高い空き家率、豊島区が挑む「消滅可能性都市」返上

2015/3/13付
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日経アーキテクチュア

「消滅可能性都市の宣告は衝撃だった。豊島区最大のピンチだ。民間の知恵を借りて、定住可能都市への転換を目指したい」。2015年3月8日、東京都豊島区が主催した「リノベーションスクール@豊島区」の席上で、高野之夫区長はこう話した。

2015年3月8日、「リノベーションスクール@豊島区」(会場:大正大学)のプレゼンテーション会場に登壇した豊島区の高野之夫区長。「消滅可能性から定住可能都市への転換を図る」と語った(写真:日経アーキテクチュア、以下同)

2015年3月8日、「リノベーションスクール@豊島区」(会場:大正大学)のプレゼンテーション会場に登壇した豊島区の高野之夫区長。「消滅可能性から定住可能都市への転換を図る」と語った(写真:日経アーキテクチュア、以下同)

消滅可能性都市とは、民間有識者による政策発信組織、日本創成会議の人口減少問題検討分科会(座長:増田寛也・元総務相)が2014年5月に発表した提言で定義した概念だ。20~39歳の女性に着目し、2010年から2040年までの間に5割以上減少する場合、人口維持が困難と定義した。豊島区は50.8%減。東京23区のなかで唯一、消滅可能性都市に区分された。

すでにその兆候は、空き家率の高さとして表れている。「2013年住宅・土地統計調査(確報集計)」で明らかになった各自治体別の空き家率では、豊島区が18.8%と23区内で最も高い。高野区長はこの点にも触れ、「新築マンションが増え、既存の建物から人が出てしまっているのが一因。空き家の活用ができていない」と説明した。

■遊休不動産を題材に活用提案

豊島区の動きは早かった。アフタヌーンソサエティ(東京都千代田区)の清水義次代表を委員長とする「リノベーションまちづくり検討委員会」を2014年11月に庁内に設置。清水代表は、遊休不動産の再生を地域密着型のまちづくり会社で支える「家守構想」の提唱者だ。同検討委では、空き家活用や地域内での雇用の創出など、地域経営上の課題の複合的な解決を目指し、2015年度早々にも基本構想をまとめる。

その実践の場として、2015年3月6日から8日までの3日間にわたって開催したのが「リノベーションスクール@豊島区」だ。同スクールは2011年に北九州市で開催して以来、静岡県熱海市や鳥取市などの地方都市に展開してきたが、首都圏での開催は今回の豊島区が初めてとなる。スクールの企画や運営はリノベーションスクールの運営を手掛けるリノベリング(東京都千代田区)に委託した。

リノベーションスクールの特徴は、建物オーナーの協力を得た遊休不動産を題材に、受講生が新たな事業提案を組み立て、それを実際の事業化までつなげていることだ。スクールの最終日には、オーナーを招いて事業計画を発表する。

事業計画コースでは1班9人で対象物件や周辺エリアを調査。3日間で具体的な事業提案を作成

事業計画コースでは1班9人で対象物件や周辺エリアを調査。3日間で具体的な事業提案を作成

先行する北九州市では、過去6回の開催を通して、題材となった32件のうち実事業化に至ったものが9件、計画進行中のものが15件となっている(2014年6月時点)。事業化のリスクをオーナーだけではなく、民間のまちづくり会社(家守会社)が分担することで、事業化を推進する枠組みだ。

豊島区のスクールは、リノベーション事業計画コースとセルフリノベーションコースの2コースで構成。事業計画コースの受講生は36人で4班に分かれ、具体の対象物件に対して再生事業計画を提案した。セルフリノベーションコースの受講生11人は、実際にマンションの1室を改修した。受講生の平均年齢は31歳。不動産や建築設計、まちづくりへの従事者をはじめ、商店主、主婦、学生など様々な属性のメンバーが参加した。

最終日の公開発表には約300人が傍聴に集まり、立ち見が出るほどだった。事業計画コースの各班は、閉店したとんかつ店を街のゲストハウスにする案や、銭湯を子育て世代が集まる場に再生する案などを、資金計画まで踏み込んで提示した。受講生自ら、事業を運営する新たな家守会社の設立を宣言するなどの場面もあった。建築実務者にとっても、自ら事業を組み立て、オーナーとともにリスクを負ってリターンを得ることが身近になってきた。

(日経アーキテクチュア 樋口智幸)

[ケンプラッツ 2015年3月13日掲載]

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