2018年11月22日(木)

将棋界の一番長い日 16時間超す死闘、4者決定戦に

2015/3/2 16:50
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 「将棋界の一番長い日」といわれる、第73期A級順位戦の最終9回戦(全5局)が、東京・渋谷の将棋会館で1日、一斉に指された。午前10時に始まった対局は、最も長いもので翌2日の午前2時を過ぎ、16時間を超す死闘となった。

将棋の順位戦は毎年3月まで1年間をかけて戦われるリーグ戦で、下からC級2組→C級1組→B級2組→B級1組→A級と5つのリーグがある。10人のトップ棋士たちがしのぎを削るA級。そのさらに上、頂点に立つのが羽生善治名人だ。

A級順位戦対戦表(8回戦終了まで)
順位氏名成績1回戦2回戦3回戦4回戦5回戦6回戦7回戦8回戦9回戦
1森内俊之
九段
3勝
5敗

渡辺

阿久津

深浦

広瀬

久保

三浦

佐藤

郷田

行方
2行方尚史
八段
6勝
2敗

阿久津

広瀬

三浦

久保

郷田

佐藤

渡辺

深浦

森内
3渡辺明
二冠
5勝
3敗

森内

深浦

広瀬

郷田

佐藤

阿久津

行方

三浦

久保
4佐藤康光
九段
4勝
4敗

久保

郷田

阿久津

三浦

渡辺

行方

森内

広瀬

深浦
5深浦康市
九段
4勝
4敗

広瀬

渡辺

森内

阿久津

三浦

久保

郷田

行方

佐藤
6三浦弘行
九段
3勝
5敗

郷田

久保

行方

佐藤

深浦

森内

阿久津

渡辺

広瀬
7久保利明
九段
6勝
2敗

佐藤

三浦

郷田

行方

森内

深浦

広瀬

阿久津

渡辺
8郷田真隆
九段
4勝
4敗

三浦

佐藤

久保

渡辺

行方

広瀬

深浦

森内

阿久津
9広瀬章人
八段
5勝
3敗

深浦

行方

渡辺

森内

阿久津

郷田

久保

佐藤

三浦
10阿久津主税
八段
0勝
8敗

行方

森内

佐藤

深浦

広瀬

渡辺

三浦

久保

郷田

※挑戦1人、降級2人、持ち時間各6時間

渡辺(左)―久保(右)戦の感想戦の様子

渡辺(左)―久保(右)戦の感想戦の様子

8回戦まで、A級のリーグ成績は表の通り。この日を迎えて羽生名人へ挑戦の可能性があるのは、6勝2敗の行方尚史八段と久保利明九段、5勝3敗の渡辺明二冠、広瀬章人八段の4人。B級1組への降級枠2人のうち、ここまで全敗の阿久津主税八段の降級が既に決まっている。3勝5敗の森内俊之九段、三浦弘行九段、4勝4敗の郷田真隆九段の3人の中からもう1人の降級者が出る。

午後9時39分。最初に終わったのは渡辺―久保戦だった。渡辺二冠が69手の短手数で快勝。これで、渡辺・久保の両者とも6勝3敗で並んだ。挑戦権の行方は森内―行方戦次第に。行方勝ちなら行方挑戦。森内勝ちなら、6勝3敗で並ぶ3、4人による後日のプレーオフとなる。

森内(右)―行方(左)戦の感想戦。勝てば名人挑戦が決まっていた行方八段は悔しさがにじみ出ていた

森内(右)―行方(左)戦の感想戦。勝てば名人挑戦が決まっていた行方八段は悔しさがにじみ出ていた

続いて終わったのが、注目の森内―行方戦。翌2日午前0時33分、95手までで森内九段が勝った。前名人の森内九段は、名人陥落後即降級の危機を脱し、自力で残留を決めた。勝っていれば初の名人挑戦が決まっていた行方八段は、感想戦で表情や言葉の端々に悔しさをにじませていた。

この時点で、挑戦者はリーグ戦では決まらず、プレーオフで争われることになった。行方八段、渡辺二冠、久保九段のプレーオフ参加が決定。広瀬八段が三浦九段に勝てば、このプレーオフに参加できる。

