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取材要望も募集 朝日新サービス、読者の声生かす

ブロガー 藤代裕之

朝日新聞が昨年立ち上げた「ウィズニュース(withnews)」。多数のニュースメディアが競い合うが、新聞社が主力サイトと別にニュースサイトを作るのは珍しい。「新聞社もまだまだ取り組めることがあると分かった」と運営チームの奥山晶二郎記者は話す。ソーシャルメディア時代のニュースサイト運営のヒントは思わぬところにあった。

キュレーションへの危機感

読者の要望を聞きながら、取材を進める

ウィズニュースは、朝日新聞デジタルや広告などに取り組む朝日新聞社デジタル本部のプロジェクトとして2014年7月にオープンした。新聞読者以外をターゲットに新たなサービスを作ろうと1年以上議論した。

編集部は3人、ビジネス部門が1人、社内の記者の協力も得ながら1日4本程度の記事を配信する。アクセス数は、開設当初の月間32万ページビューから15年2月に月間1300万ページビューに達した。

当初はウェブメディアありきではなく、記者が案内するツアーを催行するといった案も出たが、最終的にはニュースを主体にした取り組みとなった。背景にはスマートニュースなどユーザー数を増やすキュレーションアプリへの警戒感がある。

「ヤフーが伸びた時と同じになるのは嫌だね、という話になった。規模としては小さく、スマートニュース対抗とはいかないが、ウェブニュース運営の知見をためていきたい。あわよくばバケればと考えた」

ニュースメディアは大競争時代に入っている。キュレーションに加えて老舗のITmediaやテッククランチ、このコラムでも取り上げたザ・ページ、弁護士ドットコムニュース、LINEニュースなど、多種多様だ。その中でどう差別化するのか。

ウィズニュースは、朝日新聞デジタルの関連サイトにも紹介されず、知名度はほぼゼロでスタート。朝日新聞デジタルのトップページからのアクセス流入は見込めない。そのため、記事1本ごとにネットで広がっていくことでしかアクセスが伸びない。そこで、ネットを意識しながら記事づくりを行なっている。

書く前にはヤフーで検索して、どのような記事が出ているか確認することもある。「ねとらぼ(ITmediaのニュースサイトの一つ)見てやられた、弁護士ドットコムを見てちくしょう、と言ってます」。

運営チームは小所帯

ツイッターのフォロワーは1800程度と少ないが、記事に反応してくれたツイートをお気に入りにするなど地道な対応を積み重ねる。記事を書き、編集し、見出しもつけて、さらにソーシャルで紹介という試行錯誤の末に気づいたのは、ニュースの波を意識することが重要ということだ。

ニュースの波を意識する

「(ニュースを発信する)タイミングは朝日デジタルをやっていたときも意識しているつもりだったが、急激な盛り上がり方や時間の細かさには気づいていなかった」と奥山記者。

チームのデスクを速報席の隣におき、ヤフーのトピックスや他の媒体、ソーシャルメディアの反応を見ながら、コンテンツを記事化していると、同じテーマで切り口、時間を変えれば、ネットの反応が全く異なることが分かってきた。単に早く出すだけでなく、タイミングと他媒体と異なる切り口が掛け合わさることが重要だ。「いくら速報といっても午前2時や3時に出してもあまり効果はない。人が見ている時間帯に記事を出すことが重要」。

LINEニュースのように、記事に写真をつけるようにしたのも工夫だ。フォトサービスと契約しておりイメージ写真も使う。新聞社の流儀であれば記事に合わせて毎回新しい写真を撮影するところだが、ウィズニュースでは記事によっては過去の写真も利用する。

例えば、JRのダイヤ改正で寝台特急「北斗星」の定期運行終了というニュースに合わせて、1958年の寝台特急の写真や記事を紹介したり、高倉健さんや菅原文太さん、土井たか子さんなどの著名人が亡くなると、過去のインタビューや写真をまとめて人となりが分かるような記事をつくったりする。

新聞社は新しいものをそろえがちだが、過去のコンテンツを生かせることが分かった。「過去記事は、記者が記事を書くときの参考にしかしていなかったが、新聞社のコンテンツは古くても戦えるという手応えはある」。

ネットから紙面に記事が展開する事例も出ている。異色の国産ボードゲーム「枯山水」を紹介する記事は2月にウィズニュースが公開し、2.7万シェアされた。反響を受けて3月に紙面でも記事が紹介され、それが朝日新聞デジタルにアップされると、再びソーシャルメディアで話題となった。

課題は外部との連携

ウィズニュースはその名の通り、単にニュースを作ったり、まとめたりするだけでなく、ユーザーからの取材リクエストを受け付けている。また、CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)が外部に開放できるように設計されている。まだ、運用を始めていないが、NAVERまとめのようにユーザーも記事作りに取り組める仕組みだ。

話題になった「枯山水」のニュース

その理由は「書けば書くほどページビューが伸びるので、書くことに集中してしまった」。また、記事が色々と出ていて「脈略がないサイトになっている」。話題となる記事を書いてもすぐにコピーされることや、記事の人気と媒体の知名度向上が結びつかないことも課題だ。「枯山水」の記事にしても、ウィズニュースだと気づかれていないという。

キュレーションやソーシャルでのアクセスを重視すれば、媒体としての印象が薄れてしまうのは、コンテンツをつくるメディアの共通の課題と言えるだろう。また、単にコンテンツを増やしていくだけではコストが増大したり、ページビュー競争に巻き込まれてしまったりする。ユーザーも取り込むことでプラットフォーム化をどう進めるか、コンテンツを整えてイメージをどう明確にするのか。次の一手をどうするかでサイトのあり方が大きく変わりそうだ。

藤代裕之(ふじしろ・ひろゆき)
ジャーナリスト・ブロガー。1973年徳島県生まれ、立教大学21世紀社会デザイン研究科修了。徳島新聞記者などを経て、ネット企業で新サービス立ち上げや研究開発支援を行う。法政大学社会学部准教授。2004年からブログ「ガ島通信」(http://gatonews.hatenablog.com/)を執筆、日本のアルファブロガーの一人として知られる。

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