2019年7月24日(水)

白鵬、スローな四股が生んだボルト並みの速さ
編集委員 鉄村和之

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2015/3/19 7:00
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横綱白鵬は、どうしてあれほどまでに強いのだろうか。終盤戦を迎えた大相撲春場所(22日まで、大阪・ボディメーカーコロシアム)でも6場所連続、34回目の優勝を目指して突き進んでいる。先場所に大鵬の持つ32回を上回る史上最多の33回目の優勝を果たした大横綱の強さの秘密を調べてみると、「驚異的な立ち合いのスピード」が一因として浮かび上がる。併せて、往年の名横綱である双葉山や大鵬の相撲も分析してみると……。

肩から首のあたりの筋肉が盛り上がっている力士は強い傾向がある

肩から首のあたりの筋肉が盛り上がっている力士は強い傾向がある

腕力は一般人の2.2倍、脚力は1.1倍

「けいこを積んで鍛えると、肩から首のあたりの筋肉が盛り上がってくる。すごく盛り上がっている力士は強くて、それがなくなってくると弱い。まずは、そうした傾向がある」。様々なスポーツを科学的に分析している中京大スポーツ科学部の湯浅景元教授を訪ねると、最初にそんな話しをしてくれた。

思い浮かぶのは、相撲絵と呼ばれる江戸時代に人気力士を描いた浮世絵。力士たちは肩から首にかけての筋肉が隆々と際だって描写されている。昔の絵師たちは、強い力士の特徴を実にうまくとらえている。

湯浅教授は2000年ごろにいくつかの部屋に協力してもらい、実際に力士たちの腕力を調べた。すると、彼らの腕力は一般の人たちの約2.2倍あることが判明した。「かいな力が重要とよくいうが、やはり力士たちの腕力はものすごいということが分かった」という。

一方、脚力については一般の人たちの1.1倍しかなかった。「これでは100キロを軽く超えるような体重を支えるのには十分とはいえない」と説明する。上半身はたくましいが、下半身はもろい。それが一般的な力士の特徴といえそうだ。

しかし相撲を見ていて、白鵬は違うのではないかと感じたという。下半身が強そうで、スピードがある。同様のスピード型の力士として、横綱千代の富士が思い浮かび、白鵬を調べる前に、まずは千代の富士の立ち合いを高速度カメラの映像を使って解析してみた。

鋭い出足で立ち合いを制する白鵬(右)。そのスピードはボルトのスタート直後とほぼ同じ

鋭い出足で立ち合いを制する白鵬(右)。そのスピードはボルトのスタート直後とほぼ同じ

白鵬、圧倒的スピードで立ち合い制す

千代の富士の立ち合いのスピードは秒速3.9メートルだった。これはカール・ルイス(米国)が1991年に陸上100メートルで9秒86の世界新記録を出したときのスタート直後の速度に匹敵するそうだ。千代の富士は幼い頃に卓越した陸上の能力を発揮し、短距離や三段跳びなどでは五輪も狙える逸材だったことはよく知られている。183センチ、127キロと角界では決して大きくない体で、通算1045勝、31回の幕内優勝を積み重ねることができたのは、このスピードが大きな要因になっていたことは間違いない。

次に白鵬を調べてみると、千代の富士をさらに上回る秒速4.0メートルという驚きの数値だった。ウサイン・ボルト(ジャマイカ)のスタート直後のスピードは同4.01メートルといい、それとほぼ同じ速さだ。一般の力士は同2.5~3メートルで、白鵬がいかに鋭い出足で立ち合いを制しているかが分かる。

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