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日本株のライバルは欧州株

日経平均株価が15年ぶりの高値をつけるなか、海外ではマネーが欧州株に向かっている。グローバルなおカネの流れを見ると、「米国独り勝ち」によりマネー米国一極集中傾向が顕著だ。その背景には、もちろん、米国量的緩和の終了がある。

しかし、足元では、極端なマネー偏在に対する警戒感が高まりつつあり、米国から見た「国際分散投資」が新たなテーマとなっている。

その運用先多様化のターゲットとして、まずは欧州株。次に日本株、あるいは一部見直し気運も出てきた新興国株が挙げられる。

なぜ、日本株より欧州株なのか? 理由は明快だ。

欧州には、欧州中央銀行(ECB)はいよいよ量的緩和開始、との期待感が底流にある。対して、日銀は追加緩和の切り札温存の構えだ。となると、主要国が「緩和競争」に走るなか、日銀は「緩和負け」との印象がつきまとう。

しかも、18日発表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、米国も実質的には緩和状態が維持される可能性が強いことが確認された。量的緩和は終了したものの、引き締めへの転換には時間がかかりそうだ。

客観的に見れば、黒田東彦日銀総裁は、「必要があればちゅうちょなく調整する」と追加緩和が選択肢にあることに言及しているのだが、欧米市場では「日銀金融政策決定会合にサプライズはなかった」との受け止め方が大勢だ。

さらに第三の矢(サードアロー)も欧米市場では用語としてすっかり定着したものの、その結果が見えない。日本にいれば、その進捗状況が遅々としたペースながらも検証できるのだが、海外には伝わっていない。筆者がヘッジファンドや米国年金基金の後輩たちから最も頻繁に聞かれる単語がデリバー(deliver)。アベノミクスは結果を出しているのか、ということだ。

ひとつでもいい。分かりやすいデリバーがあれば、マネーは動く。

欧州株だって、ギリシャ・ウクライナ不安をかかえ、決して安心して長期保有できる市場環境ではない。とりあえずマネーをパーキングさせている感覚だ。

したがって、欧州株と日本株の差は決して大きくない。 

海外マネーも、運用計画書に日本株を入れ込むための材料を探しているのだ。実際にNYのヘッジファンドに招待されアベノミクスついて講演してきたとき、彼らの目的が「ネタ探し」にあることを実感した。

年初には、「ECB量的緩和発表の1月は欧州株、ギリシャ問題が決着する2月は日本株」と語るファンドもあった。そこで、本欄1月23日付「市場の視線、欧州の次は日本」のなかで「ユーロ売りも欧州国債・株式買いもいつかは臨界点に達する。運用のテーマが、欧州から日本へ移る可能性があることを指摘しておきたい」と書いた。

 そして日経平均が新高値更新の翌日のきょう、ブリュッセルのユーロ圏財務相会合でギリシャ金融支援についての最終決定が下される。

ウォール街の後輩たちのなかでは「かりにギリシャのユーロ離脱で株価が下がれば、そこが買い時」という声が強い。金融安全網により南欧諸国への伝染は防げる。心理的動揺で売られれば、長期的には買い場との読みだ。

いっぽう、ギリシャよりウクライナのほうが欧州にとっては重要なので、当面はギリシャには妥協して先送りとの見方もある。ロシア南下政策の最前線は現在ウクライナにあり、バルカン半島はその次、というわけだ。ドイツ国内でも、ウクライナを重視するメルケル首相と、ギリシャ許すまじ、とばかりに厳しい語調のショイブレ財務相の間には微妙な温度差があるのだ。

そのなかで、市場の視点で見れば、ギリシャ問題は先送りにせよ決裂にせよ、材料として陳腐化してゆく。

ECB量的緩和もマイナス金利がここまで拡散してくると、市場の「期待感」が債券市場発の「不安感」に変質する可能性を秘める。

そこで「市場の視線、欧州の次は日本」に誘導するためには、アベノミクスの「マーケティング活動」強化が必要と感じる。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。11年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。
 1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく、独立系の立場からポジショントーク無しで、金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。
ブログは「豊島逸夫の手帖」http://www.mmc.co.jp/gold/market/toshima_t/index.html
ツイッター(http://mobile.twitter.com/search?q=jefftoshima)ではリアルタイムのマーケット情報に加えスキー、食べ物など趣味の呟きも。日経マネーでは「現場発国際経済の見方」を連載中。日本経済新聞出版社や日経BP社から著書出版。業務窓口は jefftoshima@hyper.ocn.ne.jp

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