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ホンダF1復帰、アロンソらが語った期待と愛情

編集委員 鉄村和之

「ホンダファミリーの一員になれてうれしく思っている」。7年ぶりに自動車レースのF1に復帰するホンダが10日に開いた記者会見で、フェルナンド・アロンソとジェンソン・バトンの両ドライバーが口にしたのは、ホンダへの期待と愛情だった。これまでのテスト走行では22日にアロンソがクラッシュするなど様々なトラブルが浮かび上がり、3月13日に開幕する今季初戦オーストラリアGPへの影響も懸念される。しかし、そんな不安をものともせず、両ドライバーが「ワクワクする」といった根拠はどこにあるのか。

88年から92年にかけF1を席巻

「マクラーレンとホンダというのは本当にエキサイティングなパートナーシップだと思う」。記者会見のあいさつで、バトンは笑顔でそう話した。アロンソも「ホンダの一員になることに以前から魅力を感じていた。1980年代、ホンダはマクラーレンと素晴らしいパートナーシップを組んでいた。当時、私は子どもだったが、その勝利を数多く見届けたものだ」。

マクラーレン・ホンダは88年から92年にかけて当時のF1界を席巻。特にアイルトン・セナとアラン・プロストという希代のドライバーを擁した88年は、16戦して15勝という圧倒的な成績を残した。まばゆいばかりの輝きを放っていたマクラーレン・ホンダの黄金期。子どもの頃から憧れていたそのシートに座れるということで、2人はその喜びを抑えられないようだ(バトンは08年までの6年間ホンダエンジンを搭載した車でF1に参戦していたが、05年まではBARで、06年からはBARを買収したホンダの単独チームだった)。

ホンダというチームに魅力を感じている理由はまだある。それは、真面目で勤勉な日本の文化だ。「日本の文化、伝統がとても好きだ。ホンダのさくらの研究所(栃木県さくら市)を訪れたとき、才能あふれる人たちが大勢働いていた。最近のF1は様々なテクノロジーの要素が絡み合っている。ホンダの技術と日本の文化を融合したら素晴らしいものができるのではないか」。アロンソはそういって目を細めた。

再び英国と日本の文化の融合

かつて、マクラーレンとホンダは強固な信頼関係を築き、F1界で一時代を築いてきた。20年以上の時を経て、再び英国と日本の文化の融合を図らなければならない。真面目で勤勉に働くホンダのスタッフと、マクラーレンの英国のスタッフの関係は今のところ良好で、一体となって開幕戦のオーストラリアGPに向けて一つの方向を向いている。ドライバーの視線から見ても、そう感じられるから手応えを感じているのだろう。

「ホンダのメカニック、エンジニアの人たちは非常にオープンに心を開いて意見を言ってくれる。気に入らないことがあれば、それも必ず話してくれる。これは、前進のための非常に重要な要素だ」。バトンもホンダのスタッフの素晴らしさを、こう説明した。

芳しくないテスト走行の結果

もちろん、これまでのテスト走行の結果は芳しいものとはいえない。1日から4日までスペインのヘレスデラフロンテラで行われた今季最初のテストで、ホンダは様々なトラブルが発生して満足に車を走らせられなかった。4日間合計の周回回数はわずか79周。昨年のF1で19戦して16勝と圧倒的な強さを誇り、コンストラクターズ(製造者部門)のタイトルを獲得したメルセデスAMGは516周、2番手のザウバーは382周もしたのにである。トータルで100周もできなかったのはホンダだけだった。

ベストラップもホンダは最終日にバトンがマークした1分27秒660で、フェラーリのキミ・ライコネンがたたき出した1分20秒841に比べると、7秒近くも遅かった。

19日からモントメロで行われている2回目の走行テストでは、最終日の22日にアロンソが第3コーナーで壁にぶつかってクラッシュ。幸い大きなケガではなかったようだが、テストを午前中で切り上げざるをえなかった。バトンがハンドルを握った初日、3日目もトラブルが発生してテストを中断。満足に走れたのは2日目だけで、情報収集という点では大きく遅れている。もっとも、2日目にアロンソがマークした1分25秒961のベストラップは、この日にレッドブルのリカルドがマークした1分24秒574に比べて1秒387遅れという収穫もあったが……。

最初のヘレスデラフロンテラで起きたトラブルは冷却系の問題とエネルギー回生システムのマネジメントの問題など、2回目のバルセロナは同システムのシール破損による問題とされている。アロンソのクラッシュの原因については公式発表がまだなく、これも追究しなければならない。

初期トラブル、ある程度想定内か

だが、こうした初期トラブルが起きるのはある程度想定内のことなのかもしれない。「山登りにおいて最初から山頂にいるわけではない。時間がかかる。準備も周到にしないといけない。現在は準備段階にいる。登山するための準備をしているといってよい」。マクラーレンのロン・デニス最高経営責任者(CEO)は10日の記者会見でこう語っていた。

ホンダのエネルギー回生システムはかなり野心的なもので、各陣営も注目していると伝えられる。「創業以来、チャレンジすることがホンダのアイデンティティーとしてずっと根付いてきた。新しくF1に導入された環境技術の追求は、明日のホンダの卓越した技術につながると考えている」とホンダの伊東孝紳社長は強調した。

こうしたホンダのチャレンジ精神あふれる気風にも、アロンソとバトンの両ドライバーは共感している。「私にとってもこれはチャレンジ。これまで2度(05、06年)ほど(年間王者の)タイトルを獲得しているが、3度目を狙っている」とアロンソは決意を語った。

デニスCEO「あとは時間だけ」

「私は何度もこれまで(創業者の)本田宗一郎さんにお会いしたが、いつも笑顔だった。でも、その裏には必ず成功するという強い決意があった。成功は間違いない。あとは時間だけだと思う」とデニスCEOもホンダへの強い信頼感を口にした。

今シーズン開幕戦であるオーストラリアGPまであと約3週間。これまでのテストの結果から考えると、ホンダの4度目のF1へのチャレンジは当初、厳しいものになるかもしれない。しかし、今のところ陣営の誰もが「成功」を確信している。ホンダのコーポレート・スローガンは「The Power of Dreams」。夢へ向かって、間もなくホンダのマシンが走り出す。

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