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ポストゲームショー(田口壮) メジャー挑戦4年目 川崎を阻む「契約の壁」

中島裕之選手、田中賢介選手が日本に帰ってきて、メジャーの内野手としての期待は川崎宗則選手(33)の一身に集まることになりました。メジャー挑戦4年目の今季もブルージェイズとのマイナー契約となり、崖っぷちのようにみえますが、案外レギュラー取りの好機でもあるのです。

ブルージェイズ残留、ファンも喜ぶ

元気者で明るい川崎選手はブルージェイズの地元のトロントでも大人気で、チームに残留したことをファンは喜んでいます。

川崎選手には常時メジャーで活躍してほしいところですが、これまでそれを阻んできたのは実力というよりは契約の壁だったと思います。

メジャーではよく「option(オプション)」という言葉を耳にします。

直訳すると"選択権"という広い意味になりますが、我々は「球団側が選手をマイナーに落とす権利」という意味で使っています。「球団がオプションを行使し、誰々を3Aに送った」というように使うわけです。

メジャーとマイナーの間にいるような選手にとって、このオプションが最大の壁になります。

川崎選手はこれまでマリナーズで1シーズン、ブルージェイズで2シーズン過ごしてきました。2013年、14年の両シーズンとも球団がオプションを行使し、川崎選手はマイナーリーグでのプレーを余儀なくされたことがありました。

しかし、こうした権利を行使できるのは3シーズンまでということになっています。確か、20日間で「マイナー落ち1回」とカウントされるのですが、1シーズンの間であれば、球団は何度でも選手をマイナーに送ることができます。

来季以降、メジャー待遇の望みも

ただ、無制限にこのオプションが認められているわけではありません。もし3シーズン、メジャーとマイナーを行ったり来たりした揚げ句、それ以降もマイナー待遇となる場合、球団はその選手をウエーバーにかけなくてはならない、つまりいったん保有権を手放して、他の球団に獲得意思があるかどうか確認しなくてはなりません。

さらに1人の選手に対してのオプションの行使はどのチームに所属するかにかかわらず、1シーズンは1シーズンとカウントされていきます。もし川崎選手が今年、一度でもオプションの行使を受けてマイナーでプレーした場合、通算3シーズンとなりますから、ブルージェイズはもちろん、移籍先の球団にもオプションの権利はなくなります。

もちろん結果が出なければその先は厳しいものになりますが、今季さえしのげば、来季以降、堂々のメジャー待遇となる望みが出てくるのです。

球団が持つオプションという権利の厳しさは私も身にしみています。02年に渡米した当初、カージナルスが私をマイナーに落とせるというオプションを持っていました。メジャーに昇格し、結果を出せているのに、なぜか私がマイナー落ちということもありました。

オプション、球団には不可欠な権利

04年はキャンプの早い段階でトニー・ラルーサ監督から「今年はおまえをずっと上に置いておく。マイナーには落とさない」と言われ、腰を落ち着けて自分のペースで調整を進めることができました。

ところがいざシーズンに入ると、8月にマイナー落ちしました。「契約の関係でおまえのほかにいないんだよ」と監督も心苦しそうでした。他の選手は球団のオプションがなくなって、もうマイナーに落とせないというのです。メジャーではそのときの調子とかでなく、契約条件の関係で"ファーム落ち"が決まることがあるんですね。

当初は私もわけがわからず「なんでオレが落とされるねん」と理不尽さを感じたものでした。しかし、やがて慣れてくると、オプションはマイナーに落とせない選手から駆け出しの選手まで、様々な立場の選手をやりくりしていくための仕組みで、球団にとっては不可欠の権利らしい、ということがわかってきたのです。そしてメジャー定着を目指す選手にとって、それが乗り越えるべき大きな壁の1つになっていたのです。

プロの世界ですから当然なのですが、メジャーは日本球界以上の格差社会ということがいえるでしょう。マイナー契約とメジャー契約の間の格差。さらにメジャーのなかでも6年活躍した選手はフリーエージェントの権利を得ますので、その立場は数段強くなります。また年俸調停の権利を得ることも、押しも押されもせぬメジャーの選手としての特権で、球団との交渉ががぜん有利になります。

"特権階級"に入る様々なメリット

"特権階級"に入ることのメリットはそれだけではありません。キャンプの調整がマイペースでできるということもあります。もうマイナーに落ちることはありませんから、オープン戦で何試合連続ノーヒットということがあっても慌てる必要がありません。

マイナーからメジャーにはいあがろうという選手は1打席、1打席が勝負です。ヒットと凡打では天国と地獄の違い、という状態が何試合も続きます。このプレッシャーのもとにバットを振るのと、無安打でもいいやと力を抜いて振るのとではまるで条件が違うわけで、メジャーの地位を確固とした選手はますます有利に、マイナーの選手はハンディを負うことになります。

あのころのことは思い出すだけでも苦しくなります。自分の調子だけではないところで処遇が決まる川崎選手の心中も察してあまりあります。

田口壮氏

十分メジャーのレギュラー務まる

しかし、今年頑張れば、そうした状況にサヨナラできる可能性があるのです。

実力的にも川崎選手は十分メジャーのレギュラーが務まると思います。打ってよし、送ってよし、先発もよし、守備固めもよしという川崎選手にとって、その器用さがあだになっていることも否定できないでしょう。なんでもできるから、チームもユーティリティープレーヤーと位置づけて、悪い言葉でいうと便利屋的な役回りを求めています。

このオプションの壁をはねのけて、いつマイナー行きになるかわからないという不安定な状況から脱出し、メジャーでプレーできる地位を確立できれば、川崎選手は存分に実力を発揮できるはずです。

(野球評論家)

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