2019年4月26日(金)

ドボジョに挑戦 過酷な橋梁建設に体当たり

2015/1/13付
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デスクから突然の指令。「建設現場は人手不足。女性がどれだけ活躍できるか、ドボジョ(土木女子)やってきて」。えーっ大変そう。「コンクリート打設」「溶接」…。どこまでできるか、女性が実際に働ける環境なのか。建設中の橋梁現場に体当たり取材を試みた。

JFEエンジニアリングは、2013年から東南アジアの大学生向けインターンシップを実施している。今回はエンジニア志望のミャンマー人女性3人に同行し、現場作業の体験を通じてドボジョの仕事を学ぶことになった。

14年12月初旬、午前4時30分。集合場所の川崎市を出発、マイクロバスに揺られること約1時間30分。着いた先は茨城県境町。田んぼが広がる中に建設中の首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の高架橋が現れた。でかい。JFEエンジ入社1年目で指導役の小川高誉さん(26)は「全長は約4キロメートル。約170人が携わっています」と話した。

現場の朝は早い。作業服に着替え、7時30分からの朝礼に参加した。橋の下でラジオ体操をし、業務内容などを早口言葉のように確認。これで終わりと思っていたら、「2人1組になってください」との号令。「足元よし」「体調よし」と指さし確認をする声が響く。「小さな積み重ねが安全な現場運営のために大切です」と小川さん。

いよいよ橋に上がる。高さ約5メートルの上部に到着すると富士山が遠くに望めた。現場はコンクリートを枠に流し込む「打設」作業の真っ最中。まずはバイブレーターに挑戦。枠の中に流し込んだコンクリートに振動するコード状の機器を抜き差しすることでコンクリート内の空気を逃がし、強度を高める。打設直後からコンクリートの硬化が始まるので、10人以上の人員を動員し連携プレーで手早く仕上げる。

「抜き差しするだけなら簡単そう」。初めての体験にワクワクしながら、機器を受け取る。想像以上に重く、振動が強くて手がしびれる。暴れる機器を両手で握り、コンクリートに挿入。「ゴボゴボ」という音とともに機器が沈み、周囲から泡がぽこぽこと浮かび上がる。空気が抜けている証拠だ。「できた」と喜んでいると、「もっとゆっくり。垂直に入れないと強度が弱くなる」と注意が飛ぶ。素人がすぐにできるほど甘くはない。

コンクリートは品質管理が強度に影響する建設材料だ。気温や湿度、水の量などが強度や寿命を左右する。そのため打設直前には、コンクリートの堅さを確認する「スランプ試験」を行う。強度を保ちつつ、施工しやすい状態を維持し、現場に運ぶ。

最後に場所を変えて溶接体験。革の長手袋や遮光ガラス付きのお面などを手渡された。溶接は強い紫外線を発するため、目や皮膚を守るために全身を紫外線から守る必要があるからだ。夏は大変そうと思っていると、溶接の講師を担当したエンジニアナカヒラ専務の小曽納昭男さん(44)は「夏場はサウナだよ」。想像以上に現場は過酷だ。

お面を装着すると、前が全く見えない。恐る恐る機器のスイッチを入れると、視界に映るのは青白い光だけだ。ゆっくりと下方向に手元を動かす。すると、「ストップ」。お面を外し、溶接面を確認すると穴が。ゆっくり動かしすぎたせいだ。もう一度挑戦。今度は少し早く動かす。自信満々にお面を外すと、「動かすのが早すぎて、きちんと溶けてない。下手のお手本だね」と小曽納さん。がっくし。現場はさらに足場が悪い場所で一日中作業を続けるという。職人の方々のすごさを痛感した。

しかし、現場を見渡してみると驚くほど女性がいない。今回の現場にも「女性はいない。事務所に事務員として2人いるだけ」(JFEエンジの小川さん)。確かに事務所に女性用のトイレはあったが、現場では1つも設けられていなかった。

体験してみて、重い機材の運搬には工夫が必要かもしれないが、女性が現場で活躍できる余地はあると思う。ただ、一人前の職人になるには経験や現場知識が必要で、習得するために一定期間が必要だろう。それまで女性が働き続けるためには、トイレや更衣室などの施設面だけでなく、同じ視線で課題や障害を共有できる同性がいないときついと思った。

建設業の就業者数が右肩下がりにあり、女性人材活用に向けて取り組みが進められている。日本建設業連合会は昨年10月に建設業で活躍する女性技術者や技能者の愛称を「けんせつ小町」にすると発表した。業界への関心を高める狙いだ。JFEエンジは企業内保育施設の設置や、女性管理職のお手本となる人材を育てようとキャリア採用を実施し始めた。1人でも多くの女性を呼び込み、定着につなげることが女性の活躍につながるかもしれない。

と、1人しみじみ感じていたら、ミャンマーの彼女達から「川崎に戻ってパーティーをやりましょう」とお誘いが。まだまだ今日は終わりそうにない。

 首都圏中央連絡自動車道(圏央道)は、横浜や厚木、八王子、つくば、成田などの都市を総延長約300キロメートルの道でつなぐ環状道路。首都圏の道路交通の円滑化や、災害時の代替路としての機能などが期待されている。既に約196キロメートルは開通している。国土交通省関東地方整備局によると、圏央道に並行する一般道の交通量が減少しているという報告がある。

長江優子、比奈田悠佑が担当します。

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