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米地方都市、スマートシティー実験台に VBに開放

フィル・キーズ(米ブルーフィールドストラテジーズ アナリスト)

IT(情報技術)を活用した環境配慮型都市「スマートシティー」が日米で話題だ。この市場は、米シスコシステムズや米IBM、日本の富士通や日立製作所など大手IT企業はともかく、ベンチャー企業には参入障壁が高い。そこで米ミズーリ州カンザスシティーはこのほど「Kansas City Living Lab(リビング・ラボ)」というプロジェクトを始めた。

IT企業集積地ではないカンザスシティー

実現に向けて、カンザスシティーにコンサルティング企業シンク・ビッグ・パートナーズとシスコが協力している。シンク・ビッグのパートナー、ブレーク・ミラー氏によると「シリコンバレーやニューヨークなどIT企業集積地ではないカンザスシティーが、市区町村関連の問題解決で独自の手法を探ったことからアイデアが生まれた」と語る。

カリフォルニア大学バークレー校在学中に交換留学で来日。日本のIT(情報技術)産業にも詳しく、技術誌やウェブサイトなどでジャーナリストとして活動。日本での勤務経験もある。

リビング・ラボの根幹は、高速無線LANを導入した110街区で構成される街を、最先端のスマートシティー関連技術を持つ企業の試験運用に公開することだ。狙いの分野は水道や駐車場、照明、ビデオ監視、市民や観光客の「街体験」の改善などだ。シスコはリビング・ラボに、スマートシティー関連の情報基盤(プラットフォーム)「スマート・コネクテッド・コミュニティ」の提供を予定している。

さらにカンザスシティーは、スマートシティー関連技術から発生した、警察や消防など緊急サービス以外のデータも公開するとしている。多数のアプリ開発者にスマートシティーのデータを扱ってもらい、市のサービス向上につながるアプリを開発してもらうという。「セキュリティーとプライバシー保護のため、セキュリティー技術を持つ企業との協力も模索している」(ミラー氏)

多くのベンチャー企業に門戸開放

リビング・ラボにスマートシティー関連技術を持つ企業を呼び寄せるため、カンザスシティーはさらに2つの計画を準備している。ひとつはリビング・ラボで育ったサービスを市場に投入するための投資ファンドだ。金額は他の詳細と共に2015年第1四半期中に公開するとしている。もうひとつは、シンク・ビッグ・パートナーズは市との緊密な連携により、サービスを実現するまでの手続きを短縮するという。

スマートシティー関連市場の主要顧客は政府だ。それゆえ、政府の事業に参画した経験が豊富な大企業が中心の市場になっているのが現状だ。しかし、リビング・ラボの手法を使えば、多くのベンチャー企業に門戸を開くことができる可能性が高い。

スマートシティーに役立つセンサーやデータ分析などの技術を持つ日本企業にも、リビング・ラボは魅力的に映るだろう。通常なら、スマートシティー関連の試験プロジェクトを政府に納得させ、関連手続きのハードルを越えるのには時間がかかる。さらに、プライバシーやセキュリティーの懸念を解消するための壁はさらに高い。それだけに、軌道に乗ればリビング・ラボは目を引くだろう。

米連邦政府では、アプリ開発者に一般市民のエネルギー消費や健康データを提供するプロジェクトが進行中だ。だが現時点では地方自治体レベルでのプロジェクトはまだない。リビング・ラボは、カンザスシティー以外の地方自治体が同様の取り組みに踏み出すかどうかの試金石となりそうだ。

[日経産業新聞2015年1月13日付]

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