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日本のゴルフ文化発信へ 待たれる「みんなの殿堂」

日本ゴルフ協会理事 山中博史

1901年に英国人アーサー・H・グルームが神戸・六甲山上に造った4ホールのゴルフ場から日本のゴルフは始まりました。それから110年余り、コースは2300カ所以上、プレー人口も850万人を超え、ゴルフは国民的スポーツとして根付いてきました。しかも皆さんご存じの通り、2016年リオデジャネイロ、そして20年東京の両五輪ではゴルフが正式競技になります。世界のゴルファーや関係者らが注目する中、日本のゴルフ界が世界に情報を発信するチャンスです。

日本プロゴルフ殿堂の顕彰コーナーには、これまで殿堂入りしたプロ選手のプレートが飾られている

日本は米国、英国と並ぶゴルフ大国。重要なのは、もともと西洋から渡ってきたゴルフが、日本の歴史・文化と交わりながら、独自のゴルフ文化を築いてきたという点です。今、アジアではゴルフブームが起きています。彼らはゴルフ文化を先輩である日本から学ぼうとし、日本にはそうした役割が期待されています。そこで、にわかに脚光を浴びているのが「日本ゴルフ殿堂」構想です。

JGAミュージアムとプロゴルフ殿堂

実は、日本にはゴルフに関する殿堂的なものが2つあります。ひとつは83年に広野ゴルフ倶楽部内に設けられたJGA(日本ゴルフ協会)ゴルフミュージアム、もうひとつは12年に創立された日本プロゴルフ殿堂です。

少しゴルフに詳しい方なら、兵庫県三木市の広野ゴルフ倶楽部にあるJGAミュージアムをご存じでしょう。日本のゴルフ草創期から現在まで、2000点を超える所蔵品があります。ただし場所柄、「気軽に見に行く」わけにはいきません。

一方、日本プロゴルフ殿堂は06年に開催された女子トーナメント「フィランソロピー・プレーヤーズ選手権」の収益の一部を基金に、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)、日本プロゴルフ協会(PGA)、日本ゴルフツアー機構(JGTO)のプロ3団体が協力して「プロのための殿堂を」という趣旨で設立されました。現在の本部は東京・銀座にあります。

最初の顕彰者として7人、2回目に6人、3回目は4人の歴史に残るプロを選んでいます。しかし、対象がプロだけでは候補者に限りがあるうえ、ゴルフがオリンピック競技種目として復活したこともあって、「プロの世界だけでなく、もっと対象を広げたらどうか」という機運がこの2~3年で盛り上がってきたのです。

最初に殿堂入りした中村寅吉氏と小野光一氏が優勝し、日本にゴルフブームを巻き起こした57年カナダカップの写真集

現在の殿堂、プロ選手しか顕彰できず

ゴルフの歴史をひもとくと、いろいろな人たちがゴルフの発展に貢献してきたことがわかります。特に草創期はその時代を代表する財界人、有力者や政治家たちの支援を受けて、日本に根をおろしました。そして各地でアマチュアが自分たちのクラブを立ち上げて、その裾野が広がっていったのです。

その過程ではコース設計家、芝草専門家、企業家らいろいろな人々の努力がありました。例えば、今では日本のグリーンコンディションは世界一だと言われますが、ここに至るまでは日本の高温多湿の気候をどう克服するか、グリーンキーパーたちの並々ならぬ努力があったのです。

さらにトーナメント草創期には企画提案者、テレビ関係者、ジャーナリスト、解説者、スポンサー企業などの貢献が欠かせませんでした。が、こうした人たちはプロゴルファーではないため、現在の殿堂では顕彰できません。

実際、米国のゴルフ殿堂(World Golf Hall of Fame)では、こうした人々も顕彰しています。ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領、俳優のビング・クロスビー氏、テレビプロデューサーのフランク・チャキニアン氏ら、それぞれの分野でゴルフの発展に貢献した人たちの名が並びます。来訪者は華やかなトーナメントだけでなく「こんな人がこんな分野で貢献したのだ」と知り、ゴルフというゲームの背景やその時代の息吹までを感じられるのです。

幅広いファンがゴルフの歴史学ぶ場に

だからこそ、日本プロゴルフ殿堂を「プロゴルファーを顕彰する」から拡大して「日本のゴルフ界への貢献者を顕彰する」という日本ゴルフ殿堂に発展させれば、幅広いファンがゴルフの歴史を学ぶ良い場所になると思うのです。

小野氏が使っていたクラブなど

最近はプロ、アマを問わず、ゴルフの歴史や先輩の功績について知らない人が多いように感じます。それらを学ぶ機会があれば、試合を見る際、そして自分がプレーする際に感じるものが変わってきます。そうしたものを次の世代に引き継ぐのも、我々の大切な使命ではないかと思うのです。

サッカーや野球の殿堂はスタジアムに併設されたり、都心の交通の便の良いところにあったりして、気軽に訪問できます。ゴルフ殿堂も例えば、東京都江東区の若洲ゴルフリンクスの隣とか、都心のビルの一角にできれば、仕事帰りとか休日にもっと多くの人が訪れることができるはずです。

スポーツの歴史や先人たちを大切にし、自分たちもその精神を引き継ぐという文化が日本には希薄だといわれます。長い歴史を持つゴルフ、アジアでいち早くゴルフ文化を開花させた日本だからこそできるゴルフ殿堂。東京五輪を見に来た世界のゴルフファンに誇れるようなゴルフ殿堂を望むのは、私だけではないはずです。

 やまなか・ひろし 1963年東京都生まれ。全日本ジュニアゴルフ選手権優勝、世界ジュニア日本代表。明大卒業後、ダンロップスポーツエンタープライズ入社。トーナメント運営や国際業務に携わり、青木功プロ担当として主に海外トーナメントに同行、四大メジャーでキャディーの経験も。2001年JGTOに入り、競技運営・国際ディレクター、08年から14年まで専務理事を務める。15年1月からJGA常勤理事となり、企画本部長、オリンピック対策本部2020東京準備委員会副委員長などの役職につく。JGTO時代から海外メジャーの競技委員も任されている。

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