2019年4月23日(火)

小手先の技術一掃する「ウルトラ発明」の破壊力
みらいのトビラ(2)

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2015/3/20 7:00
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日経テクノロジーオンライン

 もし、「核融合発電」や「高温超伝導」が実用化したら、技術開発の世界はどうなるのか。現在の巨大なコンピューティングパワーでも扱えない自然界の複雑系の世界とどう向き合うか――。そうした、現在では突拍子もないように見える未来のトレンドは、技術の将来像を見通すうえでは欠かせない要素だ。今後10年超にわたるICT(情報通信技術)やエレクトロニクス業界の長期トレンドを予測したレポート『メガトレンド 2015-2024 ICT・エレクトロニクス編』(日経BP社)の著者である川口盛之助氏と山本一郎氏が、これから拡大する市場や、企業・技術者の在り方を語り合う対談の第2回。メガトレンドを分析する2人の奇才が見通す未来とは…。

――日経エレクトロニクスは2015年2月号で、核融合発電を特集しました。そういう夢の技術系って、どう思いますか。

川口 本当にできたら、ケタが違う。まさに、ちゃぶ台返し。あまりにもケタが違うので、未来を予測しようがないです。

投資家/ブロガー/経済ジャーナリストの山本一郎氏(左)、盛之助 代表取締役社長の川口盛之助氏(右)(写真:加藤康、以下すべて同じ)

投資家/ブロガー/経済ジャーナリストの山本一郎氏(左)、盛之助 代表取締役社長の川口盛之助氏(右)(写真:加藤康、以下すべて同じ)

山本 超ブレークスルーです。

川口 昔から言われている「ウルトラ発明」なので、いつやってくるか分からない。

山本 例えば、投資家として何か技術投資をするとします。ある大学である技術が開発された。それに投資する際には「その技術を何に使うんだ」という話になります。

技術単体で製品化まで漕ぎ着けられることは少ない。そういう場合は、当たり前ですが製品化するためにだいたいほかの技術と組み合わせます。世の中に存在する「ある体系」の技術に基づく製品群を、その大学の新技術で置き換えられるだろうか、という検討をします。

例えば、エンジンの推力を高められる技術が開発されたとしましょう。その技術を何かの制御系に組み込んだときに、ほかの技術によって成立しているギアの部分で変換効率が悪くなる。では、そのギアの構造を工夫して新技術を開発し、エネルギーロスを減らしましょう。こういうような検討をします。「少ないエネルギーでより良いパフォーマンスを引き出すため」という方向で、現在は技術が評価されることが多いわけです。電池しかり、動力しかり。この議論は「エネルギーは有限だ」というコスト意識が前提になっている。でも、核融合が実用化したら、こういう議論は全くいらなくなるわけです。

川口 全部、ガラガラポンです。

山本 エネルギー効率なんかどうでもいい話になる。今、研究者が取り組んでいるほとんどの技術開発は一掃されてしまいます。トランプの大富豪で言えば、「2」を出されて場が流れちゃう。

川口 最近は、「プロバイオティクスで腸内環境を整える」というような話が多いですよね。人間本来の免疫を高めようという流れです。でも、「免疫を高める」ということ自体は、赤ひげ先生が言っていたような昔からある話ですよね。

もちろん、人工的にやろうとなると「鍛えた菌で腸内環境を整える」というような話になってくる。それを開発するプロセスでIT(情報技術)を使ったり、人工知能(AI)を使ったりするのかもしれないけれど、結局は昔からの議論の枠内から出てはいない。結局、やはり複雑系というか、自然界の法則にはかなわない。

山本一郎(やまもと・いちろう)
1996年、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。国際電気(現・日立国際電気)入社後、調査会社、外資系証券会社調査委託などを経て、2000年、IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作を行うイレギュラーズアンドパートナーズ株式会社を設立。ベンチャービジネスの設立や技術系企業の財務・資金調達など技術動向と金融市場、各種統計処理や分析業務に精通。また、対日投資向けコンサルティング、投資ファンドを設立。著書に『ネットビジネスの終わり (Voice select)』(PHP研究所)、『投資情報のカラクリ』(ソフトバンククリエイティブ)など多数。日本随一の時事・経済系ブロガーとしても知られる。2013年都市型高齢化検証プロジェクト『首都圏2030』を立ち上げ、現在東京大学客員研究員も務める

山本一郎(やまもと・いちろう)
1996年、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。国際電気(現・日立国際電気)入社後、調査会社、外資系証券会社調査委託などを経て、2000年、IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作を行うイレギュラーズアンドパートナーズ株式会社を設立。ベンチャービジネスの設立や技術系企業の財務・資金調達など技術動向と金融市場、各種統計処理や分析業務に精通。また、対日投資向けコンサルティング、投資ファンドを設立。著書に『ネットビジネスの終わり (Voice select)』(PHP研究所)、『投資情報のカラクリ』(ソフトバンククリエイティブ)など多数。日本随一の時事・経済系ブロガーとしても知られる。2013年都市型高齢化検証プロジェクト『首都圏2030』を立ち上げ、現在東京大学客員研究員も務める

山本 例えば、「口内環境」ってありますよね。一人ひとりは、固有の口内環境を脈々と持っています。それを後から改善するために薬物を投与したりしても、結局は時間が経過するとかなりの割合で元に戻ります。食べるものだけではなく、一人ひとりの粘膜の形質、つまり凹凸が特定の大きさの細菌が棲みやすいように合致するようになっている。凹みに合った細菌は隠れて、薬物や唾液からの攻撃にさらされても生き残るわけです。

そう考えると「口内環境を根本的に改善するためには、口内の粘膜の構造自体に作用しなければ意味がない」という話になります。じゃあ、粘膜を張り替えるのかと。実際には、口内には多い人で60億グループくらいの細菌の生態系が出来上がっていて、「そのうちの何億グループが善玉で、何億グループが悪玉か」を計算する必要が出てきます。

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