井上真央、決意の大河ドラマ主演 目指すは理想の妹
日経エンタテインメント!
――ここ数年、若手女優が主演を務めることが多くなったNHKの大河ドラマ。2015年の『花燃ゆ』では、1月に誕生日を迎え28歳となった井上真央が主人公の文(ふみ)を演じる。

井上真央(以下、井上):この年齢で大河ドラマの主演というのは、正直、ちょっと早すぎるし、もっとベストなタイミングがあったんじゃないかと思ったりもしました。でも、こうして今、文という役を演じられるのは、運や縁に他ならないので、それを受け止め、腹をくくり、監督やプロデューサーの方々と心中するくらいの決意です。これで大河ドラマの主演は最後、という気持ちで取り組んでいます。
――井上は2011年、連続テレビ小説『おひさま』に主演。打ち上げの席で今回の『花燃ゆ』への主演を予感させるような発言をしたそうだ。
井上:スタッフさんがとても良い方ばかりだったんです。とはいえ、再び皆さんと朝ドラ主演として深いお仕事をするのは無理だと思ったので、調子に乗って「今度は大河ドラマで戻ってきます!」と言ってしまいました(笑)。朝ドラは、余計なことを考える時間もないくらい撮影する分量も多くて、本当に大変な現場でした。ですが、終わる頃には、またいつかこんな風にお芝居と向き合う経験がしたいと思ったんです。
――『花燃ゆ』でその生涯が描かれる文は、大河ドラマの主人公としてはかなり異質な存在。幕末の思想家・吉田松陰の妹である文は、人となりが分かるエピソードがほとんど残っておらず、劇中のキャラクターはこの作品ならではのものとなっている。
井上:主人公の文さんは明らかになっている部分が少ないだけに、いくらでも話を膨らますことができるんですよね。ただ、最初から人物像はこうとイメージを決めなくていいと思っています。とにかくいろんな人との出会いと別れを繰り返していくので、その中で強い一面だったり、弱い一面だったりを見せていきたいし、出会いのたびに、変化と成長を遂げていくのを表現したいです。
出演が決まってから、ロケハンを兼ねて物語の舞台となる山口県の萩市を訪ねました。松陰先生が主宰した「松下村塾」のあった場所に行ったとき、ボランティアで案内してくださるおじいさんがいらしたんです。「今日は暇だから」といろいろ詳しく説明してくださって。「今度、萩が大河の舞台になるんだけれど、吉田松陰が伊勢谷で、その妹を井上真央が演じるんだよ。久坂玄瑞は東出がいいと思っていたら、そうなったから、あのキャスティングは俺が決めたようなもんだね」と楽しそうにお話しされていました。
最初は私に気づいていませんでしたが、結局は、「井上真央に似ているよね?」と。おじいさんは私が誰か分かったとき、「俺は最初からそうだと思ってたよー」と私の背中をバンバンたたきながら言っていましたけど、内心は「今、気がついたでしょー」と思っていました(笑)。

男性が理想とする「妹キャラ」に
――『花より男子』をはじめ、これまで数々のヒット作で強気なキャラクターを演じてきた井上。今回は激動の時代の中、幕末の志士たちのたぎるような思いを受け止め支える文の人生を、静かな情熱を胸に体現していく。
井上:プロデューサーさんからは、「男性が理想とする『妹キャラ』として、議論する藩主の人たちの中におにぎりを持って、ふわって入っていく、柔らかい安心感のある女性を演じてください」とリクエストされています。今回は、あの激動の時代を文を通して、妹目線で描かれるからこそ表現できるものがあるだろうし、その女性ならではの目線を大切にしたいですね。
朝ドラのときは、ちょっと風邪をひいた程度で、倒れなかったことが誇りになっています。精神論になりますけど、今回も「倒れたらヤバい」と自分に言い聞かせながら、元気に乗り切るつもりです。それこそ周りの方々から、「なかなか倒れないな」って言われるくらいに(笑)。

(ライター 田中あおい)
[日経エンタテインメント! 2015年2月号の記事を基に再構成]