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南米選手に存在感 注目高まるコパ・アメリカ

サッカージャーナリスト 沢田啓明

ブラジルでワールドカップ(W杯)が開催された2014年は、他の南米諸国にとっても特別な年だった。

南米でW杯が行われたのは1978年アルゼンチン大会以来、実に36年ぶりとあって、南米各地から約30万人(推定)のファンが飛行機、バス、自家用車、船などでブラジルへ集結。世界最大のサッカーの祭典を目の当たりにする喜びと興奮をあらわにし、自国代表が勝利を収めようものなら夜を徹して歌い踊った。さながら、"W杯南米大会"の観があった。

アルゼンチン、粘り強い守備で準優勝

90年大会以来、ベスト4から遠ざかっていたアルゼンチン代表は、MFハビエル・マスケラーノを中心に組織的で粘り強い守備を構築する。大黒柱リオネル・メッシが万全の体調ではなかったが、MFアンヘル・ディマリアらが効果的にサポートし、難敵との接戦を制して準優勝。大会終盤、アルゼンチン人サポーターはブラジル代表が敗退して意気消沈した地元市民を尻目に、リオデジャネイロのコパカバーナ海岸、サンバ会場などを占拠して意気軒昂(けんこう)だった。

過去、名手を輩出しながらチームとしてのまとまりに乏しく、国際大会で好成績を残せないことが多かったコロンビア代表は、アルゼンチン人の名将ホセ・ペケルマンが選手との徹底した対話を通して意識改革を断行。エースストライカーのラダメル・ファルカオを故障で欠きながら、若手MFハメス・ロドリゲスら高い個人能力を備えた選手が躍動する破壊的な攻撃と組織的な守備で、同国史上初めてベスト8入りを果たした。

国民の熱い期待裏切ったブラジル

チリ代表は、今回のW杯で世界に最も大きな衝撃を与えたチームの一つだろう。小柄な選手たちが驚異的なスタミナでオールタイム、オールコートのプレッシングを敢行し、攻撃では傑出した選手こそいないが優れた機動性と高度な連係を発揮して1次リーグで前大会王者スペインに快勝。決勝トーナメント1回戦でも、開催国ブラジルを相手に互角以上の戦いをみせた(結果は延長、PK戦の末に惜敗)。

一方、ブラジル代表は「12年ぶり6度目の優勝を」という国民の熱い期待を裏切った。1次リーグから苦戦が続き、準々決勝でコロンビア代表を退けたものの、この試合でネイマールが背中を痛め、CBチアゴシウバは無用なファウルでイエローカードをもらって累積警告処分。ドイツ代表との準決勝は攻守の柱を欠いての戦いとなり、他の選手たちが精神的重圧に耐え切れず、歴史的大敗を喫してしまった。

南米の高いレベル、改めて世界に示す

前大会4位のウルグアイ代表は、選手が高齢化しており、決勝トーナメント1回戦でコロンビア代表に完敗。2大会ぶり出場のエクアドル代表は堅守速攻スタイルで臨んだが、接戦を勝ち切れなかった。

ともあれ、南米代表6カ国のうちエクアドルを除く5カ国が1次リーグを突破したことは、この地域のレベルの高さを改めて世界に示した。

W杯後、ブラジル代表はドゥンガを、アルゼンチン代表はヘラルド・マルティーノを新監督に招請した。

ブラジル国内では、10年W杯で準々決勝敗退と期待を裏切った指揮官の再任に、「新鮮味に欠ける」という批判があった。しかし、22歳のネイマールを主将に指名して中心選手としての自覚を促し、最終ラインを大幅に入れ替えて守備の組織を再構築。年内に行われた6試合で全勝し、サッカー王国再建を目指している。

W杯で宿敵ブラジルを上回る成績を残したアルゼンチンは、引き続きメッシとマスケラーノが攻守の要。チームの骨格を維持しながら、中盤の厚みを増してボールポゼッションをより重視し、攻撃に多様性を加えたスタイルを志向している。

独特の興奮と熱狂のコパ・アメリカ

W杯で躍進したコロンビア代表はぺケルマン監督と、チリ代表はホルヘ・サンパオリ監督との契約を更新し、さらなる進化を目指している。ウルグアイ代表とエクアドル代表も監督を据え置いており、大きな路線変更はなさそうだ。

14年W杯出場を逃した国の中では、パラグアイ代表がかつて横浜Mでもプレーした元アルゼンチン代表CFラモン・ディアスを監督に招いたのが目を引く。

15年は、6月11日から7月4日までチリでコパ・アメリカ(南米選手権)が行われる。優勝候補はブラジル、アルゼンチン、地元チリだろうが、チームの完成度を一層高めつつあるコロンビア、前大会優勝のウルグアイにもチャンスがありそうだ。

バルセロナの3トップがメッシ、ネイマール、ルイス・スアレス(ウルグアイ)といずれも南米出身で、レアル・マドリードで背番号10を付けるのがMFロドリゲス(コロンビア)という事実が示すように、多くの南米選手が欧州ビッグクラブで存在感を発揮している。普段、自国を遠く離れてプレーする彼らが帰国し、南米のファンが注視するなかで母国の名誉を懸けて戦うコパ・アメリカには、独特の興奮と熱狂がある。

番狂わせも少なくないW杯南米予選

コパ・アメリカの激闘が終わると、10月、18年W杯の南米予選が始まる。以前は、参加10カ国が3つほどのグループに分かれて戦っていたが、98年大会の予選以降、参加国全部がホームアンドアウェーの総当たりで対戦する方式となった。世界の大陸予選のうち、このような方式を採用しているのは南米だけである。

世界的な名手をそろえたブラジルやアルゼンチンと近年低迷しているボリビアやペルーとでは、率直にいって、かなりの実力差がある。しかし、地元観衆がすさまじい応援を繰り広げることに加え、標高約3600メートルのラパス(ボリビア)、2850メートルのキト(エクアドル)、2640メートルのボゴタ(コロンビア)など高地での試合が多いため、番狂わせが起きることが少なくない。

強豪国が、スター選手が実力を発揮して順当に勝ち点を積み上げるのか、中堅国の中でどこが混戦を抜け出すのか、あるいはサプライズを起こす国が出現するのか、興味が尽きない。

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