郷田(右)―阿久津(左)戦の感想戦の様子

郷田(右)―阿久津(左)戦の感想戦の様子

森内九段が残留を決め、もう1枠の降級者は三浦九段と郷田九段のどちらかとなった。森内―行方戦の終局から16分後の午前0時49分、郷田―阿久津戦が決着した。勝ったのは郷田九段。郷田九段はこれで5勝4敗の勝ち越しとなり、A級残留を勝ち取った。同時に、三浦九段の降級が決まった。敗れた阿久津八段は0勝9敗。初参加のA級は苦い結果となってしまった。

自らの降級を知らない三浦九段は必死に指し続けるが、ついに力尽きた。午前1時25分、三浦九段が投了。157手という長手数の熱戦を制した広瀬八段は6勝3敗となり、4人でのプレーオフが決まった。

三浦(右)―広瀬(左)戦の感想戦の様子

三浦(右)―広瀬(左)戦の感想戦の様子

午前2時過ぎ、感想戦を終えた行方八段は4人でのプレーオフになったことを聞かれ、「いやー……」と口にして絶句。「……あきれました。しばらく調整します」と言葉を絞り出した。勝っていれば初の名人挑戦が決まっていた。「それだけ今日に懸けていたということですか」と問われると、「懸けない人はいないじゃないですか」と言い残して将棋会館を後にした。

最後まで残ったのが、佐藤康光九段対深浦康市九段戦。2人とも挑戦にも降級にも絡まない一局だ。それでも、2人は必死に指し続ける。ここでの1勝が来期の順位を左右する。その順位の差が、来期以降の名人挑戦や降級に関わるかもしれないのだ。

佐藤(左)―深浦(右)戦の感想戦の様子

佐藤(左)―深浦(右)戦の感想戦の様子

そして午前2時9分、最後の1局が終わった。233手。すさまじい長手数の死闘を深浦九段が制した。「将棋界の一番長い日」が、ついに幕を下ろした。

午前2時半過ぎ、感想戦を終えた広瀬八段に話を聞いた。「今日は他力だったので、どうなるかわからなかったですが。(4者プレーオフ進出は)せっかくのチャンスなので生かせるように頑張りたいと思います。まだまだ道のりは険しいですが」。この日の将棋には、自身の名人挑戦と同時に、兄弟子である森内九段の残留もかかっていた(広瀬―三浦戦で広瀬勝ちなら森内―行方戦の結果に関わらず森内九段の残留が確定)。「兄弟子を落とすわけにはいかないな」と思ってこの日に臨んだという。このあたりはリーグ戦の妙である。

A級順位戦対戦表(9回戦終了まで)
順位氏名成績1回戦2回戦3回戦4回戦5回戦6回戦7回戦8回戦9回戦
1森内俊之
九段
4勝
5敗

渡辺

阿久津

深浦

広瀬

久保

三浦

佐藤

郷田

行方
2行方尚史
八段
6勝
3敗

阿久津

広瀬

三浦

久保

郷田

佐藤

渡辺

深浦

森内
→プレー
オフ
3渡辺明
二冠
6勝
3敗

森内

深浦

広瀬

郷田

佐藤

阿久津

行方

三浦

久保
→プレー
オフ
4佐藤康光
九段
4勝
5敗

久保

郷田

阿久津

三浦

渡辺

行方

森内

広瀬

深浦
5深浦康市
九段
5勝
4敗

広瀬

渡辺

森内

阿久津

三浦

久保

郷田

行方

佐藤
6三浦弘行
九段
3勝
6敗

郷田

久保

行方

佐藤

深浦

森内

阿久津

渡辺

広瀬
→降級
7久保利明
九段
6勝
3敗

佐藤

三浦

郷田

行方

森内

深浦

広瀬

阿久津

渡辺
→プレー
オフ
8郷田真隆
九段
5勝
4敗

三浦

佐藤

久保

渡辺

行方

広瀬

深浦

森内

阿久津
9広瀬章人
八段
6勝
3敗

深浦

行方

渡辺

森内

阿久津

郷田

久保

佐藤

三浦
→プレー
オフ
10阿久津主税
八段
0勝
9敗

行方

森内

佐藤

深浦

広瀬

渡辺

三浦

久保

郷田
→降級

※挑戦1人、降級2人、持ち時間各6時間

羽生名人への挑戦権は、4人によるパラマス式トーナメント形式のプレーオフで争われることになった。初戦となる久保九段―広瀬八段戦が5日に、その勝者と渡辺二冠が10日に、その勝者と行方八段が16日に戦う。

(文化部 柏崎海一郎)

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