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デジタルと海外で攻勢 パ・リーグが描く成長戦略

プロ野球が27日に開幕する。今季はソフトバンクが日本一連覇を目指して松坂大輔を獲得し、オリックスが大型補強に成功するなどパ・リーグの話題が豊富だ。事業分野に目を向けても、2007年に6球団が共同で設立したパシフィックリーグマーケティング(PLM)がデジタル事業を推し進め、15年度の売り上げは初年度の約9倍となる16.5億円を見込む。アジアを中心とした海外への売り込みも加速。各チームが協力して収益を上げる「リーグビジネス」が軌道に乗り始めたパ・リーグが描く成長戦略とは――。

パ・リーグTVは今季ゲーム機能を追加した=PLM提供

若者の取り込み、喫緊の課題

売り上げの約80%をデジタル部門で稼ぐPLMの主力事業が、12年から試合を有料でライブ配信している「パ・リーグTV」だ。パソコンやスマートフォン(スマホ)など場所を問わず観戦できる利便性があり、昨季の会員数は約5万8千人。新たな野球の楽しみ方として定着してきた。

パ・リーグの調査によると、主なファン層は30~40代。同リーグの昨季観客動員数は実数発表となった05年以降では初めて1千万人を突破したが、少子高齢化による人口減や娯楽の多様化を考えれば、依然として若者の取り込みは喫緊の課題だ。特に野球中継の減少などで野球に触れる時間が短い子供から20代へのアプローチは必須で、市場縮小への危機感ものぞく。村山良雄社長は、若者の興味を引くにはIT(情報技術)の活用が有効だと説く。「SNS(交流サイト)などデジタル分野が新たな価値を生み出している。ライトファンも気軽に(野球に)入り込める。いかにこの分野で効果を上げていくかが大事」

村山社長は「若者の興味を引くにはITの活用が有効」と説く

「パ・リーグTV」では今季さらにコンテンツを充実させた。3試合同時に視聴できる従来の機能に加え、昨季始めたデータ表示を3倍の50種類に増やした。「投手と打者の対戦成績」や「走者やアウトカウント別の打率」だけでなく、「打球方向」や「ストライクの割合」などをリアルタイムで表示する。打率の変遷をグラフで確認できるようにもした。さらに試合と連動したゲーム機能を追加。勝敗や各打席の結果、ヒーローインタビューに登場する選手を予想して遊べる。野球を様々な視点で楽しみたいファンのニーズに応え、今季は6万人まで会員を伸ばしたい考えだ。12日には算数を学びながらプロ野球に興味を持ってもらう狙いで、子供向け知育アプリ(応用ソフト)の配信も開始。多角的にアプローチをかけている。

事業拡大に動くPLMが事業モデルとしているのが米大リーグ機構(MLB)だ。特に映像配信サービス「MLB.TV」やモバイルアプリの運用などデジタルメディア事業を手掛けるMLBアドバンストメディア(MLBAM)は00年の設立以来、右肩上がりで成長を続ける優良企業。今や800億円規模まで売り上げを伸ばしており、日本にとっても見習うべきサービスは多い。

今月中旬、東京都内に開設した「パ・リーグデジタルメディアセンター」はその一例といえるだろう。SNS専門のスタッフを配置した情報発信基地で、映像の編集などもリアルタイムで行う。昨季まで外部企業に委託していた業務を一元化することで効率化し、コンテンツの付加価値を上げる利点もあるという。「MLBを参考に、我々の環境にあった形にアレンジを加えていきたい」と村山社長はいう。

台湾の地下鉄駅構内にはパ・リーグの広告が登場=PLM提供

台湾や韓国などアジアは重点地域

国内のファン掘り起こしと同時に、ここ数年は海外にも熱視線を送る。特に陽岱鋼(日本ハム)人気で認知度が高まっている台湾や李大浩(ソフトバンク)の出身地である韓国といったアジアは重点地域。現地にプロ野球を売り込んで放映権販売や観光客を取り込む狙いだ。昨季、台湾には試合のダイジェスト映像を提供したほか、観光庁の協力を得て約30万人が来場する台北国際旅行博にパ・リーグブースを出展して好評を得た。

今季はさらに日本ハムの全試合を含む160試合以上を現地スポーツ専門チャンネルなどで中継。地下鉄に広告を出したり、現地の言葉(繁体字)を使用した公式フェイスブックを開設したりするなど露出を増やしている。「実際に行って野球に対する熱を感じたし、日本への関心も高かった」と村山社長。台湾からの訪日観光客は昨年約280万人。パ・リーグはそのうちの1%にあたる約2.8万人の来場を目指すと強気だ。

さらにメンドーサ(メキシコ出身、日本ハム)ら中南米の選手が所属しているリーグの特性も考えてメキシコやドミニカ共和国、ベネズエラにもダイジェスト映像や放映権の販売も検討中。「日本のレベルを知ってもらう機会になる。日本で活躍している様子が現地で放送されれば、将来の選手獲得につながるかもしれない」(村山社長)。野球の認知度が低いタイをはじめとした東南アジア諸国連合(ASEAN)の国々にも観光とセットで売り込めないか模索するなど、中長期的な視点で新たなファン開拓を進める。

経営安定させ野球の発展に寄与

各チームの自助努力に加え、なぜパ・リーグがリーグビジネスに熱心なのか。村山社長は「日米で市場規模に差が出ているのはこのビジネスによるところが大きい。各球団の経営が安定していないと野球の発展にも寄与できないから」と強調する。日本野球機構(NPB)は昨秋、日本代表「侍ジャパン」を中核とするNPBエンタープライズを設立。野球振興へ第一歩を踏み出した。村山社長はこの動きをさらに発展させたいと話す。「将来的には12球団一体で様々な事業を展開するのが理想。そのために今、PLMがやれることは実績を積み重ねていくこと」。まずは今後2、3年で地盤を固め、球界の持続的成長を確固たるものにしたい考えだ。

(渡辺岳史)

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