/

ピッチはカオス、道しるべを 柏監督・吉田達磨(上)

広大なピッチにボールが1個。それぞれの選手はどこにでも動けるし、ボールはどうとでも動かせる。人とボールの動きの可能性は無限にある。

「半歩先を予測してほしい」と選手に求める

「サッカーのピッチ上はかなり入り組んでいる。言ってみればカオスなんです」。柏レイソルの監督に就任した吉田達磨(40)はそんな表現をする。「自分たちが整理された状態でないと、取り返しのつかないことになる」。言われてみれば当然だが、カオスを認識していない指導者、選手が多いような気がする。

11人が一つの生き物のように動く

いろんなことが可能であり、自由がある。だから、かえってやっかいなのだろう。吉田はサッカーの構造をそうとらえ直したところから指導を始めている。

「様々な可能性の中から、いろんなものをそぎ落としていく必要がある」。そのために選手に指標=道しるべを提示する。こういうときは、どこに立つといいか、どこを見たらいいか、誰の何を見るか、相手の何を見るか、誰に何を伝えたほうがいいか。おのずと、しなくてもいいこと、見なくてもいいものも決まる。「道しるべがあれば、プレーしやすくなるんだと選手に実感してほしい」

指標はもちろん約束事ではない。しなくてはならないことではなく、こうすると楽になるよという意味合いだ。「こういうときはこういうことが起こりやすい。だったら、こうしておいたほうがいいよねというのが決まってくる」。それが指標ということになる。

「11人が意思を持ってつながり、一つの生き物のように動くサッカー」。吉田は2003年に柏のアカデミー(育成組織)の指導者となってから、そういうものを目指してきた。

「一歩ではなく半歩先の予測を」

そのサッカーは準備と予測の連続で成り立つ。「一歩ではなく半歩先を予測してほしい。一歩だと予想になってしまうから、半歩でいい」。予測は当然、指標と対になっている。「これを知っておくと簡単になるということがたくさんある。それを選手に伝えたい」

いまの状態だと、受け手のどちらの足にパスを送ったらいいか。それは相手の位置によって決まる。ついでに言うと、どちらにパスを付けるかが、受け手の次の動きを促すサインにもなる。当然、いまどう動くべきかはボール保持者の特性によっても変わる。こっちに走り出しても、あの状態ではあいつはそこには蹴れない。この手のほんの小さなことを指標として頭に入れることで、すべてがスムーズに運ぶ。

いまの柏の選手たちは頭を回転させ続ける。MF栗沢僚一は「ここに動くと、どこにスペースが空くとか、ここに立てばボールを持っていなくても相手に脅威を与えるとか、自分を全体の中の一人として考えられるようになった。全員が考え続けて、線でつながってるような感じ」と話す。

一人ひとり、組織によって生かされる

吉田が示す指標は選手の特性を念頭に置いたものだから、個が組織に縛られない。指標を持つことで、きわめて機能的な組織ができあがる。しかも「一人ひとりが組織によって生かされる」ようにできている。結果的に人とボールの動きが円滑になる。

(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊3月2日掲載〕

初割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

関連キーワード

関連企業・業界

企業:

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン