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丸ごとレビュー SIMフリー端末の落とし穴に注意

基本から学ぶ「格安スマホ」(下)

フリーライター 竹内 亮介

エイスースジャパンのSIMフリースマートフォン「ZenFone 5」、LTEに対応しながらも実勢価格が2万6000円前後(16ギガバイトモデル)と安い

低価格で通話やインターネット接続が行える「格安携帯電話サービス」が注目を集めている。前回はその基本的な内容と、大手携帯電話サービスとの違いを整理した。今回は、こうした格安携帯電話サービスを利用するにはどんなスマートフォン(スマホ)を使えばよいのか、そして最近注目されているSIMフリー端末には、どんなメリットやデメリットがあるのかをまとめた。

格安スマホサービス、専用機種がないことも

NTTドコモやKDDI、ソフトバンクモバイルなど大手の携帯電話会社は、自社のネットワーク上でもっとも快適に使えるスマートフォンや携帯電話を自社で販売している。そしてほとんどのユーザーは、契約と同時にそうしたスマートフォンを購入する。

格安携帯電話サービスの契約では、このような小さなSIMカードのみが提供される

一方、多くの格安携帯電話サービスは「自社専用のスマートフォンやタブレット(多機能携帯端末)」を用意しない。最近は「オススメ機種」をいくつか用意し、ユーザーが購入できるようにしている事業者もあるが、基本的には契約時に「SIMカード」と呼ばれる小さなチップをユーザーに提供するだけだ。

SIMカードとは、通話やインターネット接続を利用するための認識番号が書き込まれたICカードのことだ。スマートフォンやタブレット、携帯電話に挿し込み、利用する携帯電話会社向けの設定を行うと、通話したり、インターネットに接続したりできるようになる。

つまり、格安携帯電話サービスを利用する場合は、スマートフォンやタブレットなど、通話やインターネット接続を行う端末を自分で用意する必要があるということだ。ここも大手携帯電話会社とは大きく異なる点である。

ただ、だからといって過剰に不安を感じる必要はない。格安携帯電話サービスでは、ドコモやKDDIの通話網を「間借り」してサービスを行っている。端末についても同じことがいえる。つまり、ドコモのMVNO(仮想移動体通信業者)であればドコモの端末、KDDIのMVNOであればKDDIの端末が使えるのだ。

OCN モバイル ONEなどほとんどの格安携帯電話サービスは、自社のサービスで利用できることを検証した端末をウェブサイトで確認できる

大手携帯電話会社からの乗り換えなら、今まで使ってきたスマートフォンがあるだろう。また、最近はスマートフォンの中古市場が大きな盛り上がりを見せている。格安携帯電話サービスがどの携帯会社のMVNOなのかを調べて、それに対応する端末を入手すればよい。

格安携帯電話サービスではドコモの通信網を利用する業者が多いので、ドコモのスマートフォンならまず安心して利用できる。マイネオはKDDIの通信網を利用するため、KDDIの端末が必要だ。ただ、マイネオは大手携帯電話会社のようにKDDIの対応端末をマイネオから購入できるようにしている。そうした端末を一緒に購入するのもいいだろう。

だいたい3年以上前の古いスマートフォンでは、LTEやXiといった高速通信機能が利用できなかったり、そもそも最新のSIMカードを認識しなかったりといったトラブルがある。しかし2012年冬以降のモデルであれば、LTEにはほぼ対応済みで、利用できる周波数帯は最新モデルと大きな違いはない。各サービス事業社側でも、端末の対応状況を公開しているので、契約前にチェックしておこう。

携帯電話会社問わないSIMフリー

格安携帯電話サービスを利用するにあたって、「SIMフリー」というタイプのスマートフォンに興味を持ったユーザーもいるかもしれない。格安携帯電話サービスが自社のサービスで利用できることを保証し、サービスと一緒に販売しているスマートフォンも、海外メーカーのSIMフリー端末であることが多い。

SIMフリースマートフォンは、端末を販売した特定の携帯電話会社に縛られることなく、さまざまな携帯電話会社のネットワーク上で利用できる。用途や好みに合わせていくつかの携帯電話サービスを契約し、SIMカードを差し替えて使うことも可能だ。

グーグルの最新スマートフォン「ネクサス6」もSIMフリーなので、世界各地で利用できる

また海外旅行時に、現地で販売されているSIMカードを挿して設定すれば、普段使っているスマートフォンを現地でも使える。こうした自由度の高さは、購入した携帯電話会社のネットワークでしか利用できない「SIMロック」タイプのスマートフォンにはない魅力である。

ちなみに海外では、SIMフリースマートフォンの方が一般的だ。日本でも、総務省が大手携帯電話会社に対して「自社が販売したSIMロックタイプの端末」を、一定期間後にSIMフリー化することを義務づけるガイドラインを発表した。スマートフォンのSIMフリー化は、今後のトレンドの一つになるのは間違いない。

こうしてメリットだけをピックアップしていくと、いいことずくめのような印象を受ける。しかし、実際に使いこなすとなるとハードルが高いのは、現状の格安携帯電話サービスと同じだ。

通信規格やLTEの周波数対応に違い

まず第一に、対応する通信規格が異なる場合がある。日本は、世界でも例外的にLTEの高速通信網が発達した地域であり、大手携帯電話会社のスマートフォンでLTE対応でないモデルは、もはや存在しない。しかし、海外のさまざまな地域で利用されることを想定している海外製の、それも低価格なSIMフリースマートフォンでは、LTEに対応しないモデルもまだ多いのだ。

またKDDI系の格安携帯電話サービスでは、第3世代通信用のプロトコルとして、世界的に見ると採用例が少ない「CDMA2000」を利用する。LTE非対応で、なおかつCDMA2000非対応のモデルをKDDI系の格安携帯電話サービスで使おうとしても、インターネット接続はおろか音声通話もできない。

ネクサス6のスペック欄を見ると、対応するLTEの周波数(バンド)が細かく記載されている。ただ、こうしたモデルは例外中の例外

第4世代では、大手携帯電話各社がそろって世界標準のLTEを採用するようになり、こうした規格の問題も解決したように見える。しかしここにも落とし穴がある。同じ「LTE」という規格に対応していても、実は各社によって利用する周波数帯が異なる。ネットワーク接続をスムーズに行い、通信を混乱させないためには必要不可欠な措置であり、どこの国でも携帯電話会社ごとに、利用できる周波数帯が細かく設定されている。

やっかいなのは、SIMフリーでLTEに対応している端末であっても、すべての周波数帯をフルに利用できるわけではない。ドコモ系の格安携帯電話サービスなら利用できるが、KDDI系の格安携帯電話サービスでは利用できない、という端末は決して珍しくはない。

さらに混乱に拍車をかけるのが、「同じ端末」であっても、どこの携帯電話会社から発売されたのか、あるいはどこの地域向けに発売されたかによって、対応する周波数帯が違うことだ。特に、各大手携帯電話各社が「プラチナバンド」などと呼び、つながりやすさをアピールする700~900MHzの周波数帯では、スマートフォンごとの対応状況が大きく異なる。

しかもこうした周波数帯の対応は、ウェブサイトの製品情報から確認しにくい。もちろん製品のマニュアルをダウンロードし、隅から隅までじっくり読めば記述してあるのだが、なかなかそこまでできるユーザーは少ないだろう。ましてやダウンロードできるマニュアルが外国語表記だったりすると、ハードルはさらに高くなる。

SIMフリーのスマートフォンやタブレットには、確かにさまざまなメリットがある。そしてSIMフリーであれば、どこの地域でも、どの周波数帯でも利用できるというのが理想だ。そして、SIMフリースマートフォンを、そういう存在であると誤解している人は少なくない。

しかし現状では、地域ごとに対応状況が大きく異なる。せっかくの自由度の高さを十分に生かせる製品は少なく、環境も整っていないというのが現状である。

国内ならMVNO元のスマホを使おう

スマートフォンの中古市場は大きな広がりを見せている

結論としては、国内で格安携帯電話サービスを使う場合は、MVNO提供元のスマートフォンを使うと一番トラブルが少ないだろう。SIMフリーのスマートフォンは比較的低価格なので、購入しやすいというメリットはある。しかし前述したように、今まで使ったスマートフォンをそのまま流用してもいいし、中古市場で安く手に入れてもいい。

一方で旅行や出張など、海外で利用する機会が多いなら、SIMフリースマートフォンのメリットは大きい。前述したように対応周波数帯の問題があるので、現地で購入した方が選択肢は広く、失敗は少なくなる。ただし現地で購入して日本に持ち込む場合は、日本の電波法令に準拠したモデルであることを確認しなければならない。

前回紹介した格安携帯電話サービスにしても、今回紹介したSIMフリースマートフォンにしても、現状は過渡期にある。大手携帯電話会社の回線や端末を利用する場合に比べると、さまざまな面で苦労を強いられるのは事実だ。「安い」という言葉だけに踊らされないようにしたい。

竹内亮介(たけうち・りょうすけ)
 1970年栃木県生まれ、茨城大学卒。毎日コミュニケーションズ、日経ホーム出版社、日経BP社などを経てフリーランスライターとして独立。モバイルノートパソコン、情報機器、デジタル家電を中心にIT製品・サービスを幅広く取材し、専門誌などに執筆している。

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