処理能力で割って算定する。NTTドコモの場合、分母に当たる回線処理能力はスマホの急速な普及に対応するため年々拡大しており、分子に当たる設備の効率化も進める。その分、使用料も下がってきた。特に13年度の下げ幅は過去最大で、毎秒10メガ(メガは100万)ビット当たりの単価は月額で前年度比56.6%減の123万4911円だった。

ところが、3月24日にNTTドコモが総務省に届け出た14年度の使用料は前年度比23.5%減の94万5059円。下げ幅は大幅に縮小した。この料金は14年4月1日にさかのぼって適用される。IIJにとっては大きな「誤算」だった。

もともと携帯電話会社の回線利用料は前年実績を基に決まっていた。それが14年度からは、足元の設備コストや回線処理能力を利用料に反映するようになった。携帯電話の料金は通信分野の技術革新により、年々下がっている。そうしたインフラの最新動向を踏まえ、MVNOが携帯電話大手と同じ土俵で料金競争ができるようにと総務省がガイドラインを改定したのだ。

しかし、今回はそれが裏目に出た。実際には設備コストや回線処理能力がどう推移するかは1年後にならないと正確には分からない。そこで携帯電話会社が期初に暫定的な回線使用料を設定する。MVNOは月々この料金を支払い、最終的に回線使用料が決まったら暫定値との差分を精算する。

NTTドコモは昨年春、14年度の使用料は3~4割下がると設定していたようだ。ただ、分母に当たる回線のデータ処理能力の伸びが設定を下回った。より高速な「LTEアドバンスト」の導入などでスマホがより効率的に通信できるようになり、前年度ほど回線の処理能力が増やさなくても済んだことが背景にあるという。

携帯電話会社の回線使用料はMVNOが格安SIMの利用料金を設定する上での「原価」といえる。

総務省は今年5月以降、携帯電話大手にSIMロックの解除を義務付けるなどMVNOを支援することで、通信分野の競争を促進する施策をとってきた。ただ、MVNOのビジネスモデルは携帯電話大手の通信ネットワークを前提として成り立っているだけに、どこでも今回のIIJと同様の問題に直面する可能性がある。インフラを持たない通信会社であるMVNOをどう育成していくか。携帯電話会社とMVNOの間のルール整備はまだ過渡期にあるようだ。(企業報道部 高槻芳)

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