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日立造船、IBMとタッグで挑むごみ焼却の最先端

日立造船が次世代ごみ焼却施設の開発に動き出した。目指すのは炉の自動操縦だ。切り札は独自開発の画像認証システムと、蓄積してきた膨大な運転データにある。2014年からは日本IBMと異色のタッグを結成し、自ら考えて動く次世代炉の実現を急いでいる。

匠の世界だったごみ処理

ごみ焼却施設の自動化は長年、日立造船が挑み続けているテーマだ。1990年代まで、ごみ処理はまさに「匠(たくみ)」の世界だった。熟練の作業員が目視でごみの状態を見ながら、感覚を頼りにレバーを動かし巨大な炉を操った。その後、自動運転や遠隔監視の技術が発達し、2000年代には一日に百トンものごみを処理する炉を5人ほどで動かすまでに省人化が進んだ。

それでも、トラブル対応は人力が頼りだ。たとえば水分が極端に多いごみが持ち込まれれば、炉の効率は大きく下がる。作業員が運転条件を手動で変えて回復作業をする必要があるが「自動運転に慣れた作業員には回復作業に必要な『感覚』が備わっていない」(川端馨総合運営プロジェクトグループ長)。効率のよい燃焼状態に戻るまで時間がかかり、運転コストがかさんでしまう。

どんな状況にも柔軟に対応できるシステムを構築すべく、日立造船が目をつけたのが子会社のニチゾウテックが持つ画像認識技術だった。駐車場の在車識別に使われていたが「ばらつきや乱れにも柔軟に対応して、画像からバランスよく状況を判定できる」(同)。ごみが密集する中、揺れる炎を監視する高度な要求に適合しうる技術だ。

画像認識により、炉内の炎やごみの状態を細かく認識・判別できるようになった。これまでは温度計や流動計など「点」の情報で客観的にしか見えなかった炉の情報が「目視と同じく『面』の状態で主観的に判断できるようになった」(同)。この進歩から生まれたのが、開発を進める炉内画像状態認識システム「CoSMoS(コスモス)」だ。

コスモスは画像を識別するだけでなく、学習する特殊なシステム。炉の燃え方を8パターンに分類し、計量データの履歴などと結びつけて最適な運転方法を選び出す。作業員は1時間ごとに炎の形を分類。データを蓄積し続け、データがたまるほど判定精度や運転パターンが洗練される。約1カ月で判定精度は8割近くまで向上するという。

コスモスに遠隔監視や計測データを合わせた複合システム「総合運営支援システム」を13年に本格投入し、既に17施設で採用されている。本社ビル(大阪市)内の監視センターに集まるデータから、リアルタイムで監視作業を支援する。コスモスの画像を通じ、現場への運転支援やトラブル対応も柔軟に行う。各施設に任されていた運転作業を可視化し、効率の悪い運転をする施設や運転方法を洗い出し、改善を促すといったコスト抑制の取り組みができるようになったという。

ごみの質・量を分析

さらなる野望を実現すべく、14年には日本IBMとのコラボに乗り出した。目をつけたのが膨大な運転データだ。ビッグデータ活用で優れた実績を持つ日本IBMの力を借り、運転記録を数値化して分析、条件化する。「10~30分先の状況を予測し、先回りして対応する次世代の焼却炉」(林稔情報グループ長)の開発を目指す。

足元では、数十ギガバイトに上る膨大な運転データの数値化や分析が続く。刻々と変わる炉の環境だが、決まった条件も存在する。「たとえば、夏場のごみはカロリーが低く燃えにくい。反対に、冬場は高カロリーの燃えやすいごみが多い」(川端氏)。ごみの質、量から各炉の特性まで。様々なデータから規則性を見つけ出せれば、精度の高い予測につながる。

ごみ処理施設の自動化は夢物語では終われない課題だ。自治体の緊縮財政のあおりで、ごみ処理に関わる人材は減り続ける。例えば、日立造船が大阪市内で建設した施設では職員の平均年齢は40歳を超す。全国の施設数は約1200カ所。今のままではごみ処理インフラが破綻しかねない。10分先の予測が可能になれば、運転と保守管理の両方に追われる現場の負担は大きく減り、日本のごみ処理インフラを考える上でも重要な転換点となる。

開発期間は「20年にも完全自動化を実現する」(日立造船)との目標を掲げるが、明確な期限は設けていない。「技術と誠意で社会に役立つ価値を創造し、豊かな未来に貢献する」という日立造船の社訓を体現するプロジェクトだからこそ、腰を据えて取り組む覚悟だ。

(大阪経済部 山本夏樹)

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