2019年7月21日(日)

守・破・離への道(岡田武史)

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FC今治で未知の世界に挑む喜びと重圧

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2015/2/24 7:00
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鹿児島には一番安上がりな方法ということでバスに10時間半揺られていった。でも、文句を言うやつは一人もいなかった。彼らと話していると目の輝きが違う。真剣に人の話を聞くし、サッカーが純粋に好きでたまらないというのがひしひし伝わってくる。食事などにも気を配って、うまくなろうという気持ちに強いものがある。

皆を路頭に迷わせるわけにはいかぬ

選手たちを見ていると、例えば、これからチームのレベルや戦うステージが上がれば上がるほど、ついて来られない者が出てくるかもしれない。でも、こういう"創業"のときからいるメンバーにはどうしても特別な感情が湧いてしまう。ついて来られない? ではサヨナラ、という気にはどうしてもなれない。本人の希望や適性にもよるけれど、選手を辞めた後、岡田メソッドのコーチとして働けるようにクラブを盛んにしたいという闘志が湧いてくる。

フロントには外資系の証券会社にいた人間やリバプールの大学でスポーツマネジメントを修めてきた人間がいる。私がゼネラルマネジャーに育てたいと思っている男は東京の大学を出た後、サッカーを極めたくてスペインのバルセロナに渡り、そこでスペイン人と結婚して現地でサッカー関係の仕事に携わってきた。私と知り合ったことで8年暮らしたバルセロナを引き払い、奥さんと一緒に今治にやってくる。

監督のときはチームを強くすることと選手やスタッフとのコミュニケーションにエネルギーをほぼ注いでいればよかった。オーナーになると、クラブに関わる全員の生活がかかっているという責任の重さをひしひしと感じる。シンプルに「路頭に迷わせるわけにはいかない」という気構えになる。

従来とはまるで異なるリスクや重圧

性格的にリスクがないとわくわくしないところが私にはある。大きな組織に入って仕事をすることに昔から興味を持てないというか。しかし、今回オーナーとして感じているリスクやプレッシャーはこれまで引き受けたものとはまるで種類が違う感じだ。

日本代表の監督をしていたときも猛烈なプレッシャーを感じた。でも、それは短い期間に想像を絶する大きなものが押し寄せてくる感じだった。今は息の長い、真綿で首をじわじわと絞められるようなプレッシャーを感じている。

そんな未知の世界に立ち向かうことは私にとって新たなチャレンジ。この年になってそういう挑戦ができる喜びを、おののきながらもかみしめている。

(FC今治オーナー、サッカー元日本代表監督)

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