現実・仮想の融合近づく 頭脳ディスプレー新世代 (三淵啓自)

2015/2/6 7:00
保存
共有
印刷
その他

2015年は年明けからIT(情報技術)業界の巨人が大きく動いた。1月21日、米マイクロソフトが次期基本ソフト(OS)の「ウィンドウズ10」の概要を発表。新しい機能や戦略に加え、新OSを搭載したヘッドマウントディスプレー(HMD)「ホロレンズ」を公表、話題になった。

 みつぶち・けいじ 米サンフランシスコ大卒、スタンフォード大学院で修士。オムロンやウェブ系ベンチャー企業設立を経て04年より現職。

みつぶち・けいじ 米サンフランシスコ大卒、スタンフォード大学院で修士。オムロンやウェブ系ベンチャー企業設立を経て04年より現職。

一方で米グーグルは1月19日、MHDの「グーグルグラス」のソフトウエア開発者向け初期モデル「エクスプローラー・エディション」の販売を中止した。同29日の決算発表では初めて「グーグルグラスは失敗だった」と表明。内蔵カメラがプライバシー侵害の恐れがあったり、交通法で運転中の利用が禁止されたりと議論が起きていた。今後は法人市場の開拓に注力するとみられている。

こうした両巨頭の動きはネットを中心としたIT業界に構造的な変化が起きていることを示す。

ウィンドウズ10はOSが従来の「オペレーティング・システム」から、「オペレーティング・サービス」へと進化することの象徴といえる。例えば、ウィンドウズ7以降のOSを利用するユーザーに、ウィンドウズ10リリース後に1年間は無料アップグレードとして提供し、一度アップグレードした端末は「その寿命を終えるまで無料でサポートする」とした。

これはウィンドウズXPなどのサポート終了時に多くの利用者に不利益を生んできた「システム提供型」から、「サービス提供型」に切り替えることに他ならない。クラウドなどとの連動も強化される見通しで、巨人マイクロソフトがネットサービス企業へと徐々に進化しているといえる。

ウィンドウズ10は遠隔会議システムやホワイトボード的に使える84インチの4Kデバイスの「サーフェス・ハブ」、ゲーム機「Xbox」などと連携が可能で、スマートフォン(スマホ)を含め多種多様な端末やクラウド、サーバーを継ぎ目なく融合していく戦略が見えてきた。これは1980年代に東京大学の坂村健助教授(当時)が提唱した「Tron(トロン)プロジェクト」の構想に近づきつつある。

ネットで出遅れたマイクロソフトが新しいバーチャル(仮想)情報市場への足掛かりとして打ち出したのがHMD「ホロレンズ」だ。これは拡張現実(AR)端末の一種。現在もスマホのARコンテンツが出ているが、HMDでは空間に情報を3D(3次元)で合成するホログラフィック技術「ウィンドウズホログラフィック」を採用、一歩進んだ体感を味わえるようだ。

もっともVR(仮想現実)やARの技術には高速の3D描画が不可欠。HMDで普及が最も進む「オキュラスリフト」でさえ、かなり高性能なグラフィック処理ユニット(GPU)が必要となる。人の動きや目に合うように高速で描画しないと違和感や「3D酔い」を引き起こす原因になりかねないからだ。

ホロレンズはウィンドウズ10のほかCPU(中央演算処理装置)やGPUを内蔵しており、Wi-Fiを通じてパソコンなどと情報をやり取りできる。ユーザー・インターフェースも実空間の中に見える仮想物体との相互作用やジェスチャー、音声などで3D化された情報を扱うことを可能にする。

マイクロソフトはホロレンズのリリース時期や価格など詳細を明らかにしていない。だが、これは筆者が提唱するHMDの視野内に見える「インタースペース」で、実空間と仮想情報が融合した世界で様々な作業ができるようになる可能性が高まったように思える。

今後はスマホやタブレット、モニターなどがなくても、すべての空間や物体を情報端末のようにした生活空間を作れるようになるかもしれない。今後の展開が楽しみだ。

(デジタルハリウッド大学教授)

〔日経MJ2015年2月6日付〕

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]