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丸ごとレビュー 最新CPU搭載、高性能2in1タブレット パソコン並み使用感

フリーライター 竹内 亮介

NECパーソナルコンピュータは12月18日、専用キーボードを同梱するタブレット「LaVie U」の最上位モデル「LaVie U LU550/TSS」を発売した。米インテルのタブレット向け最新CPUを搭載し、冷却ファンなしで静かに利用できることが特徴となる。

ファンレス動作 可能な新CPU

LaVie Uは、タッチ対応の液晶ディスプレーを搭載するタブレットに、スリットに立てかけるタイプの専用キーボードを同梱する「2in1」と呼ばれるタイプの製品だ。キーボードと併用することで、一般的なノートパソコンと同じような使い方もできるので、幅広い状況で利用できる。

CPUやタッチペンの有無で2機種を用意する。今回試用したのは、タッチペンを同梱し、画面に直接メモ書きできる上位機種の「LaVie U LU550/TSS」で、実勢価格は15万円前後だ。このLU550/TSSでは、インテルが昨年秋に正式発表した2in1タブレット向けの最新CPU「コア M」シリーズの「コア M-5Y71」を搭載する。

これまで2in1タブレットでは、省電力で低発熱だが性能が低いアトムシリーズか、ウルトラブック向けの「低消費電力版コア i」シリーズをCPUとして採用していた。コア Mシリーズは、コードネーム「Broadwell」(ブロードウェル)と呼ばれる内部設計を採用した最新CPUであり、後者を置き換える存在となる。

低消費電力版コア iシリーズは高性能だが、ウルトラブックをはじめとする一般的なノートパソコン向けなので、アトムシリーズと比べると発熱や消費電力はかなり多い。タブレットでは、厚み10ミリ前後の製品が一般的だ。アトムシリーズなら、この厚さに組み込める冷却パーツでも十分なのだが、低消費電力版コア iシリーズの場合、大型の冷却パーツを積むために厚みを増やしたり、うるさい高回転のファンを搭載したりする必要があった。

一方「コア M」シリーズでは、低消費電力版コア iシリーズとほぼ同じ性能を保ちながらも、消費電力と発熱を大きく低減した。アトムシリーズを搭載するタブレットのように薄型で、しかも冷却ファンを搭載しない静かに利用できるタブレットを作れるようになったのだ。実際、冷却ファンを搭載しないLU550/TSSでも、利用していて熱くなって触れなくなるようなことはなかった。

なお、コア iシリーズはなくなるわけではない。内部設計をブロードウェルに刷新し、今後も継続して販売される予定だ。インテルは1月に最新のコア iシリーズを発表したが、これは高性能なノートパソコンや、ディスプレー一体型デスクトップパソコン向けのCPUだ。内部設計は同じブロードウェルだが、コア Mシリーズと比べると性能重視で調整されている。

総合性能はサーフェスプロ3並み

実際のパフォーマンスを、日常的に利用するアプリを複数実行して総合性能をチェックできるベンチマークテスト「PCMark 8」(フィンランドFuturemark)で計測した。比較対象はコア i5-4300Uを搭載した「サーフェスプロ3」(ストレージが256ギガバイトの中位モデル)と、アトムZ3745Dを搭載する「Venue 8 Pro」(ストレージは64ギガバイト)だ。

結果としてはLU550/TSSはサーフェスプロ3とほぼ同等となり、予想通りの結果だった。サーフェスプロ3が搭載するコア i5-4300Uが1.9ギガヘルツ、LU550/TSSが搭載するコア M-5Y71が1.2ギガヘルツと動作周波数がかなり違うことを考えれば、驚くべき結果といえる。LU550/TSSと同じくファンレス筐体で動作するVenue 8 Proは、格段に低い数値だった。CPU以外の要素が共通ではないので参考数値になるが、ブロードウェルの基本的な性格をよく示した結果だ。

PCMark 8
Homeのスコア
LaVie U LU550/TSS2215
サーフェスプロ32575
Venue 8 Pro1201

LU550/TSSはVenue 8 Proと同様にファンレス設計であり、動作音は非常に静かだった。サーフェスプロ3は、普段は静かだがベンチマークテストなどで負荷をかけると、裏面にある冷却ファンが回転をはじめ、エアコンの音にも負けないような動作音を発することがある。

発熱と消費電力が低いということは、バッテリー駆動時間にも期待できる。スペック上では約8時間となっている。実際に満充電状態にして5時間ほど携帯し、うち3時間ほどウェブブラウズでの情報収集や書類作成を行ったところ、事務所に戻ってきたときのバッテリー残量は70%前後だった。軽作業なら、1日持ち歩いても充電なしで十分こなせるだろう。

キーボードユニットとは磁石で合体

液晶ディスプレーは11.6型のIPSパネルで、解像度は1920×1080ドットだ。このクラスのタブレットとしては一般的なスペックで、画面全体の色味の変化は少なく、どこから見てもスッキリと美しい画像が楽しめる。厚みは9.6ミリのフラットデザインを採用し、ビジネスバッグなどに収納しやすい。重さは822グラムで、このサイズの液晶を搭載するタブレットとしてはやや重いかもしれない。

底面に、キーボードユニットと接続するための端子を装備する。キーボードユニットのタブレットを立てかけるスリットにも端子を装備しており、上からタブレットをキーボードユニットに立てかけるだけで、合体は完了する。

一度合体すれば磁石で接続を補強された状態になるので、簡単には外れない。手前側にタブレットを倒すと、磁石による補強が解除されてタブレットを外せるようになる。液晶画面をキーボード面に向けて差し込むと、同じように磁石でロックされ、タブレットのWindowsもスリープ状態になる。

この状態は、一般的なノートパソコンで液晶ディスプレーを閉じた状態によく似ている。そしてノートパソコンのように、タブレット部分の手前を上に引き上げると、磁石のロックが解除されてスリープから復帰する。スリットに立てかけるタイプなので、タブレットの角度は調整できないが、キーボードユニットと組み合わせることでノートパソコンのような使い方もできるようにしているわけだ。

キーボードユニットはシルバーのプラスチックをベースにしたデザインで、タッチパッドも装備する。キートップはキー同士が分離したアイソレーションタイプだ。ストロークは一般的なノートパソコンとほぼ同じ感覚なので、長時間のタイプでも疲れることはなかった。この部分からも、キーボードを付ければ一般的なノートパソコンと同じように使えるように配慮していることが分かる。

さらに盛り上がる2in1

アトム搭載タブレットのような薄型でファンレスのデザインと、コア iシリーズのような強力な基本性能を兼ね備える非常に魅力的なタブレットだ。難点は価格と重さだが、自宅やオフィスでは本格的なノートパソコンとして利用し、外出先でもまったく同じ環境を持ち歩けると考えれば、十分補いが付くのではないだろうか。

また、1月に米ラスベガスで開催された総合家電展示会「CONSUMER ELECTRONICS SHOW」(CES) では、このコア Mを搭載するタブレットが各社から多数発表された。タブレットとしてだけではなく、パソコンとして使うことも重視されるウィンドウズOS搭載の2in1タブレット市場は、これからさらに盛り上がりを見せていくだろう。

竹内亮介(たけうち・りょうすけ)
 1970年栃木県生まれ、茨城大学卒。毎日コミュニケーションズ、日経ホーム出版社、日経BP社などを経てフリーランスライターとして独立。モバイルノートパソコン、情報機器、デジタル家電を中心にIT製品・サービスを幅広く取材し、専門誌などに執筆している。

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