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「純国産」の高級パソコン 新生VAIOの生きる道

「苦労したのは全部。会社の立ち上げと同時に開発を始め、営業や間接部門まで含めて社員全員でゼロから作り上げた自信作だ」――。2014年7月にソニーのパソコン事業を引き継いだVAIO(バイオ、長野県安曇野市)の関取高行社長は、新製品「バイオZ」を両手で掲げながら誇らしげな表情を見せた。すっかり成熟し競争が激化するパソコン市場で、240人の雇用を守りながら勝ち抜くための戦略として同社が半年かけて出した結論は、純国産で高性能なハイエンド製品へ特化するというものだった。

日本のものづくりで品質にこだわり

VAIOの新型パソコン「バイオZ」発表会に臨む関取高行社長(中央)ら(16日、東京・渋谷)

16日に発表した新製品は、シリーズ最上位機を示すバイオZというモデル名を引き継ぎ、CPUには低消費電力版ではなく演算性能の速いモデルを搭載。描画回路やデータ記憶用のソリッド・ステート・ドライブ(SSD)も「全てを高性能品にしている」(バイオの開発担当者)と、処理性能には妥協していない。同時に、ソニー時代から得意とする高密度実装や放熱技術を駆使し、1.34キログラムという軽さで15.5時間というバッテリー駆動を確保するなど、ものづくりへのこだわりを継承している。

バイオZは同社社員が自ら企画や設計、試作などを手掛け、量産も安曇野の本社工場が担う。台湾などのEMS(電子機器の受託製造サービス)メーカーを利用しないため高価となるが、同社は「安曇野品質」として仕上がりの良さや故障の少なさで製品の魅力をアピールしていく狙いだ。

その一方で「ソニーのバイオ」から大転換を図っている。以前に重視していたAV(音楽・映像)関連の機能は発表会でほとんど紹介しなかった。「ネットなどのコンテンツ閲覧はスマホやタブレットでも十分。人によってはもうパソコンはいらないという人もいる」(伊藤好文商品プロデューサー)

AV機器メーカーとして成長してきたソニーの中では、バイオもAV機能に力を入れざるを得ず、スマホやタブレット(多機能携帯端末)が全盛になった最近でも変わらなかった。"ソニー縛り"から脱却して「自由な発想で開発できた」(関取社長)のだ。

代わりに強調したのは「一日中どこでも完璧な仕事ができる」(伊藤プロデューサー)機能だ。例えば、液晶部を回転して相手に見せプレゼンする機能、タブレットのように平らにして手書きでメモを取る機能、内蔵カメラで書類などを撮影し整形・保存する簡易スキャナー機能などを披露した。

筋肉質でもうけを出す

品質にこだわったことで、バイオZは最小構成で19万円(税抜き)からと高価だ。CPUやSSDを強化すると、すぐに30万円を超えてしまう。量販店などの店頭で販売されているノートパソコンの主流が10万円以下であることを考えると、まさに「超高級パソコン」といえる。

関取社長は「新製品を含めバイオシリーズ全体で30万~35万台販売できれば、15年度の黒字化が見えてくる」と語る。ソニー時代の760万台(13年3月期)や560万台(14年3月期)という販売数と比較すると1桁小さい数字だが、中国や台湾のメーカーと競合して採算が悪化したことを反省し数量重視の姿勢からの脱却を図る。

 「今の流行である薄さ・軽さ重視のモデルではタブレット市場とぶつかる。小さな会社になったので規模では勝てない。ならばパソコンならではの用途を、より気持ちよく使えるようにしようと考えた。それなら市場が小さくても、そこに深く突き刺さる製品を作れる」(伊藤プロデューサー)。旧来からのバイオファンをつなぎ留めつつ、高価格・高付加価値市場でブランドを再構築する戦略だ。

液晶部が回転してタブレット型にもなる13.3型ノートパソコン「バイオZ」(16日、東京・渋谷)

ハイエンドにターゲットを絞り再出発を図るバイオだが、その前途には荒波が待ち受ける。年間1500万台前後のパソコン国内市場のうち、「モバイルノート」が占める比率は12.4%と約8分の1にとどまる(14年4~12月、電子情報技術産業協会調べ)。新生バイオZと同じ「仕事に役立つ」携帯型ノートパソコンでは、パナソニックの「レッツノート」シリーズや米アップルの「マックブックエア」などの強敵がひしめいている。

販売網の弱さも課題となる。ソニーからの売却時、バイオはそれまでの販売網からいったん全て撤退。改めてソニーマーケティングと代理店契約を結び、ウェブサイトと家電量販店の販売ルートを構築しているが、現状バイオを扱う量販店は大都市圏を中心に17店のみ。ウェブ中心の販売体制を築くことでコストを抑える狙いだが、消費者が手に取れる実店舗が少ないことは販売の立ち上がりに影響があるかもしれない。

変革を象徴する第1弾製品を軌道に乗せ、かつての輝きを取り戻せるか。新生バイオの挑戦は始まったばかりだ。

(電子報道部 金子寛人)

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