2019年7月19日(金)

守・破・離への道(岡田武史)

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FC今治で未知の世界に挑む喜びと重圧

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2015/2/24 7:00
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FC今治のオーナーに私がなるというプランが持ち上がり、どんな人間がスタッフに必要かとあれこれ想を練っていたころ、育成では真っ先に浮かんだのが「吉武のような人間がうってつけなんだけどな」という思いだった。

オーナー業は初心者の私に多くの人が未来を託そうとしてくれている

オーナー業は初心者の私に多くの人が未来を託そうとしてくれている

育成部門に必要な人材、膝詰めで口説く

そうしたら驚いたことに、昨年9月のU-16アジア選手権(タイ)でベスト8に終わり、ベスト4以上のチームに与えられるU-17W杯の出場権を逃した責任を取って、吉武が日本代表監督の座を降りたという知らせが入った。日本サッカー協会には申し訳ないけれど、私にすればもっけの幸いで、すぐに彼を訪ねて膝詰めで口説いた。

真藤さんは、その吉武が紹介してくれた。「こういう新しいものをつくっていくことが大好きな人だから」と。年は私より上だけれど、サッカーに対する向学心が半端でない。

正直なところ、この3人を全員雇うようなカネはFC今治にはない。申し訳ない話だけれど、真藤さんは「無給でいい」と言ってくれてアドバイザーを引き受けてくれた。吉武にしても大木にしても、前職の代表監督や磐田ユースの監督時代に比べたら報酬はかなり減ったと思う。それでも来てくれた。本当にありがたいことだ。

彼らのような実績のある人間だけじゃない。5人いる育成部門のコーチは、いろいろなところから話を聞きつけ集まってくれた。それまでいたJクラブのアカデミーから契約延長を打診されていたのに、それを振り切って今治に来ようとする若いコーチとか。

「おまえ独身か」

「いや子供も2人います」

「だったらやめとけ。いまいるところで頑張った方がいい」

私がいくら諭しても聞いてくれない。

「奥さんが泣くぞ」

「カミさんも、あなたがやりたいところで頑張って、と応援してくれてます」

初心者の私に未来託すそれぞれの思い

J1のクラブに比べたら、FC今治なんか吹けば飛ぶようなクラブである。先行きも不透明だ。なのに、監督業ならそれなりの自信はあるが、オーナー業は初心者の私に未来を託そうとしてくれる。

選手だってそうだ。プロフィルを見ると一流大学のサッカー部だった人間がいる。その看板を利用すれば、いいところに就職だってできただろうに、今治で月に5万~10万円くらいの稼ぎで働きながらプロになる夢を追っている。2月上旬、このクラブとしては初めてのシーズン前のキャンプを鹿児島で張ったとき、選手に仕事を休む補償として1日3000円を払うと話したら「やったー」という歓声が出た。「3万円と勘違いしているんじゃないか」と耳を疑ったくらいだ。

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