/

欧州CL、8強が映す各国リーグ実力の盛衰

欧州チャンピオンズリーグ(CL)の8強が出そろった。レアル・マドリード、アトレチコ・マドリード、バルセロナのスペイン勢、バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)、パリ・サンジェルマン(フランス)の5チームは1年前と同じ顔ぶれで、常連の強豪がしっかり勝ち残ったというのが第一印象だ。

チェルシー敗退にびっくり

唯一、びっくりしたのは昨季4強のチェルシー(イングランド)の敗退。カップ戦を戦うのが巧みなモウリーニョ監督が率いているので、まさかと思った。

もしかするとパリSGを甘く見ていたのかもしれない。アウェーでの第1戦を1-1で終え、第2戦は0-0でもいいという条件だった。得意のパターンだったのに、CKから2失点。しかも2-2に追いつかれたのは延長戦の終盤だった。準々決勝への切符をほとんど手にしていたので、まったくチェルシーらしくない。

FWの柱のディエゴコスタは国内リーグではゴールを量産しているが、かつてのドログバのようなスーパーな存在とは言いがたい。やはり欧州CLを勝ち抜くには、スーパーなFWが必要だ。チェルシーはしっかり守ってカウンターで勝負するチームなので、なおさら大舞台で決定力を発揮するストライカーが欠かせない。そこに問題があったような気がする。

資金力のあるパリSGにはイブラヒモビッチ、カバーニの2枚看板だけでなく、パストーレら攻撃陣に強力な面々がそろっている。しかもDFにはチアゴシウバ、ダビドルイスらがいる。くせ者のチェルシーを倒したことで、チームとして一皮むける可能性がある。

フランスリーグにも転換点

パリSGとモナコが8強に進出したことは、フランスリーグにとってもターニングポイントになるかもしれない。リーグ自体が注目され、さらに資金が流れ込む可能性がある。

逆に、マンチェスター・シティーなど3チームがそろって敗退してしまったイングランド・プレミアリーグには暗い影が差す。観客は入っているし、放送権料は天井知らずで伸びているのに、各チームに停滞感がある。

チェルシーにとって、欧州CLの早期敗退はショックだろうが、国内リーグのタイトル争いにはさほど影響しないかもしれない。何といっても、首位チェルシーを追うマンチェスターC、マンチェスターUに迫力がない。マンチェスターUは個人の力に任せた昔のサッカーに戻ってしまったようで、興をそそらない。

欧州CLの成績には各国リーグのレベルが反映される。3チームが勝ち残ったスペインリーグのレベルはやはり高い。

3強がそれぞれ独自のサッカー、独自の文化を築いているのが強みだろう。レアルはレアルであり、バルサはバルサであり、アトレチコはアトレチコ。それぞれが「独立国」という感じで、「これがオレたちの国なんだ」という主張がのぞく。

スペイン、強烈なアイデンティティー

それぞれのアイデンティティーが強烈で、根底にあるものに基づいたサッカーをしているのがいい。国内リーグでも欧州CLでも、相手によって戦い方を変えることはなく、確固たるものを前面に出していき、決して揺るがない。

アトレチコはシメオネ監督の色が濃厚で、格上の相手を食うためのサッカーに徹している。それは国内で打倒レアル、打倒バルサを目指しているからだろう。反骨心が強く、ギブアップしない。何が何でも食らいつき、きわどい勝負を何とかしてしまう。そういうスタイルが染みついている。

レアルには俺たちがナンバーワンなんだという誇りがある。選手が入れ替わってもプライドは保持されている。

アンチェロッティ監督は戦術を植えつけるというより、超一流の選手をうまく調和させて、化学反応を起こさせる。そうやって力を引き出すのがうまい。

個を重んじながらも、組織がしっかりしたサッカーをする。イタリア人なので守備には決まり事が多いが、攻めに関しては、それぞれにいい関係性を持たせて力を引き出している。あれほど我の強い選手たちがそろっていたら仲たがいしそうなものだが、そうならないのは気持ちよくプレーできているからだろう。

バルセロナ、変わらぬメッシのチーム

いつも言うように、いまのバルセロナはメッシのチームになっている。ルイスエンリケ監督の本意ではないはずで、この状態にどこまで我慢するのか。へたをすると、どちらかが出て行くことになりかねない。バイエルンを率いているグアルディオラ元監督がバルセロナを去ったのも、メッシのチームになっていることに嫌気が差したのではないかという気がする。

とにかく、メッシが機嫌よくプレーしているときは勝てる。ネイマールもスアレスも「それでOK」と思っているのかもしれない。だから、自分の色を薄めて、わがままプレーをせず、優等生になっている。

今季のバイエルンは欧州CLに懸けているのではないか。昨季、準決勝でレアルのカウンターの餌食になった。それを踏まえて、グアルディオラ監督はチームを進化させてきた。

選手の動きがものすごく流動的で、パッと見ると、どこがどうなっているのかわからない。アラバがCBにいたと思ったら、セントラルMFにポジションを移し、いつの間にかトップ下にいたりする。たぶん、試合中に監督がいろいろ、いじっているのだろう。でたらめに見えるけれど、もちろんそうではない。

システム、あって無きがごとし

相手がどう対応してきても、どういうふうにでも変化できるようになっているのだと思う。相手がこうきたら、こう変化させるというものがトレーニングで確立されているに違いない。

システムはあって、ないようなもの。グアルディオラ監督にすれば「システムって何? どうでもいいでしょ」という感じなのかもしれない。

流動的に動きつつ、人数を割いて、速いパス回しをしていくのがバイエルンのサッカーだが、そのためにはどう人を配して、どう動けばいいのか。それをもとにポジションが何となく決まる。システムを決めて、そこに人をはめ込んでいるのではない。

攻め倒せばいいと思っているので、DFには人を割かない。相手を押し込んで、もっと前でボールを取ってしまえば、後ろに人はいらないということなのだろう。

本来はSBのラームにCBをやらせたり、アラバをトップ下にしてしまったり、やることがすべて革新的だ。2トップをそろって片側に寄せてしまって、わざと逆サイドを大きく空けておいて、MFが上がっていく道をつくったりもする。

欧州CLを制するために、国内リーグで実験をしている感じがする。シュートという概念もない感じで、最後までパスをつないでいき、相手GKを外してゴールにパスする。何度も言ってきたことだが、これまでの常識をひっくり返してしまっている。

今後のバイエルンの戦いに注目

これまでの欧州CLやワールドカップ(W杯)の歴史を振り返ると、こういう革新的なチームが王者になって、世界のサッカーが次に進むべき道を示してきた。すると今度は、そのサッカーを打ち破るにはどうしたらいいのかというアイデアを出し合う。

そういうことを念頭に置いて、今後のバイエルンの戦いに注目したい。今後の対戦の組み合わせにもよるが、普通に考えたら、バイエルンとレアルが決勝で当たるのではないか。昨季の因縁もあるので、この対戦を決勝で見たい。

(元J1仙台監督)

春割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

関連企業・業界

企業:

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で申し込むログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で申し込むログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で申し込むログイン