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中国の雄・小米 一流部品で高品質も「模倣」の域出ず

柏尾南壮 フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ ディレクター

日経テクノロジーオンライン
彗星のごとく登場したスマートフォン(スマホ)メーカー、中国Xiaomi(小米科技:シャオミ)。従来の中国製品に対する固定観念を覆す性能とデザインで急成長している。2014年7~9月期には、スマホの世界シェアで韓国Samsung Electronics(サムスン電子)、米Apple(アップル)に次いで第3位に躍り出た。電子部品も"ワールドクラス"を採用しており、日本の電子部品メーカーも躍進の恩恵を受けている。今回は、Xiaomiのハイエンドスマホ「Xiaomi Mi4」の中身を解析する。
Xiaomi Mi4の外観。DRAMに3Gバイトを採用(矢印)。これはSamsung Electronics製ハイエンドスマホの仕様と同じであり、5型液晶がサクサク動くことは間違いない。メーンカメラの1300万画素に対し、サブカメラは800万画素。自分撮りカメラを充実させる中国製スマホの特徴はここでも健在

Xiaomiは若い会社だ。創業は2010年で、中国・北京市に本社を置く。2011年にスマホの第1号となる製品をリリースしたが、この年の出荷台数は50万台以下と言われており、会社も無名に近かった。

ところが、ここからトントン拍子で成長する。出荷台数は2012年に700万台を超え、2013年は2000万台に迫る。2014年はなんと6000万台に達すると予想されており、いまやSamsung Electronics、Apple、中国Lenovo(レノボ)と肩を並べる世界有数のスマホメーカーと目されている。

Xiaomiは店頭販売ではなく、ネット販売をメーンとする。ネットショップはいつも「Out of Stock(品切れ)」状態で、「1分2秒で完売」「15分で完売」など、絶好調の売れ行きを誇示するメッセージが表示されている。

iPhone風に見せる工夫

Xiaomiの成功の秘訣は、すでに成功している企業の「模倣」にある。成功企業から学ぶこと自体は広く行われている当たり前のことだが、Xiaomiの場合、ビジネスモデルにとどまらず、製品のコンセプトやデザインまでが模倣の対象になっている。

例えば、Mi4の筺体側面にはiPhoneによく似たスリットが入っている。iPhoneでは、このスリットは筺体外周に配置されるアンテナを絶縁する役割を果たしており、機能設計の結果として存在する。しかし、Mi4のアンテナは筺体外周ではなく、内部のカバーに設置されている。筐体側面のスリットは機能的に無意味であり、「iPhone風に見せるためのデコレーション」として入っていると考えられる。

筺体に入ったスリット(矢印)はiPhone風に見せるためのデコレーション。アンテナは筐体内に実装されている

同じように先代モデルの「Mi3」は、ソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia」に外観が酷似していた。中国国内で売っている間はそれでも許されるだろうが、海外進出しようとすると、たちまち世界標準の知的財産保護の壁にぶつかることになる。すでにインドでは知的財産権を侵害した疑いで、販売停止処分を受けている。

LTE非対応でもカッコいいのが売れる

Xiaomiは、ハイエンドモデルの「Mi」シリーズと廉価モデルの「Redmi」シリーズをラインアップしている。今回調査したMi4はLTEに対応しておらず、第3世代規格のW-CDMAおよび第2世代規格のGSMのみに対応している。ディスプレーは5型で、価格は1999人民元(約3万8000円)だ。

廉価モデルという位置付けのRedmiシリーズには、LTE対応で5.5型ディスプレーを搭載した「Redmi Note」がある。だが、Redmi Noteの価格は799/999人民元(プロセッサーの動作周波数やDRAM容量で2タイプ)であり、Mi-4より安い。

中国でLTEが使えるのはごく限られたエリアである。目立つことが重視される中国市場では、LTE非対応でも「iPhoneみたいでカッコいい」Mi4がハイエンドモデルとして飛ぶように売れており、高性能かつ低価格のRedmi Noteのコストを回収する格好になっている。

