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10億台超のスマホに搭載、「Androidの父」が見通した未来

未来を創った男たち(2)

日経テクノロジーオンライン
我々の日常生活からビジネスの在り方まで、劇的に変えてしまったインターネットの本格普及から20年。米国防総省の高等研究計画局(現DARPA)が世界初のパケット通信ネットワークとして運用を開始したインターネットは、現在では世界で約30億人が利用するインフラになった。この普及の裏には、数々の画期的なテクノロジーの開発がある。そこで主導的な役割を果たしたキーパーソンの言葉は、今振り返っても示唆に富み、未来を予見させるものがある。日経電子版創刊5周年企画「『ネット20年』その先へ:未来を創った男たち」の第2回は、現在では世界で出荷される10億台以上のスマートフォン(スマホ)に搭載されているOS(基本ソフト)「Android(アンドロイド)」を生んだ、元・米Google(グーグル)のアンディ・ルービン(Andy Rubin)氏のインタビュー記事を紹介する。日経エレクトロニクスによるこのインタビューは、Android搭載スマホの初号機(台湾HTCが開発した「T-Mobile G1」)が登場する約1年前に行われたが、同氏が明確なビジョンの元に開発を進めており、まさにそれがAndroidの急速な普及を導いたことが読み取れる。
Andy Rubin氏 インタビュー当時は米Google Director of Mobile Platform(写真:栗原克己)

──Androidによって、携帯電話業界にどのような変化を起こしたいと考えていますか。

ルービン ソフトウエア開発のためのオープンで標準的な基盤(プラットフォーム)があれば、携帯電話の業界にさまざまな革新が起こるはずです。電子機器の歴史を見れば、多くの分野で素晴らしい製品が「事実上の標準」となり、他の人たちがそれに合わせて製品やサービスを開発してきたことが分かります。

古くは電話もそうですし、最近ではパソコンも、インターネットもそうでした。WindowsやTCP/IPといった事実上の標準の上で、多くの革新が起こっています。

しかし携帯電話業界は考え方が違っていた。先に皆で標準規格を決め、それに合わせて製品を開発するという順序でした。そこで我々は、インターネットやパソコンの世界の文化を携帯電話業界に持ち込みたいと考えました。

まず現時点でできる最高のものを目指してAndroidを開発し、それを完全に公開して普及させる。実際に使えるソフトウエアを提供することによってオープンな標準を確立するというのが、我々の選んだアプローチです。

現在、Googleの数百人の開発者と、「Open Handset Alliance(OHA)」(Androidの普及促進団体)に参加する企業の数百人の開発者がAndroidに携わっています。はっきりした金額は公開できませんが、とても大きな投資です。Googleにとっては、それだけ重要なプロジェクトなのです。

──Androidが「フリー」で提供されていても、いざ機器メーカーが利用するとライセンス費用が発生する恐れはないのでしょうか。

ルービン Androidとして提供する部分は、Googleが開発したものもOHA参加企業が開発したものも、すべて無償公開します。ソースコードを寄贈する企業には、その特許も寄贈してもらいます。例えば、今回メディア処理向けフレームワークのソースコードを提供した米PacketVideoは、同社の特許を含む部分も無償で公開し、提供することを決断してくれました。それは、これからソースコードを寄贈する他の企業にも倣ってもらいます。

こうしたソフトウエアの無償提供により、インターネット上のサービスを利用できる携帯電話機を増やす。これがGoogleの狙いです。2年前にGoogleが旧Android社(注:Rubin氏が立ち上げた携帯電話機向けOS(基本ソフト)のベンチャー企業)を買収したときから、この狙いに従って一歩一歩開発を進めてきました。

「無償提供する代わりにGoogleの広告を表示させるのでは」という人もいますが、広告を表示するためのエンジンはAndroidには入っていませんよ。Webブラウザーの初期設定のページをGoogleのWebサイトにする必要もありません。

──携帯端末を開発するベンチャー企業の米Dangerの創業者だったあなたは、それ以来一貫して携帯電話機向けソフトウエアの開発に携わってきていますね。どのような夢があなたを突き動かしているのでしょうか。

Andy Rubin氏

ルービン私は米Apple(アップル) 、米General Magic、米WebTVで技術者として働き、その後Dangerを創業しました。この経歴から分かると思いますが、民生機器が大好きなんですよ。ユーザーが何を欲しがっていて、何を不要に思っているかを考え、そうして作った機器を皆に使ってもらう。これが私の喜びです。世界で数十億人が利用する携帯電話機は販売台数が最も多い機器であり、挑戦しがいがあります。

Googleはその理念から、ネットワークに接続できる機器を増やしたいと考えていました。Dangerを退社してAndroid社を設立した私の「自分が作ったモノをもっと多くの人に使ってもらいたい」という夢と、Googleの思いが合致してGoogleが2年前にAndroid社を買収したのです。

もう一つ、私には「インターネット上のサービスと機器の連携を深めるべきだ」という考えが常にあります。ユーザーに与える体験のうち、機器そのものが果たす役割は一部にすぎません。最近では「クラウドコンピューティング」などといわれますが、ネットワーク上のサービスと連携することで、機器の魅力をもっと高めることができるはずです。

私が働いていた会社はすべて、こうしたビジョンを持っていました。Googleはまさにクラウドコンピューティングの代表格ですよね。

──Androidは、Dangerの携帯電話機向けソフトウエアに似ているとの指摘もあります。知的財産権に関する問題はないのでしょうか。

ルービン やはり私の思いが表れるので、端末上のソフトウエアとネットワーク上のサービスの連携を意識しているという点では似た戦略になっているかもしれません。しかし、使っている技術やアーキテクチャがまったく異なります。

例えばDangerはJavaの開発・実行基盤を利用しており、その仮想マシンはJavaのバイトコードをそのまま実行します。一方Androidの仮想マシンでは、独自のバイト・コードに変換することで実行効率を高めたり、ライブラリの共有などによって読み込み時間を短縮したりしました。Androidを利用して携帯電話機を開発したメーカーが、Dangerから特許権の侵害などで訴えられることはないでしょう。

(日経エレクトロニクス取材班)

[日経テクノロジーオンライン2008年10月27日付の記事を基に再構成]

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