2019年9月17日(火)

Cold WarからCode Warへ 攻撃の標的は社会の全域
インテカー社長 斉藤ウィリアム浩幸

2015/1/20 7:00
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北朝鮮によるソニー・ピクチャーズエンタテインメントへの攻撃は、世界がサイバー戦争の時代に突入したことを象徴する重大事件です。

20世紀は、物理的な武器を持つ大国同士がにらみ合う「コールドウォー(Cold War)」の時代でしたが、21世紀は「コードウォー(Code War)」の時代となりつつあります。

数テラ(テラは1兆)バイトもの機密情報は、わずか数名のハッカーで盗み出せることが証明されたのが、先日の未公開映画流出事件です。しかし、サイバー攻撃の脅威はデジタル世界にとどまるわけではありません。

今後懸念されるのは物理的な攻撃の可能性です。言うまでもなく、日本を含む先進国は、生活の多くをデジタルに依存しています。パソコンが破壊されたら、仕事ができません。電気や水道といった生活インフラが攻撃されたら、今日の食事や風呂さえままなりません。さらに、すべての機器がネットにつながるIoT(モノのインターネット)の普及が進むなか、たとえば自動運転車や医療機器がハッキングされたとしたら――。

日常の隅々にまで浸透している「安心」や「便利」は、一転してすべて「危険」や「不便」に変わってしまいます。時代が進み、製品が進歩するたび、攻撃対象となる危機の表面が拡大してしまうのが、コードウォー時代の恐ろしさと言えるでしょう。

北朝鮮政府はすでに、サイバー攻撃が核に相当する戦術兵器であることを明言しています。ソニー・ピクチャーズへの攻撃に成功したことで、ハッカーたちは自信を深めたはずです。従来よりもさらに大胆に、物理的破壊をともない、人命を奪うような攻撃を仕掛けてくることも容易に想像されます。

流出した映画の興行成績がかえってよかったとしても、それはハッピーエンドではありません。むしろテストケースを成功させたハッカーたちの、つぎの攻撃こそが危険なのです。

斉藤ウィリアム浩幸

斉藤ウィリアム浩幸

しかも、コードウォー時代の大量破壊兵器は複製が容易です。たった1回の攻撃で日米の政府や市場に甚大な影響を及ぼしたサイバー攻撃は、この先、無数の標的に向け終わることなく繰り返されることでしょう。物理的な弾丸を1発も使用することなく、敵対する国家の機能をまひさせることも可能かもしれません。私たちは、こうした攻撃が常態化しているという前提で物事を考える必要があります。社会の常識はコードウォー時代を迎え新たに塗り替えられつつあるのです。

企業や個人の目線からは、サイバー攻撃対策が余計なコストに見えるかもしれません。「担当者を任命して任せておけば、自分が果たすべき役割は特にない」と考える人もいるでしょう。しかし、サイバー攻撃が狙う弱点とは、まさにそのような縦割り組織型のメンタリティーなのです。

攻撃の標的は社会の全領域に及びます。企業の機密情報。生活インフラ。個人が所有している写真の流出も記憶に新しいところです。こうした攻撃に対して、担当者や個人が場当たり的に対策を練る対症療法には限界があります。

今こそ日本は縦割り型の社会制度を見直さなければなりません。そして、サイバーセキュリティーの強化こそが、世界をけん引したかつての「強い日本」を取り戻す重大な選択であるということを、次回のコラムで解説します。

(インテカー社長 斉藤ウィリアム浩幸〈ツイッターアカウント @whsaito〉)

〔日経産業新聞2015年1月16日付〕

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