2018年7月22日(日)

「ノーベル賞はいらない」 ドイツ、産業革命4.0の砦

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2015/1/6付
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 だが彼も数年で研究所を去るかもしれない。フラウンホーファーの平均的な雇用期間は5年という。育てた技術者の多くが技術とともに企業へと移っていくがそれでも良い。その企業とのコラボレーションでさらなる研究プロジェクトが生まれるからだ。

■車丸ごとCTスキャン 弱小チームをブンデスリーガに

 ドイツ国内に67カ所の拠点を持つフラウンホーファー研究所では、産業用ロボットから医療・環境・エンターテインメントなど様々な分野の技術開発が進む。

巨大なCTスキャナーでクルマの内部構造をCGで再現する取り組みが進んでいる

巨大なCTスキャナーでクルマの内部構造をCGで再現する取り組みが進んでいる

 本部があるミュンヘンから北へ約200キロメートル。エアランゲンの研究拠点では、天井からつり下げられた自動車が大きなターンテーブルの上に置かれた。ここは世界最大のX線コンピューター断層撮影装置(CT)だ。強力なX線を当てることで、自動車の内部の細かい配線や配管までくっきりと撮影し、3次元画像にできる。撮れる画像は縦横約5メートル×4メートルという大きさで、精度は0.4ミリメートルだ。そばには自動車や重機、コンテナ、切り取られた風力発電機の羽根などが測定を待っていた。

 故障や不具合、事故の際に内部でどこがどう壊れたのか。調べるにはこれまで細かく分解するしかなかった。このシステムを使えば数時間から数日で3次元のCT写真がとれ、詳細な断面図が見られる。研究所ではいかに正確に測定し3次元画像を作るかなどを、重工業や自動車メーカーと協力して研究している。

 ニュルンベルクの拠点にある実物大のサッカー場。研究員2人がサッカーに興じていると思ってみていると、ピッチの外にはコンピューターが。画面に映されたCG画面には2人と、ボールの位置が5センチメートルの精度で測定され、動きがそのまま再現されている。モーションキャプチャー技術で選手の動きを画面上に再現できるシステムだ。

 このシステムを利用したのが独南部、人口3000人あまりの村にあるサッカークラブ、ホッフェンハイムだ。システム大手のSAPと提携して選手の動きを解析。試合後の検証に活用するなどの努力をかさねて見事、独プロリーグ、ブンデスリーガ1部に昇格した。すぐに効果が見込める応用研究に価値を見いだすフラウンホーファーの面目躍如といえるだろう。

(企業報道部 小河愛実、フランクフルト支局=加藤貴行)

[日経産業新聞2015年1月6日付]

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