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後ろ倒しで地方局が狙い目? 女子アナへの道

 初めての就職活動は分からないことだらけ。直接企業に質問しづらいことも多いし、口コミ情報がどこまで信用できるかも不安だ。そんな悩みを解決する「就活探偵団」。就活生の疑問に答えるべく、あなたに代わって日経記者が企業に突撃取材します。

今回の質問は「女子アナになるには、どのような就活をすればいいのですか」。

今も昔も憧れの職業とされる女子アナウンサー。日本テレビから女子アナ内定を取り消された学生が日テレを相手取って訴訟、和解した出来事では「高度な清廉性」が焦点になった。求められる資質とは何か、どのような就活をすればいいのか。調査した。

「決め手は顔」を痛感

都内私大3年生、大友祐子さん(仮名)は大学ミスコンに参加を求められるほど容姿端麗な就活生。女子アナを目指して大学1年から入念に準備を進めてきた大友さん、昨夏は複数のキー局のセミナー選考を通過し、まずは第一関門を突破した。痛感したのは「決め手は顔」だった。

「実はある局のセミナー面接は質問にうまく答えられず、だめかなと思っていたのに通過しました。後で『失敗した時の表情が良かった』と言われました。他の人の話を聞いているときの表情も観察されていたそうです」

大学1年生の時に「学生キャスターで採用してください」と芸能事務所に飛び込んだこともある積極的な性格。2年生の時から複数のキー局傘下のアナウンススクールに通ってスキルを磨く一方、人脈づくりに努めてきた。

「キー局はすべてスクールを運営していますが、指導内容も結構違うので全部のスクールに通っている人もいます。スクールに通っていないと参加できないセミナーのようなものもあるので、スクールは必須だと思います。少しでもツテがあれば内定者やリポーターの方に会って話を聞きました。しかし、現役女子アナは忙しくて会うことはできず、メールでのやり取りでした」

エントリーシート(ES)で苦労するのは写真だ。「写真であなたを表現してください」などのテーマが与えられ、6枚程度の写真をべたべた貼り、文字は少しだけというESが多いという。

「ESの写真撮影のためにいろんな場所に出かけていきました。何十人もの人に『写真撮って』と頼みました。スマホの中には自分の写真ばかりです」

そして2月から始まった在京キー局の選考。大友さんは複数のキー局のESと面接を通過し、カメラテストまでたどり着いたが、残念ながら内定には至らず、今は地方局の選考を受けるため全国を飛び回っている。

「ほかの職業も考えないといけないかもしれませんけど……。今は忙しくてほかの予定が立てづらい状況です」

セミナーがダメでも本選考で内定とれる

これだけ入念な準備をして臨んでもなかなか内定には至らない。一体どのような選考基準なのか。TBSアナウンススクール校長で、長年面接官を務めた実績もあるTBSテレビ編成局アナウンス部長代理の岡田泰典さんに聞いた。

――選考時期、選考の流れはどうなっているのか。

「在京キー局の選考は2~4月。スタートして10日前後で決着します。だいたいはES提出、筆記試験、2~3回の面接をやってカメラテストをクリアすると役員面接、そして内定です。ESに写真が多いのとカメラテストがあるという点が普通の企業との違いです。カメラテストではスタジオで撮影しながら原稿を読んだり、フリートークをしてもらったりしてカメラ映りを見ます」

――セミナーでだいたい決まっているのではないか。

「確かにセミナーで内定を出す局もあるという話は聞きます。しかし、その段階で決めるのは1~2人で、本選考の枠も残しています。過去にはセミナーのESで落とされたにもかかわらず、本選考で内定をとった子も大勢います。『セミナーでダメだったから本選考を受けても意味がない』と思ってほしくはない」

1000枚写真をとる就活生も

――ESでたくさん写真を貼らせるが、やはり顔で選ぶのか。

「アナウンサーなので写真は大事ですがもちろん文章も読んでいます。写真をたくさん貼らせるのは、できるだけ普段の表情を見たいからです。スタジオで撮影した写真は全部似たものに見えてしまって、どんな子なのかわかりません。多い子は1000枚ぐらいあちこちで撮って、その中から自分らしいものを選んでいます。画像修整をする子もいますけど、たとえESを通っても『あなた、写真と同じ人?』となり、いい結果になりません」

――ミスキャンパスの肩書は有利か。

「まったく関係ないです。確かにミスの子はいますし、メディアにも取り上げられるので目立ちますが、そうじゃない子のほうが多い。ミスの肩書きがあるから内定をとれるような生易しいものではない。どうも『ミスじゃないとダメなんだ』と思う学生が多いようだが、そうではない」

――カメラテストで何を見ているのか

「はつらつと若々しく、好感が持てるかどうかですね。美人やイケメンより人に好かれる人の方がいいです。アナウンサーとしての技能はいらない、というと語弊はありますが、入社後にしっかり研修するので基本ができていれば問題ない。カメラを通すとレンズは丸いので顔の見え方が変わってきます。膨らんで見えたり、平べったく見えたり。それをチェックします。あとはカメラに向かって堂々と話せる度胸です」

緊張しても自分を出せるかどうか

――内定をとれる人、とれない人の違いは何か。

「選考を見ていると、みんな勝手に落ちていくんですね。自滅というか、緊張で頭が真っ白になって何も言えなくなったり、いつもの自分と違うことを言ってしまったり。内定をとる子は特別な才能があるというわけではなく、緊張した状況でも自然な自分を出せています。『この子はこういう子なんだな』というのが伝わるから評価されるわけです。スクールでは技術を磨くというより、緊張しても普通に話せることを訓練します」

――女子アナを目指す就活はどれぐらい費用がかかるのか。

「地方局もあちこち受けると100万円ぐらいかかることもある。うちのスクールもそれなりにお金がかかります(注:1年生からの一通りのレッスンをすべて受けると30万円弱)。スクールに通った全員がアナウンサーになれるわけではありませんが、ここで鍛えられた卒業生は『一般企業の面接が楽に感じました』と言ってくれます。アナウンサーがだめでも商社やキャビンアテンダントに進む子も多いです」

はっきりしたのは「極限の緊張状態でも素の自分を出せる能力」が求められるということ。天性のものか、それとも修羅場の数なのか、いずれにせよそう簡単に身につくものではなさそうだ。

気になるのは競争倍率だ。複数の在京キー局に問い合わせるといずれも非公表だったが、ある在京キー局の幹部社員に内情を聞くことができた。

競争倍率750倍

「在京キー局のアナウンサー受験者数は平均1000~1500人ぐらいです。内定がでるのは1局あたり2~3人です」

競争倍率でいうと330~750倍。東洋経済の「就職四季報」によると、2015年卒就活で倍率750倍を上回った企業は明治(2750倍)だけ。やはり相当な狭き門だ。ただ、女子アナを目指している就活生にとって、今シーズンは好材料があるという。

「3月までに多くの在京キー局、準キー局が採用試験を済ませています。このため就活を3月解禁になった大手企業に切り替え、地方局を受けないアナウンサー志望の就活生が目立っています。地方局は150~300人くらいの応募者に減り、競争倍率は一気に下がる可能性があります」

経団連系企業とテレビ局の就活が重なっていた昨シーズンまでは、「在京キー局がだめなら大手企業」と途中で切り替えるのは難しかった。ところが今シーズンは後ろ倒しでスケジュールがずれたため、切り替えがしやすくなったのだ。

「まずは顔、スタイル、ドジさ」と内定者

「過去に在京キー局の内定をとった」という女性にも話を聞くことができた。選考では何が重視されたのだろうか。

「どの局もまずは顔、次にスタイル。その次に求められるのはドジさ、愛嬌(あいきょう)などでしょうか。カメラテストでは『とっておきの変顔をして』『絶対外さない一発芸を』などのお題が次々に出され、いかに振り切れて瞬発力のある面白い対応ができるかを見ていたと思います。アナウンス技術などは、ずばぬけて上手な人以外は役にも立たないと感じました」

内定をとれた決め手は何だろうか。

「個人的な感想ですが、タレント活動をしていた子は強いとおもいました。タレント活動で鍛えられていたせいか瞬発芸がうまかった。あとスポーツに特化していた人。チアリーディングをやっていた子はセミナーでチアを踊ってアピールし内定をとっていた。正直、私はアナウンサー養成学校に通うのは無駄だと思う」

この女性、どこか他人も自分も突き放して冷静な目で見ているところが、アナウンサーに必要という「緊張に強い」気質を醸し出していた。やはり、狭き門をくぐり抜ける人はどこかが違うようだ。

調査結果

「高度な清廉性」はともかく、緊張への耐性は必須の条件のようだ。

(森下寛繁、岡田真知子)

 次回は4月9日(木)に掲載予定です。
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