丸ごとレビュー 写真も美しく キーボード付き極薄10型タブレット
フリーライター 竹内 亮介

エイスーステックジャパンは2月20日、10.1型液晶ディスプレーを搭載する2in1タブレット「トランスブック T100 Chi」を発売した。タブレット本体で7.2ミリ、同梱される専用キーボードドックを含めても13.2ミリと、10型タブレットとしては非常に薄型でスタイリッシュな外観を採用する。前モデルと比べると液晶ディスプレーの解像度が上がり、より精細な画像を表示できるようになった。
キーボードと合体しても厚さ13.2ミリ
トランスブックシリーズは、タブレット本体と専用キーボードを合体させることにより、普通のノートパソコンのようにも利用できる2in1タイプのタブレットだ。8.9型/10.1型/12.5型と液晶サイズが異なる3モデルの展開となっており、T100 Chiは10.1型液晶を搭載する中級モデルとなる。実勢価格は7万4000円前後だ。
2013年に発売された「トランスブック T100TA」は、インテルの低消費電力型CPU「アトム」を搭載する2in1タブレットの先駆けとして、大きな話題を呼んだ。その後もストレージ容量の増加などでマイナーチェンジが行われたが、T100 Chiではデザインや基本仕様も含め、フルモデルチェンジが施されている。

タブレット本体は、アルミをベースとした質感の高い筐体デザインだ。カラーは深みのあるブラックで、縁取りにシルバーのワンポイントをあしらう。表面はヘアライン加工が施されており、しっとりとして手触りも良い。アトム搭載のタブレットでは、プラスチック筐体で高級感とは縁遠いデザインの製品が多いのだが、T100 Chiはそうしたチープなモデルとは一線を画す。
進化のポイントの一つである薄さは、手に取ってみればすぐにわかる。7.2ミリという薄さは、一つ液晶サイズが小さい7~8型クラスのタブレットに近く、薄い書類ケースにもスッと入る。フレームは特に狭いというタイプではなく、幅は265ミリ、奥行きは174.5ミリと10型液晶タイプとしては平均的なサイズだ。親指を額に引っかけるようにして持っても、タッチパネルが組み込まれた液晶ディスプレー部分に触ってしまうことはない。

専用キーボードは、奥側にある差し込み口をタブレット側と合わせて差し込んで固定する。固定した後は、普通のノートパソコンのようにタブレット部分を動かして、見やすい角度に調整することが可能だ。差し込み口があるので物理的に接続するタイプなのかと思ったが、実際はブルートゥース接続だった。購入時にはペアリング済みの状態なので、あらためてペアリングする必要はない。
タブレットと合体する部分には磁石が組み込まれており、タブレットを差し込み口の近くに寄せると、自動で最適な位置に調整される。物理的な接続だと、無理に差し込むことでコネクタ部分を破損することもあるが、T100 Chiではそういった心配はない。磁石はかなり強く、タブレットだけを持ってぶら下げても、キーボードはまったく外れない。


このキーボードを付けた状態でも13.2ミリと、非常に薄い。前モデルの「トランスブック T100TA」は23.6ミリ(最軽量モデル)なので、約半分だ。12型前後の液晶ディスプレーを搭載する一般的なウルトラブックでも、20ミリ前後が主流である。2in1という薄さを追求しにくい構造でありながらも、ここまで薄く、かばんの中で存在を主張しないモデルはめずらしい。
重さは、T100TAと比べてわずかに増えている。タブレット本体は570グラム(T100TAは550グラム)で、キーボードと合体すると1080グラム(T100TAは1070グラム、最軽量モデル)だ。ただ、このくらいなら携帯性には影響はなく、どちらをバッグに入れて持ち歩いても違いは感じられなかった。

美しいフルHD解像度液晶
液晶ディスプレーの解像度は、1920×1200ドットのフルHDだ。T100TAは1366×768ドットであり、より高解像度な液晶パネルに変わっている。パネルサイズは10.1型なので、フルHD解像度だと文字やアイコンがかなり小さく表示されるのではないかと思ったのだが、デフォルトでは表示が「大きめ」に設定されていた。アイコンやテキストのサイズ感は、T100TAの時とほとんど変わらない。
しかし高解像度パネルなので、デジカメで撮影した写真や動画の表示品質は高い。低解像度のT100TAにデジタルカメラの画像を表示すると、若干だが色味がざらつくような写真もあるのだが、T100 Chiではすみずみまで精細な写真が楽しめる。このパネルサイズだと、やはりフルHD程度がもっとも適した解像度であるように思う。

10型前後のアトム搭載タブレットとしては、インターフェースが充実していることも特徴の一つである。右側面に、マイクロUSB3.0ポートとマイクロHDMI端子を装備しており、外付けHDDや外部の液晶ディスプレーを利用できる。マイクロSDカードスロットも装備するので、ストレージが足りないときはマイクロSDメモリーカードを追加しよう。
多くのアトム搭載タブレットでは、こうしたUSBポートを充電用に流用する。そのため充電中は周辺機器が利用できないのだが、T100 Chiでは左側面にもう一つ、充電兼用のマイクロUSBポートを装備する。このポート経由で充電しながら、もう一つのマイクロUSB3.0ポート経由で周辺機器を利用できるわけで、自宅では普通のノートパソコンのように使いたいユーザーにとっては使い方の幅が広がる。


CPUは「アトム Z3775」(動作周波数は1.46ギガヘルツ)、メモリーは2ギガバイト、ストレージは64ギガバイトのeMMCと、最近のアトム搭載タブレットの中では平均的な仕様だ。ユーザーが日常的に利用するアプリを多数実行し、その性能をスコアにして比較できる「PCMark8」では1210と、これも他社のタブレットと同等。T100TAは、CPUの動作周波数が若干低いが、PCMark8のスコアはほぼ同じ水準である。

発熱の低いCPUなので、ファンレスで静かに利用できるのは、T100TAやほかのアトム搭載タブレットと同じだ。また操作に対する応答性や画面の切り替え速度は良好で、操作はスムーズに行える。
利用範囲が広がる2in1タブレット
アトム搭載タブレットは低価格であり、コスト低減のためにデザインを切り捨てた製品が多かった。国内メーカーはもちろん、コスト意識が高い海外メーカーならなおさらだ。しかしT100 Chiは、トランスブックシリーズの伝統を引き継ぎ、10型タブレットとしては突出して薄く、そして高級感のあるデザインを採用する。
自宅でネットブックを使っていたユーザーなら、そろそろ製品寿命も終わりに近づいているころだろう。2in1のT100 Chiなら、自宅では今までと同じく普通のノートパソコンスタイルで利用できる。そして外出先ではタブレット本体のみを外して持ち歩けば、自宅と同じ作業環境をそのまま持ち歩けるのだ。
低価格で利用範囲の広いホームノートパソコンを探しているのであれば、オススメの一台だ。
1970年栃木県生まれ、茨城大学卒。毎日コミュニケーションズ、日経ホーム出版社、日経BP社などを経てフリーランスライターとして独立。モバイルノートパソコン、情報機器、デジタル家電を中心にIT製品・サービスを幅広く取材し、専門誌などに執筆している。