2019年8月24日(土)

最高の酒に杜氏はいらない 「獺祭」支えるITの技
匠を捨て、匠の技を生かす(上)

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2015/3/24 7:00
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写真3 旭酒造の桜井博志社長

写真3 旭酒造の桜井博志社長

「我々は過疎の集落で酒造りを営む山口県内で4番手の酒蔵だった。地元にとどまり他の酒蔵と同じことをやっていてはジリ貧になる。大吟醸酒に特化し広い市場を求めて東京や海外に出て行くのは必然だった」と旭酒造の桜井博志社長は話す(写真3)。

だが、どうやって国内外の多くの人を魅了する日本酒を造り得たのか。「実は経営危機の時に杜氏(とうじ)に逃げられてね。社員だけで酒造りに挑むしかなかった」と桜井社長は打ち明ける。

酒造りは従来、酒蔵とは独立した杜氏の指揮の下で行われる。旭酒造も同様だったが、1999年に新規事業に失敗、杜氏に去られた。それ以前から、酒造りのノウハウが杜氏の頭の中にブラックボックス化されていることに疑問を抱いていた桜井社長は、ここで大胆な改革に踏み切る。

象徴が検査室だ。酒造りの全行程で詳細なデータを取り、検査室のパソコンに蓄積して分析することで、酒造りの最適解を見つけ出してきた。日本酒は、米を麹で糖化させる工程などを経て「もろみ」にして、それを酵母で発酵させて造る。

例えばもろみの発酵は、山なりの理想の発酵曲線(「BMD曲線」と呼び発酵日数と糖度などの関係を示す)に、可能な限り近づける必要がある。そのための微妙な温度管理や水の追加タイミングなどについてデータを活用して知見を積み上げた。

当初はデータ量も少なく、分かることは限られていたが、一番安価な獺祭は初年度から、杜氏の指揮下で造っていたときよりも品質が良くなったという。「ある意味、杜氏は手抜きの天才。我々は理屈で詰めていくしか道がなかったから、どうしたら良い酒が造れるかを徹底的に追求した」と桜井社長は話す。

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