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若手育て打線底上げ 24年ぶり広島Vのカギ

27日に開幕したプロ野球でファンの期待が最も高まっているチームの一つが広島だろう。エースの前田健太と大リーグから復帰した黒田博樹の強力な二枚看板を擁して開幕3連戦を勝ち越し、上々のスタートを切った。悲願の24年ぶりのリーグ制覇へどう戦っていくのだろうか。

「優勝請負人」の期待も背負う

「本当に彼がどれだけのプレッシャーを背負って投げたか。最高の結果を出してくれて、言葉にしようがない」。緒方孝市・新監督が29日に感慨深げにたたえたのが、7回無失点と好投して8年ぶりに日本で白星を挙げた黒田だ。

日米通算182勝の現役バリバリの大リーガーが、昨年12月に20億円ともいわれる大リーグのオファーを蹴って、推定年俸4億円プラス出来高で古巣に戻ることを決断するとファンは狂喜乱舞した。12球団で最もリーグ制覇から遠ざかっている広島。約8000席あるマツダスタジアムの年間指定席は早々に完売した。テレビでは次々と黒田の特集番組が放送され、活字やネットには「男気」という言葉があふれ出た。40歳の「優勝請負人」への期待は高まるばかりだ。

マツダスタジアムでの日本復帰初登板はスタンドが赤く染まり、3万人を超す大観衆で埋め尽くされた。「球場が真っ赤になって投げた経験がなかった」。そのうえ、ファンは黒田への思いをつづったメッセージボードや背番号「15」を掲げ、黒田の名前が場内にコールされると地鳴りのような大歓声が響き渡った。想像を絶する重圧が降りかかっていたはずだが、百戦錬磨のプロ19年目の右腕は「今までプレッシャーがないマウンドはなかった」と強心臓ぶりを発揮した。

7回を投げて三者凡退は1度のみ。制球の乱れも目につくなど本調子には遠く、味方打線も五回に1点を取るのがやっとの苦しいマウンドが続いた。それでも「1点を取ってもらったら、それ以上の点は取らせないという気持ちだった」。スライダーのキレは欠いたが、「悪い球を投げないと(的を)絞られる」と見せ球として有効活用。直球などを織り交ぜながらツーシームを主体に勝負してゴロの山を築いた。

メジャーで培った投球術で手玉に

ここぞの制球力もさすがで、七回2死一塁では外角低めギリギリを突いて見逃し三振。ヤクルト・中村が思わずがっくりと腰を落とすほどの緻密なコースを突く1球だった。終わってみれば、打たせて取る96球の省エネ投法で被安打5の無失点。状態はよくなくても、メジャーで培った投球術で打者を手玉に取り、先発投手としての役割を十二分に果たした。黒田の真骨頂そのものだった。

開幕戦は延長戦の末に敗れたものの、エースの前田が悪いなりにも7回2失点でまとめた。第2戦は新外国人左腕のクリス・ジョンソンが1安打完封という"準完全試合"で衝撃のデビューを飾った。4戦目以降の先発には昨季10勝を挙げ新人王を獲得した大瀬良大地も控える。

柱となる先発投手陣が足りなかった昨季は前田が登板を回避した合間に交流戦で泥沼の9連敗を喫し、優勝を逃す一因ともなった。畝龍実・投手コーチは「マエケンがダメだったとしても黒田がいてくれる。(大型連敗はせずに)最悪でも3連敗で終わる」と黒田加入の効果を挙げる。計算できる先発投手陣という意味では12球団トップクラスと言ってもいいだろう。

課題くっきり、得点力不足の打線

開幕3連戦では期待の先発投手陣が役目をきっちり果たす一方、課題もくっきりと浮かび上がった。得点力不足の打線だ。開幕からの得点は2、1、2点。2戦目の菊池涼介のソロ、3戦目のヘスス・グスマンの適時二塁打を除けば、ほかの3点は相手の守備の乱れやポテンヒットという「運」も味方につけたもの。わずか3戦で打線の好不調を論じるのは早計だが、12球団で最下位に沈んだオープン戦でも貧打にあえいでいたから深刻に思えてくる。

打線の迫力不足は否めない。昨季37本塁打のブラッド・エルドレッドは3月に右膝を手術して長期離脱。出場69試合で14本塁打を放ったライネル・ロサリオも出遅れて2軍で調整中だ。阪神から復帰した新井貴浩も開幕3戦はベンチスタート。新4番のグスマンは中距離打者という印象で、相手投手からすれば一発の怖さはそれほどなさそうだ。開幕前日に「新井、エルドレッド、ロサリオ、彼らが(オープン戦で)バンバン本塁打を打っていたら、レフトやファーストでバンと出すけれど……」と嘆いた緒方監督。

代わりに期待をかけるのが開幕3戦の先発メンバーに名を連ねた伸び盛りの若手野手だ。

開幕戦の「1番右翼」には3年目の鈴木誠也(20)を抜てきした。自分のスイングが全くできず、犠打も失敗して振るわなかったが、3戦目にルーキーの野間峻祥(22)を起用すると、二塁打を含む2安打を放って猛アピール。鈴木誠の尻に火が付いたのは間違いないだろう。安打は出なかったが、2戦目には3年目の美間優槻(20)を「7番三塁」で先発させた。緒方監督は「(若手野手は)まだまだ力的にはもう少しだが、期待を込めてベンチ入りさせている。1試合1試合成長してくれればチームの大きな力になる」と強調する。

チーム引っ張る「キクマル」コンビ

「侍ジャパン」のメンバーで、攻走守で日本を代表する選手へと成長した2番の菊池、3番の丸佳浩の「キクマル」コンビは今年も不動だ。緒方監督は言う。「打線はキクマル頼み。何とか前(1番)、真ん中(中軸)、後ろ(下位)といい形に組めるように。それがこのチームの課題だから」。もちろん2人にはその自覚は十分あり、菊池は「(丸とともに)引っ張っていけるように頑張る」と話す。

黒田の加入などで24年ぶりの優勝へ陣容は整ってきたが、分厚い戦力があるわけではない。2年連続Aクラス入りしたのも若手の成長があってこそ。若手を育てながら打線の底上げを図れるか。監督が掲げる「機動力野球」をどう実践していくか。緒方監督の采配に注目だ。

(金子英介)

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