2019年3月26日(火)

自分仕様の人工臓器にこそ「人類史上最高の価値」
みらいのトビラ(1)

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2015/3/13 7:00
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日経テクノロジーオンライン

 情報通信技術(ICT)やエレクトロニクス技術の分野は、大きな変革の時代にある。「IoT」(モノのインターネット)の波をはじめ、人体や生命科学を扱うライフサイエンスとの融合領域に新しいビジネスの芽が生まれ、「メーカーズ」と呼ばれるものづくりベンチャー企業群が大手企業を出し抜いてヒット商品を生み出す。一方で、今は突拍子もないように見える未来のトレンドも、技術の将来像を見通すうえで欠かせない要素である。もし、「核融合発電」や「高温超伝導」といった夢の技術が実用化したら…。これまでの常識は、これからの10年に通用しないと考えるべきだろう。本連載では、今後10年にわたるICTやエレクトロニクス業界の長期トレンドを予測したレポート『メガトレンド2015-2024 ICT・エレクトロニクス編』(日経BP社)の著者の2人、株式会社盛之助社長でコンサルタントの川口盛之助氏と、投資家/ブロガー/経済ジャーナリストの山本一郎氏に、これから拡大する市場や、技術開発の本質などを語り合ってもらう。

――今回の対談では、川口さんと山本さんがレポートの中で描いた産業や社会の未来図を前提に、エレクトロニクス関連の大手企業や、いわゆる「メーカーズ」のスタートアップ企業などの今後を占っていただきたいと思っています。

山本 ちなみに「メーカーズ」って、どういう概念で捉えているんでしょうか。どちらかというとスタートアップ企業の中でもハードウエア領域、つまり、今までスタートアップと言えばアプリ(アプリケーション・ソフトウエア)がメーンだったけれども、道具の方に寄ってきたというイメージでしょうか。

でも、メーカーズと呼ばれている人たちと話していると、彼らの中では「メーカーとは何か」といった定義面を落とし込んでいなかったりします。私たちがイメージしている単純な製造業としての「メーカー」とは、彼らのニュアンスがだいぶ違うんですよ。

――どういう風に違うんでしょうか。

山本 古い人間からすると、従来型のメーカーが(工場を持たない)ファブレス企業と、(モノを生産することに特化した)製造受託企業に分解されて、その中で新しい生態系が生まれているイメージじゃないですか。でも、メーカーズの彼らはモノをつくるというよりも「プロトタイピング」にフォーカスしていて、モノに落とし込むことよりも、それが実現するファンクション(機能)に特化している気がします。

山本一郎氏(左)と川口盛之助氏(右)(写真:加藤康、以下すべて同じ)

山本一郎氏(左)と川口盛之助氏(右)(写真:加藤康、以下すべて同じ)

川口 モノをつくるための「ツール」や「ライブラリ」みたいなものがサクサクと存在していて、これまでソフトウエア志向のバーチャルな概念で開発することが常識だった人たちが、リアルなモノをつくっていいというイメージになっている。

モノをつくる際にこれまであったしがらみや常識は全然関係なくなって、「ソフトウエアをつくるセンスを持った人たちが、たまたまハードウエアをつくっている」というノリです。これは従来の常識に捉われている集団から見ると、すごく違和感があります。

――メーカーズの人たちはプロシューマー的なんでしょうか。

山本 世の中的には、どちらかといえばそうですね。

川口 その方向の取り組みは、民に広くというか、社会全体にはインパクトが大きい。

――プロシューマー的な人たちが出てきて、量産はEMS(電子機器の受託生産サービス)企業に任せ、変わったモノをプロトタイピングしていると…。

川口 盛之助(かわぐち・もりのすけ)
1984年、慶應義塾大工学部卒、イリノイ大学修士課程修了(化学専攻)。 技術とイノベーションの育成に関するエキスパート。世界的な戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトル・ジャパンにおいて、アソシエート・ディレクターを務めたのち、株式会社盛之助を設立。国内のみならずアジア各国の政府機関からの招聘を受け、研究開発戦略や商品開発戦略などのコンサルティングを行う。その代表的著作『オタクで女の子な国のモノづくり』(講談社BIZ)は、技術と経営を結ぶ良書に与えられる「日経BizTech図書賞」を受賞し、英語、韓国語、中国語、タイ語にも翻訳される。心をつかむレクチャーの達人としても広く知られる

川口 盛之助(かわぐち・もりのすけ)
1984年、慶應義塾大工学部卒、イリノイ大学修士課程修了(化学専攻)。 技術とイノベーションの育成に関するエキスパート。世界的な戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトル・ジャパンにおいて、アソシエート・ディレクターを務めたのち、株式会社盛之助を設立。国内のみならずアジア各国の政府機関からの招聘を受け、研究開発戦略や商品開発戦略などのコンサルティングを行う。その代表的著作『オタクで女の子な国のモノづくり』(講談社BIZ)は、技術と経営を結ぶ良書に与えられる「日経BizTech図書賞」を受賞し、英語、韓国語、中国語、タイ語にも翻訳される。心をつかむレクチャーの達人としても広く知られる

山本 メーカーズはそれこそ何千個、何千台という製造業の常識からすると小さな量産オーダーで勝負しようとしているので、どうしても単価が高くなってしまう。「自分たちで大きな需要をつくって、社会を変えていく」という印象は、今のところ薄いですね。多品種少量の限界点までいくと、そうなるのかもしれません。夢として、もう少しドカンという部分があればいいのですけれど。

一方で、画期的な最先端技術でモノをつくろうというスタートアップ企業の話もいろいろあります。コペルニクス的転換で半導体チップをつくる新しい製造手法のような。今の段階ではよく分からないのだけれど、メーカーズのブームという背景もあって多くの資金が集まっている。少しバブルの危険な雰囲気も漂っていて、本当に大丈夫かと思うところもちょっとあります。

川口 ウルトラ微細加工で人工血管や人工臓器をつくるような話もあります。そういう分野でも、メーカーズと同じようにボトムアップによる積み上げ方式でモノがつくれる。実は昔ながらのオーソドックスな開発なのだけれども、「カスタムで多様な世界」という点で共通しているので、ものづくりベンチャーの話が二つの方向性で混在しているということでしょうね。

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