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音楽の聴き方、欧米で維新 Spotifyの破壊力

欧米でインターネットを通じた音楽配信の方法として、米アップルの「iTunes」のように楽曲ごとに購入してダウンロードする方式に代わり、「ストリーミング(逐次再生)」と呼ばれる聴き放題方式が台頭している。代表格が英スポティファイだ。日本でも、その名前に聞き覚えがあると感じる読者は多いはずだ。1月下旬にソニーグループが自前の音楽配信サービスを廃止する代わりに新サービスとして採用すると発表したのが、スポティファイだ。

新しい音楽の聴き方とはどんなものなのか。日本未上陸のスポティファイの魅力を探った。

ラジオのように一方的に曲を流すわけではない

欧米の若者に圧倒的な人気を誇る定額聴き放題サービス「スポティファイ」

デジタル化の影響で、ニューヨーク市内では店頭でCDを販売する光景はほとんど見かけなくなり、1980~90年代と洋楽ロック漬けの毎日を送っていた筆者も音楽ソフトを買う機会は減った。ところがスポティファイを使うようになってから、また音楽を頻繁に聴くようになった。地下鉄のなかや地元のカフェでも、スポティファイで音楽を聴く人たちの姿を頻繁に見かける。

スポティファイの利用者は現在、世界で6000万人。2008年にスウェーデンでサービスを開始し、まずは欧州で人気に火が付いた。最近では米国やアジアでも利用者が急拡大している。

最大の魅力は、月額9.99ドル(約1200円)で音楽が聴き放題になる点だ。スポティファイは無料でも使用可能だが、「プレミアム(有料)会員」になると数曲ごとに入る広告がなくなり、端末にコンテンツをダウンロードして、ネットに接続できない環境でも使えるようになる。「1000円程度で煩わしい広告から解放され、地下鉄や飛行機のなかでも聴けるようになるなら安い」と考える利用者は多いようで、実に総利用者の4分の1(1500万人)が有料会員となっている。

ストリーミング方式と聞くと、ラジオのように一方的に曲を流すもので、自分が聴きたい曲を指定することはできないと想像する人もいるだろう。だが、スポティファイの場合は違う。聴きたい曲を自分で検索してすぐに再生することができるのだ。また、1度再生した曲を自分のプレイリストに加えておけば、2度目からは好きな時に再生可能になる。

ストリーミング方式の音楽配信には、スポティファイのように聴きたい曲を指定できる「オンデマンド」型のほかに、「ラジオ型」と呼ばれるサービス形態がある。代表例が、米国発のパンドラ(企業名はパンドラ・メディア)だ。パンドラの仕組みは、利用者が最初に好きなミュージシャンを選び、その後はパンドラ側がその情報を元に「好きそうな音楽」を推測して自動的に流すというものだ。

世界の主な「聴き放題」サービス
サービス名タイプ配信楽曲数月会費
英スポティファイオンデマンド型2000万曲以上9.99ドル
ビーツ・ミュージック(米)オンデマンド型2000万曲以上9.99ドル
ディーザ-(仏)オンデマンド型約3500万曲9.99ドル
パンドラ(米)ラジオ型約150万曲4.99ドル
スポティファイの創業者で最高経営責任者(CEO)のダニエル・エク氏

例えば、1970年代の英国のパンクバンドを選んでみると、基本的には同時代の似たようなバンドの曲が流れる。しかし、何度も繰り返し聴いていると、最近の米国のパンクバンドの音楽が交じったり、70年代の異なったジャンルの音楽が流れたりすることもある。つまり、趣味に合わない曲が交じる可能性があるのだ。音楽の好みが先鋭化している若者層がパンドラよりも自己選択権の強いスポティファイを好むのはこうした理由からだが、ラジオ型には「ラジオ」なりの新たな発見の楽しみもある。忘れていた昔のお気に入りの曲を思い出させてくれたり、知らなかった曲と出合えたりするからだ。

スポティファイに話を戻そう。スポティファイが若者層に支持されるもう一つの理由が、ソーシャル機能が優れているという点だ。自分が作ったプレイリストを友人と共有したり、最近友人の間ではやっている音楽を検索したりすることができるのだ。また、お気に入りのミュージシャンや音楽評論家をフォローすることも可能で、「あこがれのミュージシャンのお気に入りの曲」などを簡単に知ることができる。

また、特に自分で聴きたい曲がないときにも便利なツールが準備されている。「パーティー」「エクササイズ」「ロマンス」などシーンや気分別に複数のチャンネルが用意されていて、クリックするだけでその雰囲気にあった音楽を聴くことができる。また友人が聞いた曲や自分の利用履歴などから好きそうな曲をお薦めしてくる「ディスカバー(発見)機能」も人気がある。

創業地のスウェーデンでは業界活性化の起爆剤に

聴き放題の音楽サービスには、スポティファイ以外に、昨年5月に米アップルが買収を発表したビーツ・ミュージックや仏ディーザーなどがある。現時点では、スポティファイが他社よりも頭1つ分抜け出した感がある。だが、人気ラッパーで企業家としても活躍するジェイ・Zが1月末に北欧やドイツで人気のある音楽配信サービス「ウインプ」を約5600万ドルで買収して注目を集めるなど、業界全体としては群雄割拠の様相を呈している。

スポティファイ発祥の地であるスウェーデンでは音楽配信サービスの普及が起爆剤となり、低迷が続いていた音楽市場が2012年以降、再び成長し始めているという。国際レコード産業連盟(IFPI)によると、スウェーデンではネット人口の約半数がなんらかの形の音楽配信サービスを使っている。月額の会費収入がミュージシャンや音楽レーベルに還元され、新たな創作活動につながるという好サイクルができはじめている。

スポティファイは日本でサービスを開始していないため、ソニーの音楽配信サービス「ミュージックアンリミテッド」の利用者はサービス中止に遭うことになる。だが、スポティファイが日本上陸を模索しているという報道は相次いでいる。2015年が「ストリーミング配信」元年となるか。期待は高まっている。

(ニューヨーク=清水石珠実)

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