Mi4を分解したところ

続々姿現す日本メーカー製部品

では、Mi4の内部解析に話を進めよう。

中国製スマホは一般に、基板上に占める通信ブロックの面積が異常に狭く、そこに中国地場メーカーの"中華電子部品"がひしめいている。しかしMi4はそうではない。世界で広く販売されているハイエンドスマホと同じように、世界的に名の通ったメーカーの電子部品を使用しており、その内部構造は極めて"普通"である。

メーン基板のディスプレー側。世界大手の一流品を使用する(左)。SIMカードスロットが1個なのが、中国製スマホとしては珍しい(右)

チップセットは米Qualcomm(クアルコム)のクアッドコアプロセッサー「MSM8974」をはじめとするハイエンド製品。米Avago Technologiesのパワーアンプ、Qualcommのパワーアンプ専用の電源管理IC「Envelope Tracker」などを搭載する。

カメラも1300万画素を有する高性能なイメージセンサーを採用(ただし光学式手振れ補正は付いていない)。DRAMのパッケージには米Micronに買収されたエルピーダメモリの文字がはっきり見える。しかも3Gバイトだ。

基板も世界最大手の1つ、台湾Unimicron Technologyの製品だ。写真や音楽を保存するフラッシュメモリーはSamsung Electronics製である。

メーン基板のバッテリー側。フィルターやデュプレクサーをパワーアンプやアンテナスイッチ内部に実装するケースが増える中、本機ではこれらの部品をメーン基板上に直に実装している(右)。コスト削減の一環と思われる

通信機能を支えるのは、村田製作所のフィルター(ノイズ除去)や太陽誘電のデュプレクサー(アンテナ共有用)だ。タッチパネルなど重要部品をメーン基板と接続するコネクターのいくつかでは、ヒロセ電機の捺印を確認できた。

液晶パネルはシャープ製

スマホの主役ともいえる液晶パネルは、シャープ製だ。

液晶パネル部の拡大。シャープ製。Mi4が売れまくったおかげで恩恵を受けた日本企業は多い

通信時の周波数調整などを担当する水晶デバイスは京セラ製、バッテリーセルはソニー製である。未確認だが、1300万画素のイメージセンサーもソニー製の可能性がある。

左はメーン基板のディスプレー側に搭載された水晶デバイス。上部はその拡大写真。右はメーン基板のバッテリー側に搭載された水晶デバイスで、上部はその拡大写真。いずれも京セラ製だ。水晶デバイスは京セラが市場シェアの多くを占める。もともと日本は世界シェアの約半分を握っており、ここでも日本企業の実力が出た

採用する電子部品については、従来の中国企業の「安かろう、悪かろう」とは明らかに一線を画している。Xiaomiは電子部品に潤沢な資金を投じている。新興の中華端末メーカーの中では、品質面で確かに抜きんでた存在と言えるだろう。

メーン基板とサブ基板を接続するフレキシブルプリント基板。両者は切り離されており、コストが高いフレキシブルプリント基板で接続される

Xiaomiの成功の秘訣は、前述したように成功企業の模倣にある。日本メーカー製を含め世界一流の部品を採用することで、高品質を実現しているが、Mi4にはオリジナリティーが正直見当たらない。

模倣におおらかな中国市場では、Xiaomiの手法や製品を模倣して、さらに廉価で提供しようとする企業が現れるのは時間の問題。そのときユーザーに「Xiaomiでなければダメだ」と思わせる魅力がなければ、あっという間に熾烈な価格競争に巻き込まれてしまうだろう。

彗星のごとく登場したXiaomiだが、一歩間違えれば、彗星のごとく太陽系の彼方へ消え去ってしまう可能性もある。

柏尾南壮(かしお・みなたけ) フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ ディレクター。1974年タイ・バンコク生まれ。1994年10月にフォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ設立。顧客の多くは海外企業。情報通信機器からエアコンまで多種多様な製品の分解調査や分析、原価計算などを行っている。モバイル広告関連技術の特許も保有。著書は「iPhoneのすごい中身(日本実業出版)」「スマートフォン部品・材料の技術と市場」 (共著・シーエムシー出版)。日経エレクトロニクス誌や日経テクノロジーオンラインにも分解調査記事を寄稿している。

[日経テクノロジーオンライン2015年1月5日付の記事を基に再構成]

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