銀盤ファンタジア 宮原・本郷…女子フィギュア、新星たちの輝き - 日本経済新聞
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銀盤ファンタジア 宮原・本郷…女子フィギュア、新星たちの輝き

プロスケーター 太田由希奈

 フィギュアスケートでは女子にも期待の若手がきら星のごとくいる。四大陸選手権(ソウル、15日まで)で宮原知子(大阪・関大高)が2位、本郷理華(愛知みずほ大瑞穂高)が3位に輝き、永井優香(東京・駒場学園高)も6位に入った。今季は休養している浅田真央(中京大)に続けとばかり、世界で羽ばたこうとしている16歳から18歳の有望株。プロスケーターの太田由希奈さんは「3年後の平昌五輪(韓国)に向けて、本当に楽しみな逸材が育ってきている」と話す。

ショートプログラム(SP)で首位に立った宮原選手は、フリーではジャンプ転倒などのミスもあって残念ながら合計181.59点で2位になった。それでも、見ている人にとって「すてきだな」と感じさせるプログラムだったと思う。

優勝したポリーナ・エドムンズ選手(米国)はミスなく滑ってもちろん素晴らしかったが、プログラム自体は宮原選手の方が良かったのではないか。エドムンズ選手は回転速度の速い、きれいなジャンプを次々と軽やかに決めた。一方で、宮原選手はジャンプだけでなく、難しいつなぎのステップをするなど、内容がすごく凝っていた。

宮原、洗練された技術力できれいさ

宮原選手の良さは、お手本通りのきっちりとしたスケートができること。例えばフリーレッグ(氷に着いていないほうの足)も、本当にきちんと正しい位置にある。技術力が高いので、ジャンプの成否にかかわらず、きれいに跳んでいるという印象を与えてくれる。

147センチと小柄だから、手足の長い欧米選手と比べると演技の大きさ、あでやかさという点ではどうしても不利な部分がある。それでも、目を見張るような演技ができるのは、こうした洗練された技術力の裏付けがあるから。

振付師の方も「知子には、知子のいいところがある。派手なアピールをするのではなく、日本人らしいシャイな部分も生かしたプログラム作りを心がけている」とかつて話していた。今季フリーで演じているミュージカル「ミス・サイゴン」のプログラムも、軽快だけれどもかわいらしさが残り、本当に彼女に似合ったものに仕上がっていた。

そうしたプログラムをコーチや振付師にやらされているのではなく、きちんと自分の中で消化し、自分のものにして滑っているところも、宮原選手の卓越したところだと思う。

四大陸選手権女子シングルの結果
得点
ポリーナ・エドムンズ(米国)184.02
宮原知子181.59
本郷理華177.44
グレイシー・ゴールド(米国)176.58
李子君(中国)175.92
永井優香168.09

宮原選手は本当に練習熱心。浅田選手もそうだが、「これだけ練習しているのだから、なんとか結果を残してほしい」と周囲の人たちに思わせるような選手だ。以前、ジャンプで回転不足をよくとられていたが、そうした課題もしっかりと自覚して、徐々に克服してきている。

表現のレパートリー増やしていく必要

今回はSPで首位に立ったことで、少し守りに入ったというか、焦りがあったのかもしれない。気持ちのコントロールがうまくできずに、フリーではミスも出てしまった。だが、こうしたことを経験していく中で、気持ちの持っていき方も徐々にうまくなっていくに違いない。

今後は表現のレパートリーを増やしていくこと。エキシビションではマンボのリズムの曲に乗って滑ったり、2006年トリノ五輪銀メダリストのステファン・ランビエル氏(スイス)に振り付けをしてもらったり、様々な挑戦をしている。こうしたことを続けていけば、もっともっと洗練されて、演技が磨かれていくはずだ。

努力家だけに、国際的な大舞台をどんどん踏んで他の一流選手の演技を見る中で、もっとスピンを高速で回ろうなどといったチャレンジ精神がどんどん湧いてくるのではないか。まだ16歳ながら、昨年末の全日本選手権を制した国内女王。現時点では、日本の女子フィギュア界の次代を担う若手の先頭を走っている。

本郷選手のフリー演技も、悪くはなかった。「(メダルを)取れるとは思っていなかったのでうれしい」と本人は話していたが、大舞台で表彰台に立てたことは大きな自信になったと思う。

手足の長い本郷、大きな演技で迫力

残念だったのはステップが最高レベルの「3」ではなく、「2」になってしまったこと。そして優勝したエドムンズ選手、2位の宮原選手のように、一つ一つの技にもっと加点がつくようになると格段に良くなる。加点はついているものの、ほとんどが1点(最高は3点)。上の2人に比べると、2点以上というのが圧倒的に少ない。大きなミスはなかったものの、今はまだすべての技を無難にこなしているという印象だ。

それでも166センチの長身で手足も長いので、演技自体が大きく見え、迫力もある。手足が長いというのは大きなメリットではあるが、細やかに気を配って動かさないと、演技がだらしなく見えてしまうリスクも背負っている。かつては滑る姿勢が悪いと指摘されていたこともあったが、コーチや振付師の指導を受けて随分きれいになってきているな、という感じがした。

あとは、内面から出てくるパッション(情熱)などをもっと伝えられるように、表現力が磨かれれば。ジャッジや観客がハッと目を見張るような演技が、もっとできるようになれば素晴らしいと思う。師事している長久保裕先生は、まずはジャンプなどの基礎をしっかりと固めてから、様々なことをブラッシュアップしていくコーチ。まだ伸び盛りの18歳だけに、今後こうした大舞台を踏みながら多くのことを身につけていくに違いない。

テレビにも映っていたが、バンクーバー、ソチ両五輪に出場した鈴木明子さんのアドバイスを得られているのも大きいと思う。演技中の表情の作り方といった細かなことに加え、体調管理や試合に臨む心構えなども指導してもらっているのではないか。長久保門下の先輩から貴重な体験談を聞け、大きな糧になっているはずだ。そのスケールの大きさで数年前から注目されていた大器だけに、今後どのような成長を遂げるか、本当に楽しみな選手である。

6位永井、世界に向けて存在アピール

シニアの国際大会本格デビューとなった16歳の永井選手も、世界のファンに自らの存在を大いにアピールできたのではないか。フリーではループジャンプが1回転になるなどのミスもあったが、それでも6位と世界の強豪相手に十分に戦えた。

見る人に驚きを与えるジャンプを跳べる。それが彼女の持ち味だろう。ジャンプのきれいさだけでいったら、もしかしたら今大会に出場した日本3選手の中で1番かもしれない。緊張からか今回はその力を十分に発揮できなかった部分もあるが、本来は重心が低くて安定感もある。

以前はスピンの回転がもっと速かったが、体が大きくなってきたことで今は少し落ちている。しかし今後、体の成長が止まればかつてのスピードを取り戻すのではないか。

いずれにしても、まだ伸びしろがとても大きい。アイスダンスの元世界王者であるシェイリーン・ボーンさん(カナダ)に振り付けをしてもらったそうだが、今後も海外にどんどん出て行って様々なことを吸収すると、一段と輝きを放つ選手になるだろう。

四大陸選手権には出ていないが、13歳の本田真凜選手(大阪・関大中)や14歳の樋口新葉選手(東京・日本橋女学館中)ら楽しみな選手はたくさんいる。浅田選手の次を担う新星たちは、しっかりと育っている。彼女たちがどこまで成長し、国際舞台でどんな活躍を見せてくれるか、注目してほしい。

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