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国内リーグで急増する外国勢、ブラジルに両刃の剣

サッカージャーナリスト 沢田啓明

近年、ブラジル国内でプレーする外国人選手が急増している。国内経済が好調でクラブの財政状況が好転した2000年代後半から増え始め、13年が25人、14年が32人で、今年はさらに増えて過去最多の43人。このうち40人を南米7カ国からの選手で占めており、彼らのほとんどが出身国の現役代表か元代表で、昨年のワールドカップ(W杯)には4人が出場している(チリ代表3人、エクアドル代表1人)。まだ20代前半の若手もいるが、いずれもU-20(20歳以下)代表歴を持ち、将来のA代表入りが見込まれる逸材ぞろいだ。

長く主力で活躍、クラブの顔に

国籍の内訳をみると、アルゼンチンが17人と最も多い。次いでパラグアイが7人、ウルグアイが6人、コロンビアとチリがそれぞれ4人と続き、ペルーとエクアドルが1人ずつ。ちなみに、残る3人の国籍は日本、カメルーン、インド。日本人は川崎Fユース出身のFW東城利哉(22)で、南部の中堅クラブ、アバイに所属する。

ポジション別ではMFが13人、FWが11人、ボランチが8人、SBが4人でCBとGKが各2人。攻撃の組み立てやフィニッシュに絡むポジションの選手が大半を占めている。

同じ試合に出場できる外国人選手の上限は一昨年まで3人だったが、昨年から5人に増えた。この規制緩和が外国人選手のさらなる増加を招き、今年は1部20チームのうち18チームに外国人がいる(2部でも2チームに計4人)。インテルナシオナル、クルゼイロ、パルメイラスは出場枠上限の5人と契約しており、インテルナシオナルは監督もウルグアイ人だ。

ブラジルの名門クラブで長く主力として活躍し、「チームの顔」となっている選手もいる。

元アルゼンチン代表MFダレッサンドロは、アルゼンチン、ドイツ、イングランド、スペインのクラブで活躍した後、08年にインテルナシオナルへ移籍して今年で8年目。左足からの精度の高いキックで攻撃を組み立て、果敢にゴールを狙い、さらにキャプテンとしてチームを統率する。昨年のW杯に出場したチリ代表MFバルディビア(パルメイラス)は、華麗なテクニックを駆使しての創造的なプレーでスタンドを沸かせる。地元メディアとサポーターから「マゴ(魔術師)」のニックネームを奉られ、奔放な言動と合わせて常に注目を集める存在だ。現在、国内最強とされるコリンチャンスのエースストライカーは、ペルー代表ゲレーロ。強さ、高さ、決定力を兼ね備えており、ブラジル国内最高のCFと評価されている。

南米選手と欧州クラブの橋渡し役

「サッカー王国」のブラジルで、宿敵アルゼンチンや中堅国チリやペルーの選手が強豪クラブの看板スターとなるなど、10年前には考えられなかった。

南米各国の有力選手がブラジルリーグを目指す最大の理由は高年俸にある。11年以降、ブラジル経済は減速しており、クラブの財政状態も次第に悪化しているのだが、相変わらず大盤振る舞いを続けるクラブが多く、監督、選手の年俸は南米では依然として最高水準にある。

また、リーグのレベルも南米トップで、ここで目立った活躍をすれば欧州クラブから好条件のオファーが期待できる。こうして欧州へ渡り、選手としてのピークをかの地で過ごした後、すぐに母国へ戻らずブラジルでプレーする選手も増えている。つまり、ブラジルは南米選手が欧州へ行き来する際の橋渡し役を担っている。

一方、ブラジルがこれほど多くの外国選手を求めるのは、前回コラム「FW・MFがいない…嘆くブラジル、選手育成に課題」で述べたように、近年、クラブの下部組織における選手育成が行き詰まっているから。守備の選手はまずまずとして、以前のように優秀なアタッカーを数多く生み出せなくなっているのだ。

この問題の手っ取り早い解決法が南米選手の獲得だった。文化、習慣、言語が似ていて生活とプレースタイルに適応しやすい。個人の能力も高いことから戦力として計算でき、しかも場合によってはブラジル選手より割安に契約できる。特に、ブラジル人の有力選手が外国のクラブへ高額で移籍した場合、その資金の一部を用いて獲得し、急場をしのぐことが多い。ブラジルのクラブにとって、費用対効果の高い南米選手は非常に便利な存在となっている。

ただし、このような状況はブラジルサッカーにとって両刃の剣だろう。南米各国の優秀な選手が増えることでリーグのレベルが上がり、南米クラブチームの王者決定戦「コパ・リベルタドーレス」では他の南米クラブに対して優位に立てる。その一方で、人材不足のMFやFWを海外勢に頼っていると、ブラジル人選手の出場機会が減り、さらに層が薄くなる。このことは将来、ブラジルサッカー全体にとって由々しき事態を招くことになりかねない。

下部組織で地道に選手育成欠かせず

昨年後半、サントスやフルミネンセ、フラメンゴなどで選手の給料が3カ月以上遅配となった。一部の選手が労働裁判所に訴えてフリーエージェントの立場を勝ち取り、今年初め、別のクラブに違約金なしで移籍している。ビッグクラブでも財政状況は悪化しており、いつまでも選手に高給を払い続けられる状況ではなくなっている。遅かれ早かれ、南米選手獲得の動きにブレーキがかかる時が来るに違いない。

各クラブは安易に南米選手を求めるのではなく、本来の姿に立ち返って、下部組織で地道に選手を育てなければならない。またそうでなければ、ブラジルサッカーが再び世界の頂点に躍り出るのは難しいだろう。

ブラジルでプレーする南米選手数の今後の推移は、この国のサッカーの状況を示す一つの指針として興味深いデータになる。